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卓上四季

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三外主義

東電福島第1原発事故の「吉田調書」に関する誤報で、朝日新聞社の社長が頭を下げるのを見て、複雑な思いに駆られた▼所員が命令に従わず撤退した、と報道した。そう思わせることがあったからとしているが、肝心の裏付けを取らなかった。「取材の基本中の基本」を踏まえないのなら、記事の取り消しだけでなく、謝罪するのは当然だ。ことは、吉田昌郎(まさお)元所長や現在も困難な復旧作業に当たる所員の名誉にかかわる問題である▼それでも割り切れなさが残る。なぜなのか。誤報問題だけに焦点が当たり、事故の原因解明や対策が後景に追いやられかねないからだ▼公開された政府事故調査委員会の19人分の調書をみると、さまざまな教訓が読み取れる。元所長は原子炉建屋の水素爆発について、「事故想定に入っていなかったのはものすごく大きな盲点だ」と語っている▼他の「原子力ムラ」の専門家も「津波について検討が遅れたのは申し訳ない」、「水冷却系の頑強性などの仕組みについて基本的な考えがよくなかった」とも。「想定外」だけでなく、「検討外」、「基本外」の“三外主義”がはびこっていたのがうかがえる▼調書は、刑事責任追及が目的ではないため、比較的正直な答えが盛り込まれているようだ。今後は専門家だけでなく、素人の常識でそれぞれを比べる必要がある。誤った道筋を見直すには多彩な目が欠かせない。2014・9・13

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