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「イスラム国」に引き寄せられる欧米の若者

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2014/9/12 7:00
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 トルコ南東部にあるアンタキヤからシリア国境近くのレイハンリ行きのバスに乗っていた2人の若者は、長いあご髭をはやし、ふくらはぎ丈のズボンをはいていた。小さな巾着型の袋には最小限の持ち物。バスの運転手には片言のアラビア語で話しかけていたが(この辺りのトルコ人はアラビア語をかじっている場合が多い)、2人で互いに話す言葉にはイギリス訛りがあった。

シリア北部ラッカでの空爆の後、「イスラム国」兵士が戦闘機から旗を振る。日時・場所は不明=AP
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シリア北部ラッカでの空爆の後、「イスラム国」兵士が戦闘機から旗を振る。日時・場所は不明=AP

 これは2年前の光景だ。彼らはシリアの内戦に加わろうと欧州を離れる何百ものイスラム教徒のうちの2人にすぎない。あれ以来、戦闘に参加した者は数千人にのぼると思われる。その増加率も伸びているだろう。彼らは目的の地に着いた後、一体どんな生活を送るのか。そして、祖国に戻った時にはどうなるのだろう。

 シリアへの人口流入が膨らんでいることの影響は明らかだ。シリアとイラクで活動する残忍なイスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国」は、ヨルダンほどの面積と人口(約600万人)を持つ土地を自らの領土だと主張している。外国からシリアに入る戦闘員のほとんどはこのイスラム国に魅力を感じている。イスラム国の得意気な様子の戦闘員が巧みな文句を並べ立てる動画を流し、外国人の同胞を募る。堕落した欧米型の生活を捨てて「殉教者」となれば、天国が約束されるという。

 彼らは、戦闘員に支給されるエナジードリンク「レッドブル」など贅沢品の写真をツイッターにアップしたかと思えば、その次には、切断した敵兵の頭部を抱えた自分撮り写真を公開する。顔文字(各種記号で作る笑顔などのマーク)や、インターネットで使われる「LOL」などの略語(「LOL」は「(笑)」の意)を使う一方で、西側世界に向けて威嚇メッセージを発信する。

■ネットが使え、物資も豊富

 イスラム国は、シリア東部の町ラッカへの支配を強めている。昨年3月に他の過激派が掌握したものを横取りした。ラッカは、シリアとイラクで活動するジハーディストの本拠地となった。遠方のアフガニスタンやスウェーデンなどから来た戦闘員たちは、妻と子どもを連れてラッカの町に入り、住民が逃げ出した後の空き家に住み着く。

 シリア北部で活動するある欧州出身の戦闘員に、故郷のどんなものを恋しく思うか尋ねると、「牛乳」という答えが返ってきた。「ここでは牛の乳を自ら搾って飲むしかない」と言う。なるほど、英国のスーパー「テスコ」で買うよりずっと手間がかかる。

 スウェーデン出身のある戦闘員は「でもジャンクフードはたくさん支給される」と嬉しそうにツイートする。そして「くつろぐための時間はたっぷりある。時には何日も続けて休むことができる」と「Kik(キック)」――スマートフォン用メッセージングアプリ――に綴る。そんな時には「洗濯や掃除をしたり、トレーニングをしたり、買い物をしたりと、日常的な一日」を過ごすのだという。

 シリアには衛星を使ったインターネット通信があり、物資が継続的に流入する。域内の他国に比べて開発水準は高い。それゆえシリアでの活動には、アフガニスタンの山岳地帯のような困難はない。昨年、新たな仲間を増やそうと、ジハーディストたちは「5つ星の聖戦」というハッシュタグをつけた写真を何枚もツイッターで配信した。

■身代金を欧米の言葉で要求

 このような環境に暮らしてはいるが、欧米出身の兵士たちは戦いに尻込みしているわけではない。一部の兵士は「カーフィル(不信仰者)」とみなされた人たちを殺害するプロジェクトに参加している(カーフィルにはシーア派イスラム教徒だけでなく、実践が甘いとされたスンニ派のイスラム教徒も含まれる。彼らはすべて背教者とみなされる)。戦闘員たちはダムや軍事基地、油田を奪うための戦いにも参加する。そして、今年2月に英国人アブドゥル・ワヒード・マジドがシリア第2の都市アレッポで行ったような自爆テロ任務も遂行する。

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