台湾:中国人立候補に波紋 大学の学生会長選 

毎日新聞 2014年09月13日 11時04分(最終更新 09月13日 13時48分)

淡江大学の学生会長選に立候補した中国人の蔡博芸さん=台北市内で、鈴木玲子撮影
淡江大学の学生会長選に立候補した中国人の蔡博芸さん=台北市内で、鈴木玲子撮影

 【台北・鈴木玲子】台湾の大学で学生会長選挙に中国人の女子学生が立候補し、候補者の国籍を巡る議論がわき起こっている。中国に対し警戒感を抱く人々を巻き込み、議論は学内だけでなくインターネット上にも飛び火している。中台双方は互いの主権を認めていないが、中台交流が進む中、台湾では2011年に大学への中国人留学生受け入れが解禁され、中国人学生が増えている。

 議論が巻き起こっているのは台北郊外の私立淡江(たんこう)大学。17日から投票が始まる学生会選挙で、中国浙江省出身のマスメディア学科4年、蔡博芸(さい・はくげい)さん(22)が会長に立候補した。台湾紙によると、中国人が学生会長選に立候補するのは初めて。

 8月6日に立候補者が公告され、候補者の一人である蔡さんが中国籍と公表されると、「中国共産党が送り込んだ党員だ」などと政治的陰謀論まで浴びせられた。中国に敏感に反応する背景には、台湾社会に広がる中国の影響力に対する警戒心がある。今春の中台サービス貿易協定に反発する学生運動が一定の支持を得たのも、こうした不安感が噴出したためだ。

 ネットでは「中国人が会長になるのは許せない。台湾の主権が脅かされ、中国の影響力が大学にも広がる」などと中国への警戒心をあらわにする声が上がる一方、「立候補に国籍制限はない。資質があれば問題はなく、民主的に学生が投票で決めればいい」と支持する意見も相次ぐ。蔡さんは「学生の権利を守ろうと立候補しただけなのに、こんな騒ぎになるなんて」と困惑する。

 蔡さんは高校3年のとき、初めて訪れた台湾旅行で人々の温かさにひかれ、11年に同大日本語学科に入学。3年生で本来志望だったマスメディア学科に転科した。大学の友人らと社会問題に取り組むグループを結成。今春の中台サービス貿易協定に反対する学生運動にも参加した。昨秋には学費値上げに反対し、大学側に公聴会開催などを求めた。「台湾で自己の権利とは何かを学んだ。台湾社会が教えてくれた」と話す。

 蔡さんは「台湾社会が中国に対する見方を考える契機になるのはいいことかも」と話す。投票は24日まで行われる。

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