【知事選めぐる動き】県民目線忘れてないか(9月12日)
知事選は告示まで1カ月を切り、状況が目まぐるしく動いている。内堀雅雄氏が11日、副知事を辞職して立候補を表明した。現職の佐藤雄平知事から事実上の後継指名を受けての決断だ。一方、元日銀福島支店長の鉢村健氏(福島市)は同日、立候補断念を発表した。知事選には新人2人が名乗りを挙げており、3人の戦いとなる見通しだ。復興を目指す本県にとって大きな意義を持つ選挙で、政策論争の深まりを期待したい。気になるのは政党の論理が戦いの構図を分かりづらくしている点だ。県民目線に立った取り組みが求められる。
任期満了に伴う知事選は10月9日告示、同26日投票で行われる。これまでに元岩手県宮古市長の熊坂義裕氏(福島市)と自営業の五十嵐義隆氏(いわき市)の2人が立候補を表明している。医師の吉田孝司氏(郡山市)は立候補を取りやめた。
本県は東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の影響で、今も非常時が続いている。復興を強力に推進しなければならない。今回の知事選は福島の現状と県民の思い、古里再生への願いを全国に発信する絶好の機会だ。政策論争を通じ、県民自身が未来に向かって前進する決意を新たにする場ともなる。
活発な論戦が望まれる中、自民党、民主党などが「相乗り」となる流れが強まっている。自民党県連は鉢村氏の擁立を一度、機関決定したが、党本部に認めてもらえず撤回した。県連は党本部と連携し、既に民主党などが支援を決めている内堀氏を推す方向だ。内堀氏は、自民党県連が今春の定期大会以降、対決姿勢を示してきた佐藤知事の後継と目されている。自民の対応は一貫性がなく、県民から見ると理解しにくい。
自民党本部は本県が原発事故という大きな課題を抱えていることから、党派を超えて結束する形が必要だとしている。「結束」とは選挙後に言う言葉ではないのか。選挙戦で互いの立場を明確にし、政策を主張し合うことこそが、福島のためになるはずだ。福島再生への道筋、原子力政策の在り方、今後のエネルギー政策など、県民が聞きたいことは数多くある。論戦を経て勝敗が決した後は一致結束して課題に対処する―。それが、あるべき形だろう。
知事選での与党系候補の敗北回避など、党内事情が先にあるとすれば本末転倒と言わざるを得ない。
今の福島に必要なのは中央の論理ではない。原発事故を経験した県民はそれをよく知っている。(佐藤 研一)