歴博で開催中の特別展「忍たま乱太郎 忍者の世界―夏休みは歴博へ急げ!の段―」の内容紹介も5回目。
今回は、「「兵庫水軍」と「村上水軍」の段」の紹介です。
作中にしばしば登場する、兵庫第三協栄丸率いる「兵庫水軍」は、忍術学園と友好的な海賊の集団です。
作中で、忍者と水軍の武器や戦法が似ていることにしばしば言及されていますが、この「兵庫水軍」は、戦国時代、芸予諸島を拠点として瀬戸内海で活動した村上水軍をモデルにしています。
海城を拠点とした村上氏らは、平時には海上交通の安全保障を担い、戦時には焙烙火矢などの火器類を駆使して海上での戦闘に従事しましたが、こうした海賊衆の性格は作中でもしっかりと描き込まれています。
この展示コーナーでは、村上水軍ゆかりの資料と、兵庫水軍が描かれているコマを並べて展示し、両者を比較しています。
両者を見比べると、乱太郎が関船に乗っている風景が目に浮かぶようです。
上は天正9年(1581)に能島村上氏の当主・村上武吉が厳島の神官に与えた通行安全証(複製)、下は兵庫水軍の通行安全証のコマです。
両者を比較すると、いずれも中央に家名の一字を大きく墨書している(村上氏は「上」、兵庫水軍は「兵」)のがみてとれますが、よくみると、左下に発給者(差出人)として当主の名を入れるという様式(村上氏は「武吉」、兵庫水軍は「兵庫第三協栄丸」)も再現しています。
さらに資料に注目すると、旗の上辺を固定していたと思われる横木が旗とともに伝存していますが、改めてこのコマを子細にみると、この横木や結び目も忠実に描かれているのです!
このように、両者を比較することで、村上氏の史料や水軍書に基づいて兵庫水軍が描写されていることがよく分かります。このようなことを知ると、「乱太郎」の見方が変わるのではないでしょうか。
この展示をごらんになられた「乱太郎」ファンのみなさまが、兵庫水軍を媒介として、村上水軍をはじめとする中世伊予の歴史にも興味を持っていただければ…と思っています。
ぜひご自身の目で、両者を比較してみてください。
8月10日(日)は原作者の尼子騒兵衛さんをお迎えしておはなし会が開催されます。
サイン会も開催(各回先着100名)。詳しくはこちら。ぜひぜひご参加ください!