無理もない。高給職場の代表である金融界でついに人員整理が始まったのだから。きっと最後は兵隊と生徒を大動員して「満員の開会式」を演出するのだろう。
2018年の「平昌(ピョンチャン)冬季五輪」は、本来なら「成功に向けて…」の掛け声に乗って、政権の浮揚ファクターになる絶好の日程だ。ところが、政治家も経済界も逃げる一方だ。朴氏自身、次期開催国の元首としてソチ五輪を視察しなかったのだから、やはり無理もない。
サムスンと現代(ヒュンダイ)自動車の2大財閥の不振、対中輸出の落ち込みと、中国の類似産業部門での追い上げが、暗さの根底にある。
そうした中で、朴氏は今月1日、「われわれが日本の失われた20年のような愚を犯さないためには、労・使・政が知恵を合わせなければならない」と演説した。
日本は、その20年間にも、金融資産大国であり続けたし、リーマン・ショックで打ちひしがれた韓国を支援した。そんな現代史も、この大統領はご存じないらしい。
それにしても、日本のような「愚を犯さないため」とは、よく言ってくれたものだ。「千年恨」以来の歴史に残る発言になるだろう。
■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に「韓国人の経済学」(ダイヤモンド社)、「悪韓論」(新潮新書)、「呆韓論」(産経新聞出版)、「ディス・イズ・コリア」(同)などがある。