東京五輪ゴルフ会場決定の「闇」
倉本昌弘PGA会長が“告発”
上杉隆 (ジャーナリスト・(株)NO BORDER代表取締役)
手紙に綴られた〈6つの意義〉
倉本は、冒頭の手紙の中で、若洲で五輪を行う〈6つの意義〉を提示している。
(1)東京都が所有し、東京都に所在するコースであり、東京オリンピックが掲げる「コンパクトなオリンピック」にふさわしいコースである。
(2)海と都市が融合した景観は世界に類を見ない絶景である。
(3)ゴミの上を埋めたててコースを作ったということから、エコ、環境面で世界にアピールできる。
(4)設計者は岡本綾子という世界殿堂入りをした選手であり、世界のゴルファーや関係者の誰もが知っている。
(5)選手村やプレスセンターが予定されているエリアから至近距離であることに加え、高級ホテルも近くにあり選手の要求を満たせる。
(6)最大の利点は、コース改造を含め関連施設を作れば恒久的に都民やゴルフファンが使うことが出来る。これが名門コースでありプライベートコースとして有名な霞ヶ関カンツリー倶楽部に国の予算を使った場合、都民やゴルフファンに公平に開放される可能性が極めて低く、還元されるとは思えない。
確かに、若洲開催の利点は少なくない。
東京のど真ん中に十八ホールのゴルフ場があることすらあまり知られていないが、三方を海に囲まれた若洲ゴルフリンクスのフェアウェイから東を望めばディズニーリゾート、西には東京タワーを中心に摩天楼群が聳え、コース南端の四番ホールのティーグランドに立てば、東京湾アクアラインの風の塔まで見渡せる。
羽田空港からは完成したばかりの東京ゲートブリッジを経由して車で十分程度という絶好の立地条件にある。選手村やお台場のメディアセンターも近く、新幹線品川駅から十五分ほどの距離、東京へリポートには一分というアクセスの良さだ。
一方、霞ヶ関は冒頭でふれたように、都内から一時間以上。関越道に五輪関係者専用レーンを設置することが検討されているが、その場合、一車線減となる。渋滞にはまれば、ギャラリーが会場まで辿り着くのに何時間かかるか分からない。