東京電力福島第1原発事故をめぐり、政府の事故調査・検証委員会が吉田昌郎元所長から聞き取りした調書が公開された。
調書からは、死を覚悟して現場指揮を執った吉田氏の肉声を通して過酷事故の恐ろしさが伝わる。同時に「われわれのイメージは東日本壊滅」と吉田氏が振り返るように、制御不能に陥った原発が国全体を危うくする瀬戸際だった現実が分かる。
公開された調書は吉田氏、菅直人元首相ら計19人分。一部の新聞が吉田調書を掲載したため公開したのだろうが、逆になぜこれまで非公開だったのか。未曾有の災害にどう対応したのか。いまも避難生活を強いられる人たちをはじめ、国民の前にそれを明らかにすることは極めて重要だ。
事故調査・検証委員会は東電幹部、政治家、官僚など772人から計1479時間にわたり聞き取った。同委員会が言うように「責任追及」ではないが、事故の収束作業に関係した人たちが当時の状況を詳細に語ることは国民に負う義務と言えるだろう。
政府は速やかに聞き取り対象者の了承を得て、全面公開に踏み切ってもらいたい。
調書を読むと、災害時の意思疎通の難しさが浮かび上がる。
その一つが、放射性物質を放出するベントの実施だ。現場はベントの必要性に迫られるが、うまくいかなかった。それが官邸には伝わらず、不信感を募らせた菅氏が現場に乗り込んだ。
「撤退」についても食い違う。吉田氏は「誰が逃げようとしたのか」と強く否定したが、菅氏は自ら東電に乗り込み、それを食い止めたとの認識だ。
公開された調書のうち、東電関係者は吉田氏だけだ。他の東電幹部の調書も含めて、突き合わせて読み込む必要がある。証言の食い違い、認識のずれなどからあぶり出され、得られる教訓が必ずある。
吉田氏は最後まで現場を守り、収束作業に努めた。その一方で津波対策について「根拠のないことで対策はできない」と述べた。しかし、想定外の津波は実際に来た。
どんなに制度、設備を充実させたところで、それを操るのは結局は人間だ。原発が再び「想定外」に見舞われたとき、同じ過ちを繰り返さぬ保証はない。原発再稼働などもってのほか、この調書から得られる最大の教訓は「脱原発」だ。
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