本書は、東京ガス「ガス・パッ・チョ」、新潮文庫「Yonda?」、資生堂/TSUBAKI「にほんの女性は、美しい」といったコピーを書いた谷山雅計さんが、よいアイディアとコピーを繰り返し生み出すための考え方と方法について書いた1冊です。一度読んでみたかった本が、会社の本棚に置かれていたので、読んでみました。
発想法ではなく、発想体質
まず、本書は冒頭で「発想法ではなく、発想体質」と書いています。これは、本当にいいアイディアやいいコピーは、ちょっとした発想法を知れば、すぐに誰にでもつくれるのではなく、普段から発想が出来る体質、すなわち「発想体質」にしておくことが重要だというのです。スポーツに例えるなら、試合でよい結果が出せるように、よい動きが出来るようにトレーニングしておくのと同じことを、発想を得るためにもすべきだと言うのです。
発想体質を身につけるために、著者が普段の生活の中で考えるべき点として、「なんかいいよね」「なんかステキだよね」「なんか格好いいよね」を禁止することをすすめています。
「なんか」の部分を、「なぜいいのか」「これこれだからじゃないか」という思考を働かせ、「なんか」の部分を具体化し、自分で仮説をたてたうえで、再現出来るように工夫してみる。それを続け、日常化させることが、スポーツのトレーニングであり、思考を続けた上で、どう仮説を立てて再現していくかという過程で使用するのが、発想法です。つまり、発想体質になっていなければ、本書に書かれている発想法も活かせないのです。
ブログを書くことで身につく発想体質
そう考えると、ブログを継続して書くということは、発想体質を作るには良いのかもしれません。
僕自身、自分がブログを始めたきっかけというのは、本を読んだら「何が面白いとおもったのか」「どこが面白いと思ったのか」を、サッカーを観たら「どのプレーが印象に残ったのか」「どんなプレーが自分が考える良いプレーなのか」「自分の考えるよいサッカーとは何か」を書き留めておけば、自分の考えが整理されていくのではないかと考えたからです。
「なんかいいよね」と漠然と自分の感覚としてとっておくことが、悪いことではありません。でも、人に楽しんでもらったり、喜んでもらう仕事をしている人は、自分自身の「なんかいいよね」を何らかの形で具体化して、人に喜んでもらう必要があります。そう考えると、本書に書かれている発想体質は、コピーライターだから必要な資質ではなく、誰にとっても必要な資質であり、誰でも持つことが出来る資質なのではないのでしょうか。実際、発想体質を持っている人と仕事をすると、仕事が楽しいと僕は思います。
本書には、発想体質を身につけるための考え方が、読みやすく、分かりやすく書かれています。本書を読んだ上で、まずは自分が考えていることを、何らかの形で整理し、記録として残していく。それが、発想体質を身につけ、クリエイティブな仕事をする近道なんじゃないか、と僕は感じました。
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