マツダスタジアム(広島市)広島ガス/観客目線で設備充実
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“野球王国”広島にこの春誕生したMAZDA Zoom―Zoomスタジアム広島(マツダスタジアム)。内・外野を覆う美しい天然芝、オープン球場ならではの開放感あふれるスタンドが印象的だ。多様な観戦スタイルが楽しめる観客席にも特徴がある。天然ガスは厨房、給湯、空調に使用され、ガスは広島ガス(深山英樹社長)が供給している。スタジアムを所有する広島市、施設を運営・管理する広島東洋カープを取材した。
(大喜多 輝雄)
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スタジアムは広島市が貨物ヤード跡地に建設した。本格着工は2007年11月。市民・県民、地元財界の厚い支援を受け、今年3月に完成した。広島駅からは徒歩約10分の距離。新幹線の車窓からもその姿を見ることができる。
MAZDA Zoom―Zoomスタジアム広島は、マツダが命名権を取得し名付けた名称で、条例上の名称は広島市民球場。球場の運営・管理はここを本拠地球場とするプロ野球球団広島東洋カープが行う。来場者数は7月時点で100万人を突破しており、年間では150万人を突破することがほぼ確実となっている。
グラウンドの大きさはライト100m、センター122m、レフト101m。グラウンドの面積は約1万2700㎡。特徴は外野だけでなく内野も天然芝で覆ったこと。プロ野球の本拠地球場では他にはない。「観客に最高のプレーを見てもらえるよう、ベストな野球環境を追求した」(広島東洋カープ・勝場通泰取締役球場運営本部本部長)。
スタンド側にも大きな特徴がある。観客定員は3万3000人(内コンコース上に車椅子席90席)と旧広島市民球場とさほど変わらないが、中身は劇的に変化した。スタンドの傾斜を緩くし、階段の上り下りを楽にした。座席の前後間隔も広く歩きやすい。
座席のスペースは大リーグ球場並みに大きくし、ゆったり観戦できるようにした。また、目線がグラウンドと同じ高さの砂かぶり席や、グループで飲食しながら観戦できるテラスシート、バーベキューをしながら観戦できるコーナーなどを設け、いろいろな観戦スタイルが楽しめるようにした。
1階観客席をぐるりと取り囲む一周約600mのコンコースも魅力だ。内野から外野、1塁側から3塁側へと自由に行き来でき、アングルを変えてグラウンドを眺めることができる。幅が広く段差もないため歩きやすい。
ここにはファストフードやスイーツなど人気の飲食店が多数軒を並べ、観戦の合間に売店を巡る楽しみも提供している。こうしたコンコースを導入したのも日本の球場では初めて。
「来場者に喜んでもらえるスタジアムとはどうあるべきか。球場を新設する構想が浮上して以来、海外にも足を運び多くの情報を集めてきた」(勝場氏)。その成果が随所に現れている。
天然ガスの用途は、厨房用(約30店ある飲食店向け)、給湯用(主に選手が使用するシャワールームなど)、空調用(事務室やレストラン、ロビー、トレーニング室など)。年間使用量は合計で約7万m3を見込む。GHPは18台(ヤンマー製、10~30馬力、合計323馬力)を設置した。
空調については、「電気、ガスそれぞれの長所を勘案し、事務室等の比較的運転時間の長い部屋はGHP,試合開催時だけ使用する運転時間の短い部屋はEHP」(広島市都市活性化局)と適材適所で両方式を採用している。
スタジアムではグラウンド照明設備など電気の使用量が多い。そのためピークカット用に非常用兼用型常用ディーゼル発電機(300kW1台、燃料A重油)を設置。省エネに寄与する高効率メタルハライドランプや高効率トランスなどを採用した。
環境負荷低減の取り組みとして、雨水の有効活用を行っている。グラウンドと球場屋根部分の雨水を集め、ろ過、消毒した上でトイレの洗浄水、グラウンド散水に使用している。
今後はシーズンオフ時に太陽光発電設備の設置を予定している。発電容量100kWの設備を球場本体の屋根に設置し、年間約11万kWhの発電を行う予定だ。