2001年4月3日(火)
皆さん、『狂牛病』って聞いたことがありますか?日本では、あまり影響はないと思われていますが、ヨーロッパは大変みたいです。パリのレストランでは、ビーフの料理が、ほとんどでないそうです(朝日新聞の天声人語より)。この病気は、プリオンというタンパク質によって感染して、脳を萎縮させ、痴呆様症状がでるため、『狂牛病』という名前がついていますが、人間では同様の病気は、『クロイツフェルトヤコブ病(略してヤコブ病)』と呼ばれます。以前は、ウシからヒトへは、感染しないと言われていましたが、数年ほど前に『狂牛病』の牛肉を食べると、『ヤコブ病』になる可能性はあると発表されてから、ヨーロッパは、大混乱になりました。英国、フランスなどで多くのウシが、処分されました。日本では、ヨーロッパからの輸入牛肉は、少ないせいか、あまり問題になっていないようですが、最近、医療用として、輸入されてきたウシの骨から作った『乾燥凍結骨』の使用が、問題になっています。この乾燥凍結骨は、歯科や整形外科で、骨組織の修復に用いられることがあり、今年の2月下旬に、厚生労働省からの、注意文書が出されています。その文書によれば、欧州からの輸入される『乾燥凍結骨』の使用は、自粛するようにとのこと。歯科では、歯周病の患者さんのなくなった骨を再生する高度先進医療に用いられてきました。ウシの骨が、歯周病の患者さんの手術に使われてきたなんて、知ってました?『どこの馬の骨か、わからないような男!』なんて言いますが、『ウシの骨』を人間の体内に、手術で入れるのは、私は、ちょっと抵抗があります。でも、もっとびっくりするような材料も、歯科の先進医療では、使われているのです。続きは、また次回。

2001年4月18日(水)
前回、ウシの骨を材料にした乾燥凍結骨を、高度先進歯科医療として歯科治療に使われていることをお話しました。主にインプラントや歯周病の治療に用いられてきました。もちろん、保険適応ではありませんから、自費診療となります。これが、1990年代の後半の狂牛病騒ぎで、その安全性が問題となっています。でも、もっとびっくりするような材料も、歯科では使われてきました。もちろん、保険診療ではありませんが、1990年代にはインプラント治療や歯周病の治療に、死体の頭部から得られた『脳硬膜』が用いられてきました。これは、死体から得られた脳硬膜を乾燥させて薬物処理したもので、骨の再生促進の目的で使われてきました。もともと脳外科の手術で、脳を保護する目的で使われてきたものですが、1990年代に、歯科でも使われるようになりました。私自身、どうも歯科の治療に、死んだヒトの脳から採取した材料を使うのは、抵抗があります。そのうえ、脳外科手術に使用されていた『乾燥脳硬膜』がヒトの『狂牛病』にあたる『クロイツフェルトヤコブ病』に汚染されていて、手術のあと数年してから患者さんが、『クロイツフェルトヤコブ病』を発症するという症例が報告され、第二の薬害エイズとして、大問題となってきています。一時、歯科治療では、脳外科手術のように頭蓋骨内に直接入れないので、『クロイツフェルトヤコブ病』には、感染しないと言われてきましたが、心臓手術でも発症することが最近報告されていることから、理論的には歯科の治療で使用された『乾燥脳硬膜』が『クロイツフェルトヤコブ病』で汚染されていた場合、術後何年かして、『クロイツフェルトヤコブ病』を発症する可能性は充分に考えられます。つづきはまた、次回お話します。
2001年5月13日(日)
政治の世界では、小泉内閣が発足し、支持率が70%以上で、歴代内閣の最高とか、国民の改革に対する期待の高さが伺えます。先月、『狂牛病と歯科治療』のお話をしましたが、以前につかわれたヒト乾燥腦硬膜が、クロイツフェルトヤコブ病に感染していた疑いがあり、それによって世界的には、近い将来歯科治療によって、クロイツフェルトヤコブ病に感染した症例が、報告される可能性があるのです。日本国内においては、現在では、ヒト乾燥脳硬膜の使用は、自粛するようにとの厚生労働省からの通
達があるので、新たな感染はないと思われますが、以前に使われたものについては、追跡調査が非常にむづかしいと思われます。歯科治療においては、たいてい小規模の開業医において、このような手術が行われており、正確な追跡調査は非常にむづかしいと考えられるからです。この件について、医師でもある民主党の桜井充参議院議員に、メールでお話したところ、さっそく厚生労働省の担当者と話し合いを持っていただき、その担当者の方から直接電話をいただきました。電話の内容は、この件に関しては、厚生労働省も正確には把握していないので、どのように調査をすすめたらよいか、意見を聞かせてほしいとのことでした。この非常に迅速な対応に、政治家の影響力について改めて、感心させられました。また、桜井議員の行動力にも感銘を受けました。桜井議員のホームページには、その活動内容などくわしく報告されており、また詳細なメールマガジンの発行されています。この乾燥脳硬膜とクロイツフェルトヤコブ病との関連は、現在『ヤコブ病訴訟』として、第二の薬害エイズとして、訴訟がすすめられていますが、こういった問題はやはり、強い政治的な力がないと解決にいたらないのかもしれません。
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