英国北部スコットランドで今月18日、独立の是非を問う住民投票が実施される。

 独立の支持が過半数に達すると、面積、人口ともに北海道よりやや小さい新国家が、2016年にも欧州に誕生する。

 かの英国が二つに分裂か。そう聞くと、衝撃的だ。やはり独立を求める地域を抱えたスペインなどへの影響も大きい。投票を前に賛否は伯仲している。

 ただ、英国はすでに、欧州連合(EU)という統合の枠組みの中にある。グローバル化、ボーダーレスの時代でもある。アフリカの旧植民地が自由を求めて闘争を繰り返した時代とは、「独立」の意味が異なる。

 独立や分裂といった言葉の響きに過剰に反応する姿勢は慎みたい。むしろ、この投票を、国家のあり方について議論を深めるきっかけとしたい。

 スコットランドは1707年にイングランドと連合を組み、今の英国の基礎を構成した。両者の間に、言語や宗教の深刻な対立があるわけではない。文化も、共有する面が多い。

 しかし、1970年代にスコットランド沖で北海油田の採掘が本格化するとともに、英政府に対して「利益が地元に十分還元されていない」との不満が強まった。鉄鋼や造船といった地元の主要産業が80年代のサッチャー政権下で冷遇され、独立への機運が高まった。

 独立派は、北欧諸国をモデルとした高福祉社会を理想として掲げ、単独でのEU加盟を求める。英残留派は、独立によって金融都市エディンバラが衰退する恐れなどを指摘する。

 もし独立となると、課題は山積している。通貨は何を使うのか。領内に配備された英国の核兵器をどうするか。

 一方で、独立によってスコットランドが手にする権限は、実は必ずしも多くないともみられる。英国を含むEU加盟国は、主権のかなりの部分をすでに、EUに移譲しているからだ。

 それは、2度の大戦を経て欧州が得た教訓に基づいている。国同士が張り合うより、互いに結びつき、協力、統合の体制を築く。こうした長年の取り組みが、EUの構築に結びついた。

 スコットランドの独立を巡っても、EUが大きく周囲を包んでいるからこそ、紛争に陥ることなく冷静に議論をする素地がつくられたといえる。

 欧州以外の地域は、国家の枠組みを絶対視する価値観が今も強い。そこに暮らす私たちにとって、今回の投票が浮き彫りにする欧州の成熟ぶりに、学ぶべき点は少なくない。