朝日慰安婦誤報 「宮沢謝罪外交」と共鳴
産経新聞 9月13日(土)9時33分配信
虚報を垂れ流して日本と日本人を国際社会で貶(おとし)めた朝日とともに見逃せないのは、自民党の宮沢喜一内閣による事なかれの“謝罪外交”の存在だ。朝日の報道ぶりと宮沢政権の対応をみると、両者が不思議なほど緊密に連動していた実態が浮かび上がる。記事取り消しとなった朝日の慰安婦報道の背景には、国内外で悪化する政治状況への便乗もあったようだ。
宮沢内閣が発足したのは平成3年11月だ。翌4年1月11日、朝日は朝刊1面トップで、「慰安所の軍関与を示す資料」が見つかったと報じ、そのわずか2日後に加藤紘一官房長官が記者会見で、十分な調べもしないまま軍の関与を認めて正式に謝罪した。朝日報道の影響を受けていたと勘ぐられても仕方あるまい。
韓国では当時、「職業的詐話師」(現代史家の秦郁彦氏)とされる自称・元山口県労務報告下関支部動員部長による「強制的な慰安婦狩り」発言により、反日世論が強まっていた。
正式謝罪から3日後の16日、宮沢首相が初の外遊先として韓国を訪問し、盧泰愚大統領に何度も謝罪の言葉を口にした。加藤氏は半年後の7月、慰安婦に関する調査結果を発表し、軍の関与は認めたが強制連行を示す資料はなかったと結論付けた。
興味深いのは、その後来日した盧氏が「日本の言論機関がこの問題を提起し、わが国民の反日感情を焚きつけ、国民を憤激させてしまった」(『文藝春秋』5年3月号)と証言したことだ。朝日の“ご注進”報道が、韓国世論に火をつけたことを裏付けた形だ。
朝日の慰安婦報道と宮沢政権の関係を振り返る際に触れておかねばならないのは、当時の宮沢政権が置かれた政治状況だ。元北海道・沖縄開発庁長官で、自民党宮沢派事務総長の阿部文男代議士が共和汚職事件で逮捕され、政権は大きなダメージを受けていた。
加藤氏の正式謝罪と同じ日に逮捕され、宮沢政権にとってまさに、内憂外患といえる苦境にあった。汚職事件に対応するため、外交摩擦の幕引きを早く図りたいと考えても不自然ではなかったのではないか。
こうした流れが、宮沢政権の番頭格で加藤氏とライバル関係にあった河野洋平官房長官に引き継がれ、慰安婦問題が、より韓国有利に誘導されていったといえる。
5年7月18日の総選挙で自民党は大敗し、宮沢首相は22日、退陣表明に追い込まれた。この死に体内閣が手を染めたのが、元慰安婦16人への聞き取り調査だ。26日に始めた調査をわずか5日間で終了させたのだから驚きだ。
結党以来初めての下野寸前という中、宮沢政権が慰安婦問題に関し、どれほどの責任を負う覚悟があったかは極めて疑わしい。
強制性を示す資料がないにもかかわらず、強制性を認めた河野談話は細川政権発足直前の5年8月4日、政変のどさくさの中で閣議決定を経ずに発出された。
河野談話は、強制連行があったとする一連の朝日報道の影響を受けていたのではないか−。河野氏の国会招致が求められる所以(ゆえん)だ。
朝日は今年8月28日付朝刊で「河野談話は(朝日が誤報として取り消した)吉田証言に依拠せず」という反論記事を掲載した。
しかし、国際社会では旧日本軍が「強制連行して性奴隷にした」(国連のクマラスワミ報告)という虚構が独り歩きし、米国内で慰安婦像が建てられるなど、いまだに日本と日本人を貶め続けている。
クマラスワミ報告は吉田証言を根拠の一つとしている。朝日と宮沢政権が共鳴し合い、日本の国益はどこまでも損ねられてきたのである。(佐々木類)
最終更新:9月13日(土)9時33分
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