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アスリートが活躍すると急に地元が盛り上がり、
暴走族は名無し・アタマ無しが流行る不思議ニッポン

降旗 学 [ノンフィクションライター]
2014年9月13日
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 今週初め、プロテニスプレーヤーの錦織圭選手が全米オープンで準優勝を果たした。正直なところを言えば、日本人選手がグランドスラムでファイナリストに名を連ねるなんてことは、私が生きているうちにはないだろうと思っていた。

 アラフィフ世代からすれば、テニスプレーヤーと言えばビヨン・ボルグやジョン・マッケンロー、イワン・レンドルあたりですかね。マンガ『エースをねらえ!』をリアルタイムで知ってる人ならキング夫人とか。個人的には九〇年代に活躍したガブリエラ・サバティーニ選手が好きでした。当時はできて間もない有明コロシアムに通ったものです。

 という話は措いといて、日本人選手が四大大会のファイナリストになる日なんて来るのか――、と思っていた私には、錦織圭選手の活躍は衝撃以外の何ものでもなかったが、もっと驚いたのは、ワイドショーをはじめとする盛り上がりだった。

 会社勤めをしている方はご覧になれなかったでしょうが、朝のワイドショーなんか、見ていて気持ち悪いくらいでしたよ。司会者もゲストも、みんな彼の国の子どもたちみたいなにこにこ顔で、錦織選手の優勝を願って応援していた。

 こいつ、絶対に最近まで「錦織」の読み方を知らなかったぞ、というようなゲストまでがニシコリニシコリだった。テニスにぜんぜん興味がなさそうなコメンテーターまで、あたしテニスだ~い好き、みたいなしたり顔で語ってた。

 それはいいのだけど、こーいうメディアの騒ぎっぷりとか、応援の仕方が日本人的なんだろうな、と思い、私はたいへんな違和感を覚えていた。

 違和感のひとつは、テニス専門誌やスポーツ誌を読んでいなかったから何とも言えないが、過去一年以内……、あるいは過去二年以内に、錦織選手にはファイナリストになるだけの力がある、と見抜いていたテニス関係者、スポーツジャーナリストはいたのか、という点だ。

 ワイドショーを見ていて、出演者の誰もがお祭り騒ぎですごいすごいと繰り返していたということは、おそらくは、錦織選手の活躍を誰も予想していなかったように思えてならなかった。ゲストに呼ばれた杉山愛さんや松岡修造さんまでが浮かれていた。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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三面記事は、社会の出来事を写し出す鏡のような空間であり、いつ私たちに起きてもおかしくはない事件、問題が取り上げられる。煩瑣なトピックとゴシップで紙面が埋まったことから、かつては格下に扱われていた三面記事も、いまでは社会面と呼ばれ、総合面にはない切り口で綴られるようになった。私たちの日常に近い三面記事を読み解くことで、私たちの生活と未来を考える。

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