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同人音楽家のDJが5年ぶりに出たアニクラの風景
- 5年ぶりにアニクラにブッキングされた
アニクラに出演致しました。現在アニクラと呼ばれるスタイルのイベントにはDENPA!!!のレギュラーイベントを経て、最後に出演したのはMOGRAのオープニングでしたので実に5年ぶりです。今日は私が全く知らない現在のアニクラの世界の感想を書きますが、こういうのは聞く所によると中々センシティヴな話みたいですので出演したイベント名も、共演者も伏せます(殆ど出ていないので調べればすぐわかりますが伏せ字のようなものです)。
はじめまして、私はゲーム音楽でHARDCORE TECHNO/OLDSKOOL HARDCORE RAVEを中心として活動するDJ、DJ TECHNORCH(テクノウチ)です。私は今回アニクラに触れてみて大変に驚愕するぐらいアニクラとの接点は現在皆無で、畑も違うため、今回は完全な部外者の意見となります。ある意味しがらみがなく、そして知らないが故に頓珍漢な感想を零すことになると思います。アクマでこれは感想であり、こうするべき、あぁすれば良いという意見ではありません。アニクラの常連の方はその点どうかご了承下さい。
私は同人音楽家のLive Actであり、DJです。え?クラブ畑のDJではないの?違います。私の所属するHARDCORE TECHNOは2006・7年に起きたJ-CORE文化大革命により、現在クラブというよりは正確にはコンサートと呼ばれる状態にあります。ですので私はクラブDJではありません。そして「同人音楽家のDJ」という言葉は、わかりにくいのですが「同人音楽をプレイするDJ」でもありません。プレイしてる音楽は殆どHARDCORE TECHNOです。このへん、J-CORE界隈に属さない人間には非常にわかりにくい構図となっておりますがどうぞ今一度ご確認を。
- 5年ぶりにアニクラに出演
友人のアニクラ常連によると、私がブッキングされたイベントは「平均的なアニクラとは言えない」ということでした。どういう風に違うの?と聞くと、これは行っていないと説明出来ないといいます。それは尤もなことで、イベントの空気なんてものを口で聞こうと言うのがそもそも間違っています。ついでに、一番平均的なアニクラって何?アニソンインデックス?サイリウム?と聞くと、「えぇとなんだろう?ごめん、平均的なアニクラなんてそもそもないな」という回答が帰ってきました。どうやらアニクラはそれぞれのイベントが空気が違うようです。
ということで私が出演したイベントは特段平均的なアニクラではない、ということを踏まえながら感想。
そもそもアニクラに何故私が呼ばれたのか?それはオーガナイザーがありがたいことに私のファンだったということでした。それは大変に嬉しい事で、私はどんどん違う空気のパーティーにお呼ばれしたいタイプなので、こういうのはとてもありがたかったですね。ではアニクラの感想です。
- アニクラの空気
まず驚いたのが男女半々という男女比。オタクイベントなのに女の子が多い、そして殆ど全員コスプレしている。でもこれはDENPA!!!の時でも驚いていた気がします。特に初期のDENPA!!!は読者モデル層という謎の層がいて、皆とにかくオシャレでした。ですが当時と違うのは、当時の初期のDENPA!!!は、普通のアニメファンに加えて読者モデル層が初めてのアニソンをブツケられ、感化されて急遽コスプレイヤーになったという印象が(だから大ヒットアニソンに偏っていた印象がある。アニソンがクラブでかかるという事実それのみで皆驚愕だったので問題はなかったのですが、そういう人達をもマニアックなアニソンで綺麗に躍らせるDJシーザーさんには大変驚愕致しました)あったのに対し、今のアニクラの女性コスプレイヤーは話してみるととにかくアニメに詳しい、元々アニメにちゃんと詳しい訳ではないのにアニソンDJをしていた私(はどちらかというと2007年ぐらいから流行り始めたアニソンネタJ-COREの文脈でDENPA!!!に呼ばれていた)なんぞよりも遙かにアニメに詳しいということです。
今日はアニソンDJとして呼ばれなくて良かったなぁと再認識しました。今の私のアニソン知識でアニソンDJをしたらそれはそれは寒いことでしょう(とりあえず一年と二千年前から?)。今日はHARDCORE TECHNO Live Act.としての出演です。胸を張りましょう。
しかし胸を張るのも一瞬で私はどんどん怖くなってきました。お客さん達の踊り方が私が知ってるクラブとは違うのです。
- お客さんの踊り方「腰から上」は「肘から上」へ
HARDCORE TECHNOのお客さん達はJ-CORE文化大革命以降、「腰から下」で踊らなくなりました。それはどちらかというと、J-POPのライブに近い、「腰から上」の踊り方です。そこにアリーナで行われるアニソン・声優ライブのノリが加わり、「腰から上のダンス」「ウナギのような腕のウネウネ」「サイリウム(≠ルミカ)」のような形になっています。
ですがアニクラはもっと徹底的でした。もう「腰から上」ではないのですね、全てが「肘から上」の文化です。殆どの感情表現は「肘から上」で表現されます。アリーナのアニソン・声優ライブのノリに、恐らくコスプレパラパラの文化が加わり「肘から上のダンス」「パラパラ」「ウナギのような腕のウネウネ」「ほぼ必須のサイリウム(≠ルミカ)」のようなダンスになっていました。これは徹底的、ビートにのって体が云々はあんまり関係ないようです。
それよりも更に私が驚いたのことは
- 知らない曲では踊らない
お客さんは曲に反応した突然雄叫びをあげ、前に前進していき、終わると戻る。そこまでしないまでも特定の曲でパラパラをして、それ以外では停止、そういう光景が全体で繰り広げられていました。
現在のコンサート化したHARDCORE TECHNOでは、知らない曲では「踊らない」のではなくどうやって反応していいか分からず「踊れない」のです。戸惑っているうちに曲が過ぎていく。踊れないのはDJが悪いのではない、私達が悪いのだ(という思い込み)。
対してアニクラでは、知らない曲では「踊らない」のです。その間友達と喋ったり停止していたり、そもそも知らない曲をかけるDJが悪いのです。
果たして既知であることが勝敗の全てを分けるこの状況で、私はライブをして大丈夫なのか?かなり不安でしたが、なんていうか「知らない割には結構踊ってくれて」嬉しかったです。やれることはやった、もっと頑張り所があった気はするけど、とりあえず上々でした。問題があるならそれは「全部僕が悪い」のです。
- 世の中には斬新さ・革新性を求めないクラブシーンがある
アニクラは最近急成長するクラブシーンの一つです。私達はTECHNOという音楽を基準にクラブを考えているので、ついつい斬新さ・革新性の正義を盲信しているところがあります。TECHNOは「第三の波」と言われた、それまでの音楽にはないテクノロジーから発足した誕生そのものに「革新性」が関わる音楽で、古くはNEW WAVEに影響を受け、誕生直後にNEW BEATが生まれ、TRANCEに分派した世界ではNU NRGが誕生し、そして私達のHARDCORE TECHNOの世界ではNEWSTYLE GABBERが生まれました(PROGRESSIVE HOU/TRANCEというのもありますね)。新しいということはそれ自体が正義であり、常に誰も彼も斬新さと革新性を求めている(という建前で殆どのチャートには安牌が乗るという現実)世界に影響を受けすぎており、現在のコンサート系J-COREでもとりあえず建前上はそうなっています。
ですがアニクラは「革新性」というものを建前にはすら持っていません。「既知」、全ては知っているか否かなのです。この立ち振舞はある意味逆説的に「斬新」です。このようなスタイルはクラブというよりディスコマナーに近いものがあると思いますが、現在そのジャンル自体の名称に「アニクラ=アニソンクラブ」というクラブの名を関した世界にこのような性質を持つアニクラはある意味斬新ですが、私はこの斬新さをパラパラギャルにダブってみます。
オタクとギャルは正負の反対であるというより、表裏の関係にあるという言説はよく聞きますが、音楽の革新性に対する振る舞いはパラパラ文化にかなり近いものが思いました。寄り道はこのぐらいにして次の驚き
- コスプレイヤーを拾う、1対1の関係性
お立ち台がありました。これもディスコとパラパラに通じるものがありますね。ですがみんな勝手にはあがりません。みんな恥ずかしがっているのかな?と思ったらそんなことはありませんでした。セーラームーンの曲がかかれば、セーラームーンのコスプレ達が全員一斉にお立ち台にあがるのです。そして次の曲がかかるとセーラームーンは一斉におり、次の曲に対応したコスプレイヤーが登る。
なんて見事なシステムでしょう。しかもこれは偶然その曲がかかっているのではなく、DJがコスプレイヤーを見て、きちんと「拾っている」というのです。これは驚き。そして人気DJは「自分についている」沢山のお客さんを把握しており、イベントの度にそのお客さん達をきちんと「拾っている」といいます。だから余計に人気になる。
これは驚いた。正に通常の1対多数の対応で進むクラブとは全く違う世界です。ここでは1対1の世界なのです。これには感銘を受けました。
- 客層
そして最後に客層ですが、すいません私最後に猛烈にアバウトなことを言います。
なんていう社交性!
なんていうこの…人間的に「出来てる」感…
なんか…年収…高そう…
すみません、ダイナミックにアバウトなこといいました。だって本当にそう思ったんだもん…このイベントだけ?アニクラ全般?
とにかく、私達とは全く違う生き方をするDJとお客さん達がこんなに沢山いて、一つの文化を作っていることにとても感動しました。未知の世界です、とても興味ぶかかったです。呼んでいただいたオーガナイザーさん、踊ってくれたお客さん達、大変ありがとうございました。また行きます。
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