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トランスジェンダーを嫌悪する「トランスフォビア」は、女性たちの問題でもある

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LAVERNE COX
NEW YORK, NY - SEPTEMBER 06: Laverne Cox attends Herve Leger By Max Azria during Mercedes-Benz Fashion Week Spring 2015 at The Theatre at Lincoln Center on September 6, 2014 in New York City. (Photo by Dimitrios Kambouris/WireImage) | Dimitrios Kambouris via Getty Images

「ゼネラルモーターズ(GM)がうまくいけば、アメリカもうまくいく」。かつてはこんな言葉をよく耳にしていたものだ。しかし、社会としての私たちの今の立ち位置とその行き先を推し量るとするならば、その言葉の中のGMの代わりに、オンライン映像配信サービスの「ネットフリックス」という名前を使った方がいいかもしれない。

トランスジェンダー(生物学上の性別と違う性を自分の性ととらえる人)の権利について考えてみよう。この問題は急速に変化しており、これまでの慣習を打ち破り、固定観念を破壊し、多くの国民に新たな考え方をすることを求めている。

女優のラヴァーン・コックスはネットフリックスのドラマ『オレンジ・イズ・ザ・ニュー・ブラック』 に出演するスターの一人で、演技の部門では初めてトランスジェンダーであることを公表しながらエミー賞にノミネートされた。2014年の賞は逃したかもしれないが、歴史はすでに作られている。コックスは「タイム」誌の表紙を飾ったし、彼女の番組だけがもはやトランスジェンダーのキャラクターやそのストーリーにスポットを当てたメジャーなテレビ番組ではないのだ。新しいドラマチックなコメディ『トランスペアレント』が9月26日にアマゾンのインスタントビデオで封切りされる予定であり、3人の子供たちに自らがトランスジェンダーであることを告白するための準備をしている父親役として、人気コメディシリーズ「ブル~ス一家は大暴走!」などに出演したジェフリー・タンバーがキャスティングされている。

社会的組織やメディア、政府がトランスジェンダーのコミュニティの市民的権利と人権をどれほど認めるかということが今、非常に注目を浴びている。

バラク・オバマ米大統領は最近、連邦政府で働いているトランスジェンダーの職員に対する差別を禁止する大統領令に署名し、医療費負担適正化法は保険会社にトランスジェンダーの人々への差別を行うことを禁止している。これは性別適合手術を保険の適用範囲に含めることを可能にするものだ。

ワシントン・ポストはLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)と非同性愛者のエチケットに関するアドバイスとなるコラムを掲載した。アメリカ教育省は「タイトルIX(ナイン)」(男女教育機会均等法)によってトランスジェンダーの生徒が保護されていると発表した。そして、Facebookはトランスジェンダーや、性別認識を利用しないユーザーのための選択肢を増やした。

しかし、良いニュースばかりではない。私たちは歴史的なレベルのトランスフォビア(トランスジェンダーなどへの嫌悪や偏見)を目の当たりにしている。差別やヘイトスピーチ、暴力、さらにはトランスジェンダーの女性と男性への生死に関わる危害が加えられさえしている。

LGBTの平等を求める全米団体「ナショナル・センター・フォー・トランスジェンダー・イクオリティー」(NCTE)と「全米ゲイ・レズビアン・タスクフォース」によって発行された報告書『インジャスティス・アット・エブリー・ターン』には以下のようなことが記されている。

  • トランスジェンダーの人々は一般人口の2倍の割合で解雇を経験し、「有色人種の場合には全米の失業率の4倍にまで割合が高くなっている」。
  • トランスジェンダーのうち90%がハラスメントや不当な扱い、差別を職場で受けたことがあると答えている。
  • 警察と接触したことのある22パーセントの人々が警察によるハラスメントを受けたと答えており、「有色人種の人々による報告の割合はさらに多い」。
  • ほぼ半分の回答者(46パーセント)が警察に助けを求めることをためらうと報告した。
  • 41パーセントの回答者が自殺を試みたことがあると答えた。一般人口の割合は1.6パーセントである。

私たちは非人道的で、卑しく、特定の人々のグループに不利益を与えるこのトランスフォビアについて国民的な議論をする必要がある。これは2つのレベルにおいてフェミニストの問題でもある。第一に、人種差別やホモフォビア(同性愛嫌悪)のように、トランスフォビアは同じ家父長的イデオロギーから育ち、それが長々と続いている。それによって女性が2級の市民として従属化されているのだ。第二に、トランスフォビアは著しく女性を傷つける。

トランスジェンダーの女性は高い割合で差別、暴力、性暴力、そして、貧困に直面している。アンチLGBTQIA(性的マイノリティを差別する人々。QIAとは、クィア[同性愛者を含むセクシャルマイノリティの総称]あるいはクエスチョニング[自分の性、性的指向を探している人]、インターセックス[中間的な性]、Aセクシュアル[他者に対して性的欲求を持たない])による2012年の殺人の犠牲者のうち半分はトランスジェンダーであり、全員が有色の女性だった。

黒人とアフリカ系アメリカ人のトランスジェンダーの女性は白人、ラテン系、ネイティブアメリカンのトランスジェンダーの女性と比べても50%ほど殺人に遭う割合が高く、他のどんなグループよりも3倍以上警察による暴力を受けやすい。ナショナル・コリション・オブ・アンチ-バイオレンス・プログラムス(全米反暴力プログラム連合)が2012年にまとめた、LGBTQIAとHIVに関わるヘイトバイオレンスについての報告書では、そのように書かれていた。

これらは公民権の侵害だ。なぜならその行為はその人がその人であるという権利を否定することに基づいているからだ。平等とは平等であることを意味する。それはある特定のタイプの女性だけのものではなく、全ての女性のための平等である。例えば私のような女性のためだけのものでもないのだ!

これらの基本的権利の侵害は、ホームレスや失業者、健康保険の加入、経済的不安定、うつ病と自殺といった統計での驚くべきほど高い数字だけではなく、社会の成り立ちそのものを弱体化させる結果を招いている。

一つのタイプの人やグループが標的になったときや、私たち全員が期待し、享受する基本的な理解、同情、そして保護を得られないとき、私たち全員が傷つけられていることになる。

8月に全米女性連盟(NOW)のインターンたちは国中から集まったトランスジェンダーの人々や集団とともにアメリカ議会議事堂でトランスジェンダー・ロビー・デイに参加した。NOWのインターンのジェナ・アーチャーはロビー・デイの様子についてブログに以下のような記事を投稿した。

私がバーバラ・リー下院議員 (私の選挙区選出) のオフィスから帰ろうとしたとき、私のそばを廊下で通り過ぎて行った若い男性が同僚にこう言うのを聞いたのです。『今までトランスジェンダーの人に会ったことはなかったよ』。

「トランスジェンダーの人々の声と物語を広く伝えることで、皆はこれらの問題に直面し、差別の真の脅威とLGBTQIAの人々への政府保護への必要性が明らかになります」。

ラヴァーン・コックスはこう述べた。「全てのトランスジェンダーの人々にとって、存在するなと言ってくるこの世界で人前に立つことを選ぶということは革命的なことなのです」。フェミニズムの歴史は、女性たちが姿を見せることが出来ず、声も出せず、公平さと尊敬をもって扱われないことがどのようなことであるかを女性たちが十分すぎるほど知っていることを物語っている。

タイム誌のラヴァーン・コックスのカバーストーリーにはこんな見出しが書かれている。「トランスジェンダーの転換点」。まだ私たちがそこまでたどり着けたかどうかは私は定かではない。だが、思慮のあるフェミニストたちのサポートと参加があれば、私たちはきっとそこにたどり着けるはずだ。

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東京レインボープライド2014
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