中小路徹
2014年9月14日19時46分
韓国プロサッカーのKリーグで八百長が発覚したのは2011年5月のことだった。FWはシュートを故意に外し、DFは守るそぶりだけ。その前年の計15試合で、選手たちは見返りに300万~3100万ウォン(約30万~310万円)を受け取ったとされる。仕掛けたブローカーは公的なスポーツくじを使って高額配当を得た。元選手1人が「八百長に加担した」との遺書を残して自殺。元韓国代表を含む54人が国民体育振興法違反罪で起訴され、リーグは現役選手やブローカーの計47人を永久追放処分にした。なお、韓国では12年にプロバレーボールでも八百長疑惑で選手4人が逮捕された。
Kリーグは今年2月、再就職プログラム作りに着手した。八百長事件の背景には、現役引退後の選手が暴力団とつながり、ブローカーになってしまう構図があった。この流れを断ち切ろうというのが、セカンドキャリア支援の狙いだ。
1部だけだったリーグは1、2部制に。手を抜いて負ければ、今はチームの降格が待つ。選手の最低年俸も1200万ウォンから2倍に引き上げられた。ブローカーに狙われたのは、経営基盤が弱いチームの選手が多かったからだ。
ただ、闇の本質はもっと深い。「先輩から頼まれ、断り切れなかった」。裁判では多くの選手がこんな供述をした。先輩後輩の濃密で狭い関係と、何が正しいのかという判断力の欠如。少年期から合宿所暮らしをさせ、試合のために授業さえおろそかにさせてきた選手育成の弊害が、この事件で顕在化した。
ソウル大の羅永一(ナヨンイル)教授(スポーツ歴史学)は言う。「韓国のスポーツ選手は、自分がどんな人間でこれから何をすべきかという概念が弱い。小さい頃から家族と離れ、先輩の言うことだけを聞いて育ち、練習や試合に追われて勉強しないためだ」
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