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第3 争点に対する当裁判所の判断
1 事実認定
証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)本件面談に至る経緯等
ア 平成5年10月号(平成5年9月10日発売)から,被告矢野は,文藝
春秋に本件手記を連載するようになり。その中に「私たちはとかく政教一
致というご批判をいただいているが,確かに状況をみてみると,そう言わ
れても致し万ない面はある。」,「芦屋の池田名誉会長宅」などといった表現
があった。(甲30,乙9)
イ 平成17年初めころ,創価学会関西青年部は,被告矢野の本件手記の存
在を知り,創価学会に対する重大な背信行為・裏切り行為であり,見過ご
すことができない重大な問題と考え,森井は,弓谷に対して,その問題意
識を訴え,同年3月,弓谷は,原告に対し,関西青年部が,被告矢野に対
して,上記のような問題意識を持っていることを伝えた。(甲89)
ウ その後,原告は,青年部から被告矢野のことで相談があったことを,当
時の秋谷栄之助会長(以下「秋谷」という。)に報告した。
平成17年4月6日,秋谷,関西の西口良三副理事長(以下「西口」と
いう。),長谷川副会長,弓谷,森井,杉山及び原告との間で面談が行われ
た。この席で,弓谷及び森井は,秋谷らに対し,関西青年部で被告矢野と
面談し,本件年記について,被告矢野の認識や掲載の意図等について,直
接確認させてほしいと要望した。これに対し,秋谷から,まず,西口と藤
原武関西長(以下「藤原」という。)が被告矢野に会って,青年部が本件手
記を問題としていることを伝え,謝罪を公表するこ。とについて,被告矢野
が了解ずるかどうかを確認してくるということが提案され,青年部も最終
的に了解した,秋谷からは,被告矢野に求める謝罪の内容について,青年
部の方で文案をまとめておくようにとの指示があり,青年部がその文案を
事前に用意することとなった。(甲89)
工 同月20日,創価学会戸田記念国際会館にて,西口,藤原及び被告矢野
との間で面談が行われた。
西口及び藤原は,被告矢野に対し,青年部が本件手記について大変怒っ
ていることを伝え,謝罪文を書いてほしい趣旨の発言を繰り返した。被告
矢野は,当初反論をしていたものの,最終的には謝罪文を書くことを了解
し,内容については,青年部の作成した文案を持ち帰って自分なりに表現
を考える旨述べ,同月22日に持参することを約束した。(甲89,乙9)
オ 同月22日,被告矢野は,「お詫びと決意」と題する池田大作会長あての
謝罪文を戸田記念国際会館に持参し,西口及び藤原が受け取った。その謝
罪文には,本件手記に間違いや不適切な表現があり,創価学会に迷惑をか
けたことについて反省し謝罪する旨の内容が記載されていた。(甲49,8
9,乙9)
カ その後,被告矢野がゴールデンウィークに夫婦で海外旅行に行くという
話が浮上し,創価学会員らの間で波紋を広げ始めた。
同月23日,秋谷は,被告矢野に電話をかけ,間近に都議選を控えてお
り,会員の感情を考えれば時期が悪く,旅行を中止すべきであると説得し
たが,被告矢野は,仕事で行くのでキャンセルはできないことを伝えた。
同日午後,被告矢野は,秋谷にあててファックスを送信し,都議選を控え
た時期の海外旅行であることを詫びる一方で,相手方に対し,一度は断っ
たが強い要請がありキャンセルはできず,できるだけ日程を短縮して参加
する旨を伝えた。(甲45)
キ 同月28日,聖教新聞に,「公明党元委員長の矢野氏が謝罪『文藝春秋」
(93,94年)掲載の手記をめぐって矢野氏“私の間違いでした”“
当時は心理的におかしかった”」と題する見出しの記事が掲載された(甲6
6,乙6の1)。
同日,被告矢野は,海外へ出発した(乙9)。同年5月9目付けの聖教新
聞には,「公明党矢野元委員長が海外1?行動で示せ!口先だけの「謝
罪」は要らぬ」と題する見出しの記事が掲載された(乙6の4)。
ク 青年部は,被告矢野が本俸手記について謝罪したにもかかわらず,夫婦
で海外旅行に出掛けたことに納得できず,改めて,被告矢野と直接面談し
たい旨,秋谷に要望した。秋谷は,長谷川に対し,被告矢野が海外旅行か
ら帰国後に,青年部との面談に応じるよう連絡をとることを指示した。(甲
89)
ケ 長谷川は,被告矢野の息子である矢野清城を通じて,被告矢野と連絡を
とり,青年部が怒っていること,青年部に会ってほしいことなどを伝え,
被告矢野は帰国予定の同月14日の夜に青年部との面談を行うこととなっ
た(甲89,乙9)。
(2)本件面談の内容
ア 同日,被告矢野は,海外から帰国し,青年部との面談場所である戸田記
念国際会館に向かった。戸田記念国際会館の玄関では,長谷川が待ってお。
り,面談の直前,被告矢野は,長谷川から,青年部に冷静に対応するよう
助言された,(乙1,9)
イ 面談は,原告,弓谷,杉山,森井,青年部主事の丹治正弘(以下「丹治」
という。),被告矢野との間で行われた。被告矢野の正面に原告,その左に
弓谷,右に森井,被告矢野の左に杉山,右に丹治が座った。(甲89,10
0,乙9)
ウ 初めに,原告らから簡単に自己紹介がなされた後,原告らの方から被告
矢野に質問するという形で進められ,本件面談は,約90分間にわたって
行われた,そこでは,概要,以下のようなやり取りが行われた。(甲50,
92の1,92の2。以下,括弧内には,甲92の2の対応する項数を示
す。)
(ア)原告 「で,あのー,まぁ,西口,藤原,あー長谷川副会長から伺っ
ている点で。あのー,まあ,まず,「文藝春秋」の手記についてで
すね。あのー,大変な騒ぎになり,まあ,あのー,平成5年,6
年ころは,まぁ,私も青年部の幹部として,えー,もう激動の中
にあったわけですけれども。あのー,政教一致と受けと,とられ
ても致し方ない面があるということについては,これは聞違いだ
ったということでお詫びをされていると。あのー,本来はそうい
う趣旨で書く,つもりはなかったんだけれども,あのー,編集部
の方で,えー,そうなっていた,ということで,これは間違いだ
ったんだというふうに話しておられるということなんですが。こ
れは,そういうことなんでしょうか。」
被告矢野 「と言われても仕方がない面もあると。そういう見方もあ
るが,それは違うと。そういうふうに書いたんです。」
原告「なるほど。で,それから。」
被告矢野 「ところが,あー,校正の段階で,えー,最初の校正でも,
そうなっておったんですが,最終稿で抜けておった。ですから,
私の不注意です。」
原告 「そうすると,出た手記は,間違い,その部分は間違いだとい
うことですね。」
被告矢野 「そうです。」
(39ないし43項)
(イ)原告 「この手記が,どれほど学会員苦しめたか。先生の喚問,当時
の致教一致批判。えー,あの,関西の男子部が,まあ,怒ってい
るのはでずね,えー,「一生懸命支援活動に行くと。と,矢野って
いう評論家が,学会と公明党の関係について何か言っていると。
友人は,「あの人,元委員長だろうと公明党の,どうなってんだよ」
と言われる。それを,私たちは一生懸命,説得しましたと。なん
で味方のはずの人が足を引っ張るんですか。なんで敵に塩を送る
ようなことをするんですか。この悔しさは言いようがありません,
と。何者なんだと,あれは」と。」
被告矢野 「私は,テレビで,政教一致だとか,学会を誹謗したよう
な発言はしておりませんよ。」
弓谷 「いや,誹謗してないとかじゃないですよ。」
原告 「はっきりと,そうじやない,という発言をされましたか,テ
レビで。」
被告矢野 「政教一致であるとか,政教分離であるとか,はっきり言
ってます。」
原告 「世間で,そういうことを言われていることはおかしいと言わ
れましたか。言えませんよ。だって手記にその,そういうこと書
かれてるんですから。」
被告矢野 「私は言ってきてます。テレ,テレビに限るならばですね。」
杉山 「例えばですね。その,あの,日刊ゲンダイの「一刀両断」,ご
ざいまずけれども,99年の段階でもこういうふうに言ってるわ
けですよ。」
被告矢野 「はいはい。」
杉山 「「政権の中枢に食い込む創価学会の意図を,だ,意図を代弁し
たと。単なる,そういう,自自公にこだわるのは選挙狙いじゃ,
だけじゃない。」
要するに,あらゆるところで評論活動をしながら,結局,いろ
んな形で,その,元公明党の委員長でありながら,公明党のこと
を批判してる。支援活動を一生懸命やっているメンバーに,どう
なのかと。それだけじゃない。創価学会に対して,いろんな意図
が,あるんじゃないか。それを代弁したものじゃないか。ま,こ
ういうふうに,載ってるわけです,例えば,
で,一事が万事で,やっぱりこういう,ことを傾向性としてで
すね。」
被告矢野 「はい,はい,そりゃ分かる。」
(298ないし308項)
(ウ) 森井 「ちょっと待って下さい。矢野さん,もう一回聞きますけども,
これは本当に書いたこと自体が間遠いだったと,そうじやないと
今でもおっしゃるわけですか。」
被告矢野 「そうじやない。というのは,お詫びしてるわけですから
ね。」
(314,315項)
(エ)原告 「いや。あ,今,森井が言っているのは,今の,お考えはどう
なんでしょうと。あのー,事実の指摘を受けて,あ,それは確か
に間違いだったと,いうことを言われてる。それから,ま,関西
長にもお詫びされたことがある。けれども私たちは,あの時期に,
週刊,あ,月刊「文藝春秋」にこの手記を出したこと自体どうな
んだと。利敵行為であり,いー,同志を裏切る,先生を貶める,
広宣流布に弓を引く,そういう行為じゃないかと思ってるわけで
す。」
被告矢野 「なるほど」
原告 「そのことについて,矢野さんは今はどう思われてるのか。「数
カ所の,不注意な」ということなのかということです。」
被告矢野 「あのー,あれは,私は,秋谷会長に,いかようにも,こ
の辺のところは直しますということは,申し上げております。」
原告 「矢野さん,そうじやなくてですね,会長に直してもらうこと
が大事じゃなくて,矢野さんがどう書かれるか,矢野さんがどう
思われてるかっていうことを聞きたいんですよ。」
被告矢野 「なるほど」
原告 「こう自分で書いて,それは会長が直してきたんだと」
被告矢野 「いや,そうじゃない」
原告 「会長の直しだと。それは逃げですよ,それは。」
被告矢野「いや,そういう意味じゃありません。」
原告 「矢野さんがどう,言われてんのかっていうことを聞きたいって
いうことなんです。」
被告矢野 「まぁ,皆さんの,今日の気持ち,よく分かりましたし,
私の認識が,まだ浅かったということだろうと,思うんですが。ま
ぁ,要するに,そこでの,この新しい方の文章ですね。私は,あ
の,そこまで皆さん方が,この文章のことでね,お怒りであると,
という認識がなかったんだということだと思いますね。」
弓谷 「ていうか,だから,それは要するに,要するに,これ書いた
こと自体まずかったと,悪かったと,お思いになるということで
すか。」
被告矢野 「今日今,皆さんからの,痛切にお話を聞いて,悪かった
と思います。」
弓谷 「これ書いたこと自体まずかったと。」
被告矢野 「思います,明確に申します。」
(318ないし333項)
(オ)森井 「…あの明電工の時も,本当にみんなしんどい思いをして,平
成2年の寒い時期の2月の選挙やりました。だけど,あのとき矢
野さんがおっしゃったのは,「私も,最後議員引退したら,必ず地
元に帰って皆さんとともに戦います」と,そうおっしゃった。そ
の言葉を信じて,皆頑張ったわけです,あの時。だけども,引退
したあと,音沙汰も全くない。挙げ句の果てはこんな,手記が出
てくる。みんな小さい頃から,苦しんでる親父やおふくろの姿を
見てきましたよ。それでも,矢野さんまだ,この手記自体の,本
当に当時の誤りを認められないかどうか。要するに,みんなの中
には,矢野さんが反逆したんじゃないかと,関西の同志を裏切っ
たんじゃないかと,その気持ちしかないんですよ。だから,これ
だけの声が1日で上がってきたんです。」
原告 「私もこれ,あのー,ちょっと読ましてもらったんですけれど
も。あのー,みんな覚えてます。矢野さんが,「私も議員をやめた
ら,皆さん,同志の皆さんと一緒になって戦います」と,切々と
訴えられた。覚えてます。矢野さん覚えておられますか。」
被告矢野 「覚えております」
原告 「はい,実現してませんね,」
被告矢野 「私は,これ,ちょっと生意気な言い方になって。お許し
いただきたいんです。まあ,十分,大阪へ帰って,皆さんと共に
戦う。そういう気持ちも,今だってありますよ。」
森井 「今でもありますか。」
被告矢野 「そのかわし私は,まあ本当に生意気な言い方で勘弁して
ほしいんですけどね。これでも根性はあるつもりですし。もし仮
に,私が世間から見て,多少なりとも客観性のあることを言う人
間だと。もしもですよ。そういう評価がもし,自分のカでできる
ものであるならば,私は,そっちの道を選ぼう。」
原告 「なるほど,うん。」
被告矢野 「そして,根性あるというのはそういう意味であって。で,
本当の敵には,私は,二度でも三度でも,命捨てる覚悟がありま
す。ただ,今おっしゃったことについては,私,弁解もしません。
お詫びするしかない。が,しかし私は私なりの根性あるつもりで
す。だから,私は,今おっしゃったように,大阪を離れて,別,
別にこれ金儲けしているわけでも何でもないんです。で,これが
いかんと,言われりゃ,それはそれまでのことで。そうでしょう。」
弓谷 「いや,それがいかんのですよ。いかんのですよ,それ,そこ
がそこが我々青年部が通じてへんと思ってるところなんですよ。」
森井 「「声」の中で一番多いのが,その矢野さんが評論活動している
ことそのものが,公明党の元委員長でありながら,第三者的な評
論の,かつ,繰り返していると。」
被告矢野 「まあ,それはね,だから,もちろん,皆さんもそういう
意見があるということは,前提でね,私の考えを申し上げたわけ
で。」
原告 「あのー」
被告矢野 「私はその道で。」
原告 「矢野さんの気持ちは,そういうお気持ち。」
被告矢野 「まあ,あの,増上慢と言われりゃそれまでの話です。」
原告 「いやいや」
弓谷 「「それまで」とかいうね,そういう,そういう吐き捨てて終わ
るような話じゃないんです。」
被告矢野 「はい。」
原告 「あの,お気持ちかもしれませんが。まあ,あのー,この手記
を書かれて,一番喜んだのは,山崎正友,内藤国夫。不愉快な,思
いしたのは学会員なんです。」
森井 「そうなんです。」
被告矢野 「それは,よく分かりました。」
原告 「で,世間がどう思うかもありますが,学会員がどう思うかっ
ていうことが一番大事なんです。矢野さんを手弁当で支持してき
た人たちが不愉快な思いしてんですよ。不愉快な,思いを。そのこ
とについて,どう考えられてるかってことを聞きたいんです。人
生をかけて支持してきた人たちが,不愉快な思いをしても関係な
いんですか。」
被告矢野 「そんなことないです。それは申し訳ないことです。」
原告 「それが,「数カ所の不注意な」,その程度の話ですか。」
被告矢野 「それはね,そういうふうに言われれば,もう俺も弁解の,
言葉の言いようもないです。ね,そこで,あのー,今日のお話の
ような趣旨を踏まえてね,書けとおっしゃれば書けます。しかし,
私は,その文章〔秋谷に渡した手記〕で,私なりの思いを込めて
書いたつもりです。それが足らん,と言われりゃそれまでです。」
原告 「足らんと言われればじゃなくて,どう思われるんですか,足
りていると思われているんですか。」
弓谷 「今の話を聞いてどう思われてるんですか。」
被告矢野 「えっ」
弓谷 「今,我々が話した話聞いて,どう思っていらっしゃるんです
か,矢野さん自身は。」
被告矢野 「だから,もっともだと。何遍も先ほどから,申し上げ,
悪かったと申し上げているわけでしょう。」
原告 「ただですね,あのー,悪かったっていう,ことは,ずっと言
われてるんですよ,矢野さん。」
被告矢野 「言ってますねー。」
原告 「もうね,手記を,掲載して,その月に,関西の幹部に,申し
訳ないことしたと,こんな大きな反響が出るとは思わなかったと,
言われるまで文春に載せることが罪だとは思わなかったと言われ
てんですよ。そう言われながら3回連載をされて,翌年また4回
連載されてるんです。」
被告矢野 「契約だったんですねー。」
原告 「契約が優先したわけですか,申し訳ない思いよりも。」
被告矢野 「いや,いや,そうじゃなくて。これはやはり,この世界
では,契約っていうものがやっぱり。」
原告 「いろんなこと言われてますよ,その当時。」
弓谷 「「この世界」ていうのは,それはですね,私たちに,い,に,
言わせれば,要するに学会を売っちゃった,てことですよ。」
被告矢野 「いやっ,ま,ま,言いません。はいはい,分かりました。」
弓谷 「学会との関係の中で,党で戦ってきた矢野さんの,そのメモ
もとにして書いてる。学会のことを売っちゃったんじゃないかと。
違うとおっしゃるだけの論理ないじゃないですか。首横に振られ
るだけの論理ないじゃないですか。」
原告 「だから,なん,何回も謝っておられると言われる,その,あ
や,謝罪,謝りが,本当に謝ってるのか,っていうふうになっち
ゃうんですよ。」
被告矢野 「確かにそれは,そういうもんでしょうね。ええ。」
原告 「で,支持者が不愉快な思いしても関係ない。」
被告矢野 「そんなことは言ってません。」
原告 「そうですが。でも行動が,関係ない行動になってますよね。」
被告矢野 「まあ,あのー,おっしゃられれば,そのとおりです。で
すから,まあ,あの,まだまだおっしゃりたいこと沢山あるだろ
うし,いくらでも承ります。あのー,お前は悪いやつだ,悪いこ
とをした。間違いだ。私としては,まー,遅ればせで申し訳ない
ことだけども。これは,ま,事実として残ってるわけです。」
弓谷 「これをだから,消してもらいたいんです。」
被告矢野 「といって,これは消えるわけじゃないんです。出てしま
ってるわけですから。ね。」
弓谷 「そんなことない。そんなことないです。」
被告矢野 「これからの,これからのね,いろんな文章を通じて消す
しかないわけでしょう,ね。これ,あのー,この」
杉山 「だから,まず,あれですね,あのー,えー,これについては,
この書いたこと自体は,今となっては誤りだったと。そのことは
先ほど認められましたね。このことは認めると。」
被告矢野 「はい。」
杉山 「このことは,やっぱり関西はじめ,青年部に伝えても,よろ
しいですね。これは。」
被告矢野 「いいです。」
杉山 「よろしいですね,はい。」
被告矢野 「そのつもりで来ていますから。」
杉山 「ま,ちょうど,えー,明日,あのー,関西の会合もあります
し,いろんな意味でやっぱりきちっと。」
被告矢野 「本当に,あのー,どう言うていいんかな。あのー,一番,
年齢的な違い,世代の違いもあるでしょう。でも,僕は本当に,
あのー,謙虚な気持ちで来ております。で,何も皆さん方にね,
異論を言うとか,あー,いう気持ちもありません。
でー,あなたおっしゃるように,えー,大阪の皆さん方が,不
愉快だと,けしからんと。申し訳ないと。そりゃ,言葉だけだと
言われりゃ,それまでですけどもね。そう言っておると言っても
らって結構です。
今,あのー,私はね,あのー,悪びれた気持ちでは来ておりま
せんしね。しかも,こうやってお会いする以上は,まあ,あー,
力はありませんけども,是非これから皆さん方に,教えてもらい
ながらね,私なりに,やれることはやりたい。これは,本当にそ
う思ってきてるんですよ。でなきゃ来ません。」
森井 「ま,言葉お受け取りしましたけれども,要するに「一学会員
として戦う」と,そう約束された。「一緒に自転車に乗って地元を
走ります」と。」
被告矢野 「そうです。」
森井 「そうおっしゃった。」
被告矢野 「そうです。」
森井 「そうですね。明確におっしゃいました。」
被告矢野 「そりゃあ事実上,もう大阪に家はありません。」
森井 「たくさんの方がおっしゃいました。じゃあ,もう大阪には戻
ってこられるつもりはないんですね。」
被告矢野 「今のところは,戻れませんね。」
森弁 「戻らない。」
被告矢野 「はい。」
森井 「戻れないじゃ」
弓谷 「戻れないじゃなくて,戻らないんですね。」
被告矢野 「戻らないですね。申し訳ないです。あのー,ただ,私は
私なりに,そのー,うー,一生懸命,どういう形であれ。」
弓谷 「矢野さんね,「私なりに」って言っている限りね,通じないん
ですよ,そのお詫びが。」
被告矢野 「いや,通じる通じないったって,通じる通じない,て言
ったって,私には,私ができることしかないわけです。」
原告 「そうですね。そうだと思います。」
原告 「それでー,あの,これだけ声が来ましてですね。えー,まあ,
関西の,男子部の率直な声,今日は,青年部の声を聞いていただ
くってことで,紹介しますけども。
えー,豊中の〔メンバーからの声で〕,「明電工事件による引退
の後,私たちの前に久しぶりに登場した矢野氏は,公明新開や聖
教新聞ではなく,テレビニュースに政治評論家の肩書きで登場し,
公明党と創価学会の関係を面白おかしく語り,マスコミ受けを狙
った評論を続けてきました。学会批判にとれるようなコメントを
用いて,言葉巧みに評論する姿は,もう完全に第三者としての評
論家でありました。個人的な感想は,「で,あんた本当に学会員な
の」でした。選挙の際,運動員として活動したことのある知人が,
「矢野は選挙期間中,他の候補や議員と連絡を取る際に,横柄で
礼儀もわきまえず,大声で電話をするなど非常識甚だしかった」
と言っていたことを思い出しました。矢野も形だけ学会員に謝罪
し,じきにみんな忘れてしまうだろうとタカをくくっているので
はないか,憤りをおさえられません。」,「学会から受けた恩を平気
で忘れるような人間を,公明党OBなどと思いたくもない。「民衆
と共に生き,民衆と共に戦い,民衆の中に死んでいく」との結党
精神のかけらも感じられない。ましてや,あれで政治評論家を名
乗っ,名乗っているのだから,笑わせます。以前,池田先生が言
われていた話を,ある男子部員に訴えました。もしも,政治家が
人間としての謙虚さや人格的強さを持っていないときは,こんな
環境の中で本来の理想を忘れたり,信念を捨てて,捨ててしまう
ものだ,と。矢野は,政治家になって立場を利用して,大物ぶっ
て大げさに大風呂敷を広げて,うぬぼれているだけ。あげくに,
都議選の最中だというのに,夫婦で海外旅行とは呆れてモノも言
えません。もう一度,私たち一人一人がもっと賢明に,権力を監
視し,していきたい。」これだけ来ているんですよ,声が。」
被告矢野「分かりました。」
原告 「これが,会員が求めている声なんですよ。矢野さんが,自分
のできることをやっていく,評論家としてやっていくというふう
にお考えかもしれませんけども,それを望んでないんです」
被告矢野 「やめましょう。」
原告 「関西の学会員は。」
丹治 「おやめになる。」
被告矢野 「やめます。」
弓谷 「評論家を」
森井 「一切?」
被告矢野 「まあ,一切になるかどうかはね,それはー,あー,少な
くとも,おー,おー,いろんな週刊雑誌等の取材は,断ります。
テレビについて,例えば,今回も,まあ,聖教新開にいろいろ,
ま,載っとって,まあ面白おかしく,また,今日も,成田で,1
0人ぐらいの連中が束で,私を追っかけておりました。私は,も
うノーコメントを貫きました。おそらく今帰れば,待ってると思
います。まあ,その,言いません。ですから,急にここで一切何
もかもやめたら,また妙な,ことになりますから。段々,もうそ
れこそ,急,急速ですけども,明日から一つも出るなよ,という
意,意味で言ってるわけでばありません。しかし,やめます。」
森井 「それは以前,西口・藤原と話をされた時にも,同じようなこ
とをおっしゃっているんです。」
被告矢野 「すいませんねー。」
森井 「急にやめたら,様々憶測もあるから,徐々にやめていくと。」
被告矢野 「ですから私が」
森井 「明確におっしゃってましたよ。」
被告矢野 「私が,自分の名前で,このー,どっかに載っけていただ
くと。それ〔秋谷に渡した手記〕を書いた瞬間から,私は,そう
いう決意をしているわけです。そら,謝り方が,あー,足らない,。
けしからん,と言われれば,はい,としか言い様がありませんが。
どうあれ,これは,評論家,決別宣言と同じことです。」
弓谷 「同じことというか,じゃあ,ど,あの,はっきりと,むしろ
伝えていいですね。」
被告矢野 「そうですねー,その」
弓谷 「それは,約束したら,約束したら。」
被告矢野 「しかしそういう,そういう言う方をされると,かえって
まずいんじゃないんでしょうか。私は言ってもらって結構です
よ。」
弓谷 「構いませんね」
被告矢野 「あなた方が,あのー,そう言った方がいいと言うんなら,
原告 「あのー,私たちはですね。」
被告矢野 「それはまずいんじゃないでしょうか。」
原告 「私たちは,あのー,週刊誌にも,良く言われたことありませ
んしね,いろんなことを潜り抜けてきてますから。」
被告矢野 「いや,わたし,私の方にね,逆に「何かあったんか」と,
来ると。私は何もコメントしませんよ,一切。」
弓谷 「コメントしないどころか,はっきり言っていただきたいんで
すよ。矢野さん自身の,やっぱり学会員としての信念で,生き抜
きたいと,最後。」
被告矢野 「ああ,そう言ってもらって結構です。」
弓谷 「そう決めて,そう決めて評論活動やめたんだと,そうはっき
り言ってもらいたい。」
被告矢野 「結構です。言って下さい。」
弓谷 「いや,言って下さいじゃなくて,矢野さんとこに取材が来た
ら,矢野さん自身がそうはっきりおっしゃっていただきたいんで
す。」
被告矢野 「言う,言う,皆さん方が言えば,私が言ったことは,も
う天下周知になりますから,僕のとこにくるでしょうがー,そら,
そんなこと否定しませんよ。そう言いましたよと言いますよ。そ
んな,皆さん方とここで話し合ったことをね,違うようなことを
言うようなことはしませんよ。
ね,ただ僕があえて言っているのは,「なぜなんだ」と,いう詮
索がある,ということを心配しているだけのことなんです。私は,
なにも悪びれて,未練がまししく言っているわけではないんです。
そんな,あのー,ケチな人間じゃありません。それは。」
杉山 「で,そのときは,あの,あれですか。その,「なぜなんだ」と
言われたら,どのように,お答え」
被告矢野 「俺の決意でやめたと。」
杉山 「うん。」
丹治 「それを,そのまま伝えただけだと。」
森井 「今,連載中のものもありますからね。」
被告矢野 「これも,まあ,まあ,自然な言い方は,俺も歳だからな,
と言っておけばいいわけですよ,それはね。ね,そう,世間的に
はね。」
弓谷 「いやいや,憶測をね,増,増幅させるような,そういう中途
半端なお答えは,やめてもらいたいんです。私たちが言ってる,
評論活動をやめるというのは,そういう次元の話じゃないんで
す。」
原告 「あのー,ちょっと失礼な物言いになっているかもしれません
が。」
被告矢野 「いやいや,いいんです。」
原告 「あのー,まだ,本当にご理解いただけてるかどうか分かりま
せんけれども,あの,平成5年,6年,7年。秋谷会長が国会へ
行った,参考人招致ですよね。」
被告矢野 「はい。」
原告 「僕は,あのー,当時,男子部長から青年部長,なりましたけ
ども。先生の喚問,最後ギリギリのところにいって,会長の参考
人招致がテロップで流れました,テレビに。その時に矢野さんが
いた位置は,山友,内藤の位置なんですよ。正直言うと。私たち
の心証はそうだったんです。先生の喚問の材料に使われたわけで
すから,明らかに敵だと,学会を売った,というふうに思ってた
時期があるわけです。それを長谷川副会長や,そのー,西口副会
長,藤原さんが,「そうじゃないんだ」と,言われるんで。それは
そうだろうなと,元委員長で先生にお世話になって,政治家にな
った,矢野さんなんだから,そうじゃないんだろうな。だけども,
あのー番大変な時に,あの手記を出した。敵に塩を送った,てい
うか,むしろ,敵の一番ど真ん中にいるような,材料を出した。
ということにづいての疑念てのがあるわけですよ,いまだに。」
被告矢野 「分かりました。」
原告 「ですから,こうやってお話しても,またどっかに書くんじゃ
ないかとか。」
被告矢野 「んなことしません。絶対に,」
原告 「絶対書かないですね。」
被告矢野 「書かないです。」
原告 「で,一方,本当に矢野さんが,学会員として一緒にやってい
きたいというお気持ちをお持ちであれば,息子さんも頑張ってお
られるし。まあ,森井君も。」
森井 「伸ちゃん〔矢野の長男清城の妻伸子〕,同級生です。」
被告矢野 「あっそう。彼女も」
森井 「彼女もねえ,明電工,ま,結婚してね,僕がほんと久しぶり
に一年ぶりに会うたときに,大学でね。まあ,ちょうど明電工の
事件の後でもあった。平成2年の選挙もあった。あのとき彼女,
遊説やってたと思うんですね。女子アナウンサーとして。」
被告矢野 「本当に,あの,息子も,まあ,息子の嫁もね,私の家内
も,まあ,私は,あー,私のね,こういう問題のために,可哀想
なことしてると。これは本当にそう思ってます。まあ今日も,し
ょぼーんとしているからさ,元気出せと,言うて。まあ,ただ,
彼女たちは,あの,身内のこと言うわけではありませんけどね,
本当に,何があっても,学会員として,頑張っておるし,これか
らも頑張ると思います,僕は,そうあってほしいと,願ってます。
まあーつ,僕は,あー,皆さん方にどう言われてもいいですけど
も,まあ僕は,ね。その連中だけは,一つ。」
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