09月14日の「今日のダーリン」

・これから結婚するという人たちに向って、
 ぼくがなにかいいことを言えるとは思えない。
 だいたい、いいことなんてのは、
 人生の先輩どころか、歴史の先輩方が言いつくしている。
 
 ぼくは、儀式というものがどうにも苦手で、
 ずいぶん長く生きてきたわりには、
 冠婚葬祭の席についていることが少ない。
 そういう意味では、いつも新鮮な気持ちで、
 これまでにさまざまな先人たちによって、
 語られてきたいいことばをよく噛みしめている。
 
 愛について家庭について、幸福について人生について、
 ほんとうに、人間はたくさん考えてきた。
 こういう場で語られることを、
 大切に胸にしまっておいて、
 それを毎日のように取りだして磨いていたら、
 きっとすばらしい日々が重ねていけるだろうなと思う。
 若き新郎や新婦以上の思いで、
 ぼくは、パウロからコリント人への手紙やら、
 『星の王子さま』の作者やらのことばを受けとめる。
 こういうものは、年をとってからのほうが
 本気で聞けるのかもしれないとも思う。
 
 そのうえで、このじぶんがなにか言えることがあるのか。
 それを、いつも考えることになる。
 あえて言うとすれば、こんなことかな。
 新しく夫婦になる人たちを、
 周囲は、できるだけ自由にしてやりたいものだと思う。
 あんまり大きな期待を押しつけちゃいけないと思うのだ。
 それくらいかな、ぼくが考えつくことは。

 だから、ちょっと逆説的になるけれど、
 「幸福になる義務はないよ」というようなことを言う。
 周囲の人は、よく「幸せになれ」と言うものだけれど、
 幸福は、なろうとして追いかけたら逃げていくものだ。
 しかし、前に見える逃げていく幸福は、
 後ろや、横には、よくいるものだったりする。
 「あ、これか」と気がつくのが幸福なのではないか。
 こういうことも、年とるまでは知らなかったんだよな。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
祝いも、別れも、相手を自由にしてやれるかどうかが基本。