Think outside the box

Unus pro omnibus, omnes pro uno

日独財政の違いを生んだ為替レート変動

またもや、財政規律についてドイツを称賛・日本を批判する底の浅い記事です。


ドイツがとうとう国債の新規発行がゼロに。日本は何を学ぶべきか

財政赤字(政府部門資金不足)の解消は、他部門資金不足の拡大、あるいは資金余剰の縮小を意味します(全部門資金過不足合計はゼロ)。そこで、ドイツと日本の部門資金過不足(純貸出/純借入)を比較します。

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日本の財政赤字の大きさが

  1. 企業の資金余剰が大きい
  2. 海外の資金不足(≒経常収支黒字)が小さい:対GDP比7%と0%

の反映であることが分かります。日本の経常収支黒字の対GDP比がドイツ並みであれば、それだけで一般政府の資金不足は解消することになります(単純計算ですが)。

経常収支には輸出競争力が反映されていますが、冒頭の記事は、直接投資の差が両国の輸出競争力の差を生んだと指摘しています。

しかし、それよりもはるかに重要なのが、プラザ合意前後以降の為替レートです。 

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ドイツの実質実効為替レートは中心水準±10%にほぼ収まっていますが、日本は±30%もあります。日本人は慣れているのであまり意識しませんが、円は他の先進国通貨に比べて異常に変動幅が大きい通貨です*1。為替レートの水準(割高)だけでなく、変動幅の大きさも生産の海外移転を促進する要因です。


超円高に挑む:海外生産75%でドルのリスク相殺=ソニー | テクノロジーニュース | Reuters

――今期はドル/円の為替変動の影響をゼロに抑えたが、どんな取り組みが成果を上げたか。 

「プラザ合意以来、打てる手は打ってきた。対策がいろいろある中でコストを現地通貨に合わせていく努力をしているが、ドルが均衡した一番大きな構造的な要因は、生産の海外シフトと部品調達の現地化を進めてきた結果だ。今期の海外生産比率は、ソニーの自社工場とEMSへの生産委託も含めて7割5分くらいになった。これでドルの感応度はゼロになった」

ヨーヨーのように激しく上下動する円為替レートが、日本の輸出企業の為替リスク回避=海外生産シフトを促進し、国内生産能力の空洞化を招いたわけです。ブレンダン・ブラウンの『ヨーヨー円』は、円の「大変動」の悪影響を指摘した数少ない好著です。

ヨーヨー円―日本経済の破壊者

ヨーヨー円―日本経済の破壊者

アベノミクスの円安で、円の割高感はほぼ解消しましたが*2、変動を狭いゾーンに抑え込まない限り、生産の国内回帰はなかなか進まない可能性が高いでしょう。長年の(負の)蓄積は、一朝一夕には解消不能できません。

慰安婦問題も同じですが、「外患」への対応を避けてきたために積み上がったツケを支払う時が来ています。

インフレターゲット量的緩和」でそのツケを一掃できるでしょうか。


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*1:これが経常収支の対GDP比の変動幅が小さい一因です。

*2:むしろ「物価のリーズナブルな国」になっていることは、外国人観光客の増加が示しています。逆に日本人が先進国に行くと、物価の高さを実感するはずです。