【記者手帳】木の種類を間違えた韓国政府の造林事業

 山林庁傘下の「グリーン事業団」の海外造林グループで先日、大騒ぎが巻き起こった。インドネシアで造林事業を行い、そこで生産される木材から木質ペレットを作り、石炭と混ぜて火力発電所の燃料に使用するという壮大な計画に問題が生じたからだ。

 インドネシアで育てた木を伐採する際、塩素や窒素の量が基準値を上回ったのが問題となった。このような木を燃料に使用した場合、発電設備が腐食する恐れがあるため、山林庁は事業を中止せざるを得なかった。

 この事業は2011年、インドネシア政府との間で、ソウル・南山の面積の30倍に当たる1万ヘクタールの林の賃貸借契約を結び、これまでに10%程度の造林事業を進めた状態だ。事業が軌道に乗っていれば、毎年軽油5万リットル分のバイオマス(生物由来)エネルギーを生産できる、と山林庁は説明してきた。これまでに木を育てるだけで約10億ウォン(約1億円)の費用を投じた。

 事業を中断したのは、木の種類を間違えたという、実にあきれるものだ。一般的に木質ペレットの原料に用いられるアカシアやユーカリよりも安く、同じ面積でより多く植えることができるという点ばかり重視し、十分な検証を行わず、「グリルリシディア」という木を採択したのだ。

 問題はインドネシアだけで起こっているわけではない。南米パラグアイで1万ヘクタールの林に木を植え、建築資材用の板を生産するという事業も、全面的な再検討を余儀なくされた。ユーカリの木を育てて現地で加工し、韓国に輸入するという事業だったが、太平洋を渡るのに掛かる輸送費などを考慮すれば「経済性に疑問がある」と指摘する声が出た。

 政府が「グローバルグリーン成長事業」として声高に宣伝してきた、海外での代表的な造林事業がいずれもこの有様だ。事業関係者は「失敗したのは事実だが、学んだこともある。今後、海外での造林事業を行う民間企業が、木の種類などを決める際に、われわれの試行錯誤が参考になるのではないか」と話した。だがこれは、国民の税金が数十億ウォン(数億円)も掛かった事業を台無した当事者が口にできる言葉ではないはずだ。

 政府は事業の失敗について原因を究明し、誰に責任があるかを必ず明らかにするべきだ。数千億ウォン(数百億円)規模の国家プロジェクトの陰に隠れ、国民もよく知らない事業だが、これほどまでのあきれた失敗は前例がないのではないか。

金正薫(キム・ジョンフン)記者
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