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学生の社会への関心を広げ、言葉の力を鍛えるため、新聞学習に力を入れる大学が増えています。その目的は、朝日新聞社とベネッセコーポレーションが実施する「語彙(ごい)・読解力検定」が目指すところにも重なります。日頃の学びの腕試しに、たくさんの学生が11月の検定に挑戦する、北星学園大(札幌市)と活水女子大(長崎市)の取り組みを紹介します。
■記事切り抜き、仲間で議論 北星学園大(札幌市)
50年を超える歴史を持つ北星学園大。経済学部経済学科では今年度から、1年生全員が自宅で新聞を購読し、紙面を徹底的に読み込む必修講義が始まった。
「日々のニュースへの関心なしに経済を学ぶことはできない。新聞を読む習慣は必須」と考える経済学部長の原島正衛教授と勝村務准教授が企画。朝日新聞社の北海道支社と教育総合センターが協力している。
新聞を活用する講義は週1回あり、年間で30コマに及ぶ。新聞購読費用は大学が負担し、経済学科の1年生約180人全員の自宅に、朝日新聞の朝夕刊が毎日届けられる。
学生は日々の紙面から気になった記事をスクラップして要約したり、自分の考えを書いたりする。記事を起点に調べたことをまとめる学生も多い。教室では5人ほどのグループで、各自が選んだ記事を発表しあって議論。同じ紙面を読んでも着眼点は異なる。他の学生の関心や発想を知ることで視野が広がり、コミュニケーション能力も鍛えられる。記事の切り抜きは、夏休み中も続ける日課だ。
一連の講義は、新聞記事をはじめとする様々な情報やその背景を読み解き、自らの頭で判断する「メディアリテラシー」の育成も目的としている。原島教授や勝村准教授らが毎週、様々な記事について丁寧に解説するのが基本。一方で、新聞協会賞を受賞した、福島原発事故を巡る長期連載「プロメテウスの罠(わな)」を企画した依光隆明編集委員をはじめ、朝日新聞の専門記者たちの話を聞く機会も設けられている。学生たちに新聞の取材、執筆、編集の過程を知ってもらい、ニュースをより深く理解してもらおうというものだ。
こうした学びの成果は、毎週の小リポート提出、講義の冒頭に取り組む朝日新聞の大学生向け教材「時事ワークシート」、「語彙・読解力検定」の受検で確かめる。6月の検定では、1年生全員が準2級に挑戦し約6割が合格した。
金融関係の仕事に関心がある三好澪(みお)さん(18)は「最初は新聞を読むのが面倒にも感じたが、今は毎日30分ぐらいは読むようになって、世の中の動きについていけるようになった感じ。検定にも合格でき、語彙が身についた実感がある」と話す。勉強の成果は、塾講師のアルバイトにも生かされているという。
アナウンサー志望の高橋孝幸さん(20)は、最初は1面を中心に読んでいたが、講義が進むにつれ、読みたいページが増えていったという。「どんな表現をすれば分かりやすく伝えられるのかを学ぼうと、記事内の気になる表現に印をつけ、自分の文章に生かしています。事実を掘り起こす記者の思いを生で聞けたことも勉強になった」と話した。検定にも合格した。
20日から始まる後期の講義でも、新聞学習は続く。勝村准教授は「前期は学生が書くものの内容が週ごとに充実していくのが分かって、めざましい成長がうかがえた」と話し、今後に期待している。
(藤田明人)
■将来見据えたテーマで小論文 活水女子大(長崎市)
活水女子大は、新入生が受講する大学基礎セミナーの柱に「新聞活用」を据えている。昨年度から1年生(定員385人)全員が、新聞を自費で購読。社会への視野を広げて語彙や知識も増やし、専門分野に取り組む前提となる基礎的な学力を養うのが目的だ。学習の効果測定を兼ね、今秋は語彙・読解力検定の受検機会も設ける。
大学基礎セミナーは、一昨年までは大教室での講義が中心だった。しかし、大教室での実施だったためか、学生は集中力を欠きがち。改善を急いだ大学側は昨年度、25人程度の小クラス制を導入。学習に新聞活用も取り入れるなど、講義の仕組みを一変させた。中には家で新聞を購読していない学生もいたが、大学側が親に新聞で学ぶ目的と意義を改めて説明し、定期購読してもらった。新聞の種類は問わない。学生たちは、それぞれの将来の目標に沿って記事をスクラップ。社会との関係性を保ちながら専門分野への関心を広げ、互いに意見を交換して考えを深め合った。
今年度はさらに文学、音楽、健康生活、看護の各学部の学生たちが、それぞれ目標を明確にできるように工夫。記事スクラップのテーマを福祉、教育、健康、環境、労働、国際関係に絞り、テーマに沿って2千字程度の小論文を書き上げる課題も課したのだ。
前期終了間際の7月、大学を訪ね、学生が意見発表する様子を取材した。
「出生前診断をして中絶を選ぶ人も軽い気持ちではない。命を守るためには政府の援助が不可欠だ。現状を改善する方法を調べ、論文にまとめたい」
看護学科1年の赤間ひかるさんは、仲間たちを前にそう発表した。「出生前診断」には、以前から関心があった。初めて購読した新聞記事で、改めて出生前診断の問題に触れ、しっかり調べようと思った。論文は、切り抜いた65件の記事のほか、専門書やインターネットで調べた情報も加えてまとめた。
赤間さんは「記事と同じニュースがテレビで報じられたり、授業で先生が話題にしたりすると『あっ、読んだ』と気付く。難しいと感じていた新聞が、身近になった。新聞は大切だと思う」と話す。活水女子大では来年度、このセミナーを通年の講座に再編する計画だ。学生たちが新聞に接する機会は、さらに増える。
改革に取り組む文学部の渡辺弘准教授は「例えば看護師が、患者が話題にするニュースを知らなければ、専門職として誇りを持った仕事はできないでしょう。新聞を読む習慣は、基礎学力養成のためだけでなく、将来のためにも必要だ」と、新聞活用の意義を説明していた。
(藪塚謙一)
■個人受検は11月17日
語彙・読解力検定は、語彙を正確に理解し使う力や、読解力などをマークシート方式で測定。1級、準1級、2級、準2級、3級の五つのレベルがあります。個人受検は11月17日に全国53会場で実施します。
詳細は公式ホームページ(http://www.goi-dokkai.jp/)。
お問い合わせは「語彙・読解力検定」事務局(電話0120・110702、日曜祝日を除く9〜18時)まで。
■採用で優遇、活用広がる
語彙・読解力検定は、企業の採用活動でも活用されている。朝日新聞社やベネッセコーポレーションが取得級に応じて加点して優遇するなど、活用の輪は広がっている。その他の活用企業は次の通り。(50音順)
【優遇】朝日オリコミ、朝日オリコミ大阪、朝日オリコミ名古屋、朝日学生新聞社、朝日新聞出版、朝日新聞販売サービス、朝日総合開発、朝日トップス、茨城放送、学情、新販、東京個別指導学院、凸版印刷
【考慮・参考】青森朝日放送、秋田朝日放送、朝日広告社、朝日販売サービスセンター、朝日放送、アビームコンサルティング、愛媛朝日テレビ、お茶の水ゼミナール(※1)、鹿児島放送、九州朝日放送、熊本朝日放送、静岡朝日テレビ、ジップ、進研アド(※2)、シンフォーム、高崎共同計算センター、TMJ、テレビ朝日(※2)、直島文化村、長崎文化放送、長野朝日放送、名古屋テレビ放送、新潟テレビ21、日刊スポーツ新聞社、日刊スポーツ新聞西日本、東日本放送、福島放送、フューチャーアーキテクト、プランディット、ベネッセ・ベースコム、ベルリッツ・ジャパン、北海道テレビ放送、山形テレビ、ラーンズ
(※1)校舎スタッフの採用試験で考慮
(※2)自己PRの一つとして参考に
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