東電の吉田元所長が原発集中立地を批判=政府公開の調書で
[東京 11日 ロイター] - 政府は11日、東京電力 福島第1原発事故時に発電所長だった吉田昌郎氏(2013年死去)への政府事故調査委員会による聴取記録を公表した。吉田元所長は、1カ所に多数の原子炉が並ぶ集中立地について「昔から集中立地は嫌い」と証言。「会社のリスク分散からすると余りよろしくないと昔から思っている」となどと述べ、批判的に考えていたことが浮き彫りになった。
政府が公開した吉田所長への聴取記録は、2011年3月の事故後の7月から11月に行われた聴き取りが対象。8月に行われた聴取で、福島第1の原子炉の配列設計に関して質問された際に、吉田氏は集中立地に批判的な考えを示した。
福島第1は、1号機と2号機、3号機と4号機、5号機と6号機と、中央制御室1カ所で2基を運転する設計となっている。
これについて吉田氏は「日本全体で何が標準かわからないが、ワンユニット(1基)で1(つの)中操(中央制御室の意味)が多い。他電力は一気にたくさんつくらないで、1基作って1つの中操を作るのが普通」と述べている。
集中立地のメリットとして、吉田氏は開発コストを挙げた。その上で「デメリットはもっとある。福島第2(4基)のようにこじんまりやっている方が運用上も楽。(2007年の)中越(沖)地震の時の柏崎(刈羽)の時もそうだが、大混乱になる。なおかつ全部一発(のトラブル)で電源(発電所)が止まってしまう」などと語った。
東電の原発は、福島第2のほか、全6基の福島第1(全基廃炉が決定)、全7基の柏崎刈羽と、関西電力 の1カ所4基(高浜、大飯)、九州電力 の同4基(玄海)に比べても、集中立地ぶりが目立つ。
原子力規制委員会も1カ所の集中立地を安全性の観点で問題視している。過酷事故の現場で指揮をとった吉田氏による、集中立地を批判する証言が公表されたことで、国内各方面からこの問題に対する議論が高まりそうだ。 (浜田健太郎 編集:田巻一彦)
© Thomson Reuters 2014 All rights reserved.