五月二日の放課後、教室で悪友のひとりと談笑している。
「昔からよくある話だよな、七不思議って」
こいつは
朝峰里志、小学校からの腐れ縁だ。
紗月姉と同じ姫咲スポーツクラブの柔道教室に通っていた。
うらやましいことに、朝峰里志には双子の可愛い妹がいる。
「七不思議? この高校にもあるのか?」
入学して一ヶ月も経っていないのに、どこから情報を仕入れてくるんだ……
里志は話術に長けた男だ。ただのお調子者とも言えるのだが。
「今はもう捨ててるだろうけどな、体育倉庫の伝説のマットが有名だぞ」
「里志……なんだそのプロレス王座決定戦みたいな七不思議は……」
「さあな、詳しくは知らん。そういや、紗月さん帰って来てるだろ? さっき格技場で見たぞ。よろしく言っておいてくれ。それじゃあ、俺はそろそろ帰るわ」
紗月姉が格技場にいる?
一応、実績のあるOGだし、剣道部か空手部の指導でもしに来たのだろうか。
そういえば、里志の奴は昔から紗月姉にぞっこんだ。
一八〇センチ、七五キロの格闘家体型で顔立ちも凛々しくモテるのに、紗月姉にこだわり過ぎて彼女なし。当然、本人にアタックしたこともある……告る、振られる、立ち直る、これを短いスパンで繰り返している。
校舎三階、一年D組の教室を出て階段を下りて行くと、体育の授業を終えた三年生の女子集団とすれ違う。人数分の香水や制汗剤の強烈な匂いが鼻に突き刺さるようだ。
「うへ……きついな」
下駄箱で靴に履き替え、外に出ると若い女の先生が重そうな荷物を運んでいる。
あれは、女子体育と保体の
宮本優理先生だ。
保体の授業で花穂姉ちゃんに避妊具を失敬された張本人だな。
「先生、それ重いでしょ? 俺、手伝いますよ」
ハードル走で使うハードルを片手に三つずつ持って歩いている。
「君は確か……生徒会長の青山花穂さんの弟だっけ?」
「そうです。青山極悪姉妹の愚弟、蒼太です!」
「極悪って……あっ、じゃあこれ半分いっしょに運んでくれる?」
宮本先生からハードルを受け取って、運動場の隅にある体育倉庫へと向かった。
体育倉庫へ近付くと、慌てた様子の男女が走り去って行く。
男は制服姿で、女は体操着姿、心なしか着衣が乱れていたような気がする。
「あれ? 鍵開いてるね……青山君、こっちに置いてくれるかな?」
ハードルを先生が置いた場所に持って行こうとしたそのときだった……
棚の上のなにかが先生の頭上に落ちかけている。
「先生っ! 危ない!」
咄嗟に宮本先生の手を引っ張って落下物から回避させた。
落ちてきたのは体育で使う薄いマットだ。
「うわぁ、これ懐かしいな。七不思議の伝説のマット。まだあったんだ」
「なんですかそれ? 俺の友人も言ってましたけど」
「カップルがね、この上で交わると永遠に結ばれるって七不思議知らない?」
説明しながら先生は広がったマットの横に寝転ぶふりをする。
「交わるって……まさかさっきの……」
「ほら、青山君。ちょうどお尻の部分にシミや血痕が集中してるでしょ?」
どす黒く汚れたマットの一部分に無数のシミと血痕がある。
それに、真新しい乾いていないシミも……ひどい匂いだ。
「もしかして、さっきのカップルが……」
「だろうね。先生もここの卒業生だから……このマットは当時から有名だったの」
あまり想像したくないが、走り去った男女はついさっきまでこのマットでセックスをしていたようだ。乾ききっていないシミは女のもの、マットの端っこには男の精液らしきものが飛び散っている。教師に発見されれば、停学と親への連絡という地獄コース行きだ。
蒸し暑い体育倉庫の中で先生の片付けをしばらく手伝った。
宮本先生は二十五歳、小柄で痩せ形の可愛らしい先生だ。
髪はやや茶色のセミロングで、ゆるふわ感のあるパーマをあてている。
「先生も学生時代、この上で好きな男と交わったんですか?」
「それは内緒かな」
片付けが終わると宮本先生は伝説のマットの端にチョコンと横座りして、暑そうに服をパタパタしている。ポロシャツが汗だくで白いブラが透けていた。
「先生?」
「青山君……今から一〇分間だけ先生になにしてもいいって言ったらどうする?」
なんだ、このエロゲー展開は……