国際社会から信用失うのはネオナチと親和性高い安倍政権や読売・産経等のヘイトスピーチの方

井上伸 | 国家公務員一般労働組合執行委員、国公労連書記、雑誌編集者

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「NHK NEWS WEB」が「首相 朝日新聞記事で日本の名誉傷ついた」として次のように報道しています。

朝日新聞が日本の名誉を傷つけた?

安倍総理大臣はニッポン放送のラジオ番組に出演し、いわゆる従軍慰安婦の問題を巡って朝日新聞が一部の記事を取り消したことに関連して、誤報によって多くの人が苦しみ、国際社会で日本の名誉が傷つけられたという認識を示しました。この中で安倍総理大臣は、朝日新聞が先に、いわゆる従軍慰安婦の問題を巡る自社のこれまでの報道を検証する特集記事を掲載し、一部を取り消したことなどについて、「個別の報道機関の報道内容の是非に関してコメントすべきではないと思うが、例えば慰安婦問題の誤報によって多くの人が苦しみ、国際社会で日本の名誉が傷つけられたことは事実と言っていいと思う」と述べました。

出典:NHK NEWS WEB 9月11日配信「首相 朝日新聞記事で日本の名誉傷ついた」

安倍政権のネオナチ関与疑惑が国際社会の信用失う

一方、「東京新聞」(9/12)の「こちら特報部」では、「安倍政権ネオナチ騒動/欧州なら即刻辞任/高市総務相らが「ネオナチ」とツーショット写真」「中央も地方も右傾化する政界/国際社会の信用失う」と報道しています。

高市早苗総務相や自民党の稲田朋美政調会長が、ナチス・ドイツを信奉する極右団体男性とツーショット写真を撮影していた。海外の主要メディアは「安倍政権のネオナチ関与疑惑」などと盛んに報じている。議員側は「人物像は知らなかった」と釈明するものの、もともと右翼的な言動で知られる政治家だ。日本の政界やメディアの反応は鈍いが、ナチスによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の惨禍を味わった欧州の基準では、即刻辞任モノの一大スキャンダルである。

出典:東京新聞9/12付「こちら特報部」「安倍政権ネオナチ騒動/欧州なら即刻辞任/高市総務相らが「ネオナチ」とツーショット写真」「中央も地方も右傾化する政界/国際社会の信用失う」

ナチス賛美のヒトラー本を推薦した高市早苗氏

「ナチスの手口に学び」謀略を実践する自民党

この「東京新聞」の記事の中では、高市早苗氏が、ナチスを賛美した選挙指南書『ヒトラー選挙戦略 現代選挙必勝のバイブル』(自民党東京都支部連合会の広報部長の著作)の広告に推薦文を寄せていたことや、高市氏や稲田氏とツーショットを撮ったネオナチの山田一成氏(国家社会主義日本労働者党代表)は、2000年の衆院選のときに、自民党が活用を指示した共産党を誹謗中傷する謀略本をつくった出版社の社長であったことも明らかにしています。まさに「ナチスの手口に学べ」という麻生太郎副総理のアドバイスをじつは随分前から自民党は実践していたわけです。

国際社会が相手にすることはない安倍政権の「従軍慰安婦=日本軍性奴隷はなかった」という妄想

そもそもドイツをはじめとする欧州各国では、ネオナチ・山田一成氏による「アウシュヴィッツでのユダヤ人虐殺はなかった」「ナチスはホロコーストなどしていない」などというような一連の発言やナチス賛美は、犯罪にあたります。ですので、ナチス賛美本を出版した自民党東京都支部連合会の広報部長も、それを推薦した高市早苗氏も、ネオナチ団体代表とツーショット写真におさまりそれがネオナチ団体のネット広報で使われていた高市氏や稲田朋美氏などは欧州なら要職は「即刻辞任」だし政治生命が断たれるような問題です。なので、欧州各国のメディアはこの問題を取り上げて批判しています。国際社会で「日本の名誉」を傷つけているのは、「安倍政権のネオナチ関与疑惑」の方なのです。

一方、「国際社会で日本の名誉が傷つけられた」と安倍首相が言っている朝日新聞の従軍慰安婦問題の方は、世界各国のメディアはそもそも相手にさえしていません。相手にする必要がないからです。世界各国のメディアで取り上げられてもいない問題ですから、「国際社会で日本の名誉が傷つけられ」ることが起こるわけもないのです。どうして、今回の朝日新聞の従軍慰安婦問題が国際的に取り上げられないのでしょうか?(もしも安倍首相が言うように国際社会で日本の名誉を傷つけた問題だとするなら、日本の評価がガラッと変わる国際社会にとっても驚天動地のニュースバリューがあるはずなのに、一向にそうした動きがない事実だけでも答えは出ているのですが)その答えは、伊藤和子さんが指摘しています。

「強制連行があったか否かに問題を矮小化し、その証拠がなければ人権侵害はない・加害責任はないというような議論は国際社会では到底通用しない」

紛争下の性暴力のように深刻な人権侵害は最も恥ずべき重大人権侵害と認識され、その克服は国際社会が最も重要な課題のひとつとして認識しているものだ。そうした行為の不処罰が是認されるということは国際社会全体の懸念事項なのである。日本は国際社会の人権の到達点にあまりにも無関心・無知であり、問題の深刻な性格を全く理解していないと言わざるを得ない。強制連行があったか否かに問題を矮小化し、その証拠がなければ人権侵害はない・加害責任はないというような議論は国際社会では到底通用しない。日本の言い訳、事実の否定は、国際的にはあまりにも恥ずべきことであり、日本の名誉をはなはだしく貶め続けているものでしかない。

出典:伊藤和子氏「国連からも異例の強い非難。日本は慰安婦問題等アジアへの加害責任を否定し国際社会から孤立するのか。」

伊藤和子さんが指摘しているように、「強制連行があったか否かに問題を矮小化し、その証拠がなければ人権侵害はない・加害責任はないというような議論は国際社会では到底通用しない」のです。

「強制連行」に限ったとしても、オランダ人女性を強制的に慰安婦にした事実認定として、「スマラン事件」の公文書が証拠としてある

なおかつ「強制連行」に限ったとしても、オランダ人女性を強制的に慰安婦にした事実認定として、「スマラン事件」の公文書が証拠としてあることは、「性奴隷による人権侵害を今も継続する安倍政権 -慰安婦問題・歴史修正主義は歴史でなく現在の女性差別問題」というエントリーですでに紹介ずみですが、問題の焦点は、女性たちが「強制連行」されていなくも、もっと言えば本人の意思で「慰安所」に来たとしても、「慰安所」に一度入ってしまえば、自由のない生活を強いられ、強制的に兵士の性の相手をさせられたという性奴隷状態に置かれたことにあるのです。だから、「河野談話」でも「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」としているのです。

ネオナチの「アウシュヴィッツはなかった」と「慰安婦はなかった」は同程度のレベルのヘイトスピーチ

ネオナチが「アウシュヴィッツでのユダヤ人虐殺はなかった」「ナチスはホロコーストなどしていない」と言うのと、「従軍慰安婦=日本軍性奴隷がなかった」と言うのは、国際社会では同程度のレベルにあるヘイトスピーチです。歴史的な戦争犯罪の被害を受けた人々の人間の尊厳に対する繰り返しの攻撃となり、彼女らをレイプされても仕方のない人間、性奴隷状態に置かれてもやむを得ない人間として70年が経過しようとする現在においても繰り返し人間の尊厳を蹂躙しているようなものなのです。

朝日新聞は、「(戦後70年へ)和解へ、虐殺の記憶共有」という次の記事を掲載しています。

(戦後70年へ)和解へ、虐殺の記憶共有

第2次世界大戦のノルマンディー上陸作戦から70年。第1次大戦開始からは100年。今年、現代史の節目を迎える欧州では、ことあるごとに各国首脳が集い、歴史をふりかえる。かつての敵対関係を超えて、戦争の記憶の共有が進む。歴史観をめぐって対立が深まる一方の東アジアとどこが違うのか。

廃虚の村を保存

小鳥がさえずり、タンポポが風に揺れる。鐘の音も聞こえてきた。フランス中部の小村オラドゥールは、のどかな田園が広がる。しかし、時間は1944年6月10日で止まっていた。

村全体が廃虚だ。崩れ落ちた建物をのぞくと、赤茶色にさびたミシンがある。道には自動車の残骸。焼き打ちされた教会では、鉄枠だけの乳母車が、70年前の惨劇を伝えている。

この日、ナチス親衛隊が村を占拠。村民を納屋や教会に閉じ込め、火を放ち、一斉射撃した。女性と子供を含む642人が虐殺された。その4日前に連合軍がノルマンディーに上陸している。村は抵抗運動とのつながりを疑われたが、武器は見つかっていない。戦後仏政府は、虐殺を歴史にとどめるため、村をそのまま保存することを決めた。

昨年の9月4日、ドイツのガウク大統領とフランスのオランド大統領が、連れ立って村を訪れた。69年の歳月を経て、村が独大統領の訪問を受け入れたのである。2人は、生存者の腕をとって、悲劇の現場だった教会の祭壇に向かった。

「真実のみが礎」

ガウク大統領「ドイツ人が犯した重い罪に向き合うとき、深い驚愕(きょうがく)の念を免れることはありません」

オランド大統領「真実のみが和解の礎となる。戦後両国は、過去を乗り越え、未来を分かち合うと決断しました」

【「(戦後70年へ)和解へ、虐殺の記憶共有」朝日新聞2014年8月12日付より一部転載】

「過去に目を閉ざす者は、未来にたいしても盲目になる」

有名なドイツのヴァイツゼッカー大統領の「過去に目を閉ざす者は、未来にたいしても盲目になる」という言葉。そして、解放60周年のときには、当時のケーラー大統領が「われわれには、ナチス・ドイツが与えたすべての苦しみと、その原因について、記憶を風化させない責任がある。その責任に終わりはない」と語っています。

かたや、日本の安倍首相は、侵略戦争でアジア2千万人、日本兵230万人(うち6割の140万人は餓死)の犠牲を強いたA級戦犯らを「今日の日本の平和と繁栄のため、自らの魂を賭して祖国の礎となられた昭和殉難者の御霊に謹んで哀悼の誠をささげる」と今年4月に追悼しているのです。

国のために死んでもらうために靖国神社がある

その結果が、アジア2千万人、日本兵230万人(うち6割の140万人は餓死)の犠牲

そして、安倍首相は自著で次のように書いています。

靖国神社の問題は、常に国家の問題を考えさせられます。私たちの自由など、さまざまな権利を担保するものは最終的には国家です。国家が存続するためには、時として身の危険を冒してでも、命を投げうってでも守ろうとする人がいない限り、国家は成り立ちません。その人の歩みを顕彰することを国家が放棄したら、誰が国のために汗や血を流すかということですね。

出典:安倍晋三著『この国を守る決意』扶桑社、150ページ

国のために死んでもらうために靖国神社があって、その結果が日本兵230万人(うち6割の140万人は餓死)の犠牲を強いたわけですが、それをさらに繰り返す必要があると安倍首相は言っているわけです。こうした安倍首相のネオナチ的な認識と、ドイツにおける「過去に目を閉ざす者は、未来にたいしても盲目になる」「われわれには、ナチス・ドイツが与えたすべての苦しみと、その原因について、記憶を風化させない責任がある。その責任に終わりはない」という認識との間にはおそろしくギャップあります。

「われわれには、旧日本軍が与えたすべての苦しみと、その原因について、記憶を風化させない責任がある。その責任に終わりはない」

しかし、「真実のみが礎」です。ナチスドイツのホロコーストと並ぶ日本の侵略戦争でアジア2千万人、日本兵230万人(うち6割の140万人は餓死)の犠牲を強い「従軍慰安婦=日本軍性奴隷」によって、朝鮮人、台湾人、中国人、華僑(華人)、フィリピン人、インドネシア人、ベトナム人、マレー人、タイ人、ビルマ人、インド人、ユーラシアン(欧亜混血)、太平洋諸島の人々、オランダ人の女性の人権を蹂躙した歴史を修正し偽造することは日々人権を守るためにたたかっている日本を含む世界の人々が許しません。安倍政権が「従軍慰安婦=日本軍性奴隷は存在しなかった」と何度繰り返そうが、すでに国際的にはまったく相手にされていませんし、これからも相手にされることはありません。日本国内においても同様の状態をつくりだす必要があります。人権を守るために日本でたたかう「われわれには、旧日本軍が与えたすべての苦しみと、その原因について、記憶を風化させない責任がある。その責任に終わりはない」のです。

▼あわせてお読みください。

性奴隷による人権侵害を今も継続する安倍政権 -慰安婦問題・歴史修正主義は歴史でなく現在の女性差別問題

第2次大戦中「慰安婦」制度があったのは日本とナチスドイツだけ-侵略軍と「慰安婦」制度との密接な関係

142年前(明治5年)の日本政府の人権感覚「慰安婦は性奴隷」よりも後退する現代の自民党政務調査会

産経新聞社長と中曽根元首相が慰安所づくり自慢「女の耐久度、どこの女がいい悪い、3千人のための慰安所」

井上伸

国家公務員一般労働組合執行委員、国公労連書記、雑誌編集者

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)本部書記、国家公務員一般労働組合(国公一般)執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、月刊誌『国公労調査時報』編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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