世界初iPS移植手術 理研などチーム、70代女性に
産経新聞 9月13日(土)7時55分配信
■目の難病、安全性の確認目的
人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って目の難病治療を目指す理化学研究所などのチームは12日、iPS細胞から作った網膜細胞を患者に移植する手術を先端医療センター病院(神戸市)で実施した。iPS細胞から作った細胞を人体に入れる臨床応用は世界初。再生医療での実用化に向けて大きな一歩となった。
理研などによると、移植手術を受けたのは「滲出(しんしゅつ)型加齢黄斑(おうはん)変性」という目の難病を患う兵庫県の70代の女性。自分の皮膚細胞に遺伝子を導入して作ったiPS細胞を使って、網膜の働きを助ける網膜色素上皮細胞を作り、シート状に加工して病変部に移植した。
手術は多量の出血など重篤で有害なことは起きず、2時間で終了。患者の容体は安定しているという。執刀した同病院の栗本康夫眼科統括部長は会見で「今日やるべき手術は無事に終了した。(移植の成否は)1年後が一つの節目になるだろう」と述べた。
移植は理研の高橋政代プロジェクトリーダーが進める臨床研究として実施。安全性の確認が主な目的で、1年間の経過観察と3年間の追跡調査で腫瘍ができないかなどを調べる。
チームは昨年2月、厚生労働省に臨床研究の実施を申請し、同7月に承認。同省審査委員会は今月8日、細胞の安全性に問題はないとして移植を了承した。
iPS細胞は体のさまざまな細胞に分化できる万能細胞の一種。京都大の山中伸弥教授が平成19年にヒトで作製に成功し、24年にノーベル医学・生理学賞を受賞した。
別の万能細胞である胚性幹細胞(ES細胞)が受精卵を壊して作るため倫理問題を抱えるのに対し、患者自身の皮膚細胞から作製でき、病気やけがで損傷した組織を復元する再生医療への応用が期待されていた。
加齢黄斑変性は、網膜の中心にある黄斑という部分が老化により機能低下を起こし、視力が低下する病気。iPS細胞を使った移植治療でも視力はやや改善する程度だが、チームは根治療法につながる可能性があるとみて研究を続ける。
最終更新:9月13日(土)12時14分
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