協会幹部が激白「W杯イヤーに強化試合ができなかったワケ」
2014.09.05
- 杉山茂樹●インタビュー interview by Sugiyama Shigeki 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki
――韓国は1月末にアメリカ遠征を実施。コスタリカ、メキシコ、アメリカと、3試合消化しています。
原 韓国は、あのときベストメンバーで戦っていないですよね。それに、あの遠征で韓国はメキシコ(0-4)、アメリカ(0-2)に惨敗して、チームの調子がおかしくなってしまった。その点は理解されていますか?
――はい。というのも、先ほど原さんがおっしゃったように、長谷部、内田、吉田はW杯に出場できるかどうか微妙な状況でした。おまけに、本田と香川も試合に出ていなくて、本番で本当に戦えるのか、不安視されていました。そういう状況を考えれば、国内組だけでも招集して、底上げ強化を図る必要があったのではないか、と思うからです。
原 さっきも言いましたけど、国内組もW杯開催の影響で週に2試合をこなすような過密日程にありました。その中で、どうやって、国内組を集める機会を作るのですか?
――1、2月は代表として、まったく稼動していません。そこでスケジュールを作るのは、難しかったのでしょうか。
原 Jリーグはだいたい1月までオフで、2月から各チームがキャンプに入ります。選手たちの体ができていないのに、何をやるんですか? それよりも、クラブでしっかりと体を作っていくことのほうが大事なんです。確かに前回大会の前は、アジアカップ予選があったり、東アジア選手権があったりして、1、2月にも代表としての活動がありました。でも、そのせいで疲労を蓄積してしまう選手も出てしまいました。
――そうした前例があったので、今回は1、2月の招集は避けたのですか。
原 まずはクラブでしっかり体作りをしてもらうことが一番大切です。公式戦がないにもかかわらず、選手を招集するのは、本当に危険なんですよ。体ができていないと、大きなケガにつながることもありますから。第一、まともにコンディションができていないときに集めて、練習試合をやれるか? ということ。それならば、クラブできちんと1年間戦える体を作ったほうがいいですよね。それについては、Jリーグとも、ザッケローニ監督とも話し合って決めました。
――そうすると、新しいメンバーの発掘はもう考えていなかったのでしょうか。
原 そんなことはありません。ザッケローニ監督はずっとJリーグの試合を見て、選手たちの状態を把握していました。新シーズンが始まり、伸びてきている選手がいたら、「自分の手元に呼んで最後の見極めをしたい」とザッケローニ監督の要望があったので、ザッケローニ監督、Jリーグとも話をして、4月に3日間のトレーニングキャンプを実施しました。Jリーグの強化担当者会議や実行委員会で「(選手たちには)負荷をかけたトレーニングはやらないから」ということを説明して、スケジュールをとらせてもらいました。
――堂々巡りになってしまいますが、それならば、もう少し早くから、それこそ1、2月に合宿をやってもよかったように思えてしまいます。
原 クラブだって、試合がないのに選手を出してくれないですよ。W杯予選やアジアカップ、東アジア選手権のようなタイトルが懸かった試合があれば、別ですよ。それだったら、クラブだって、選手だって、納得してくれると思います。また、過去にオリンピック代表では、アジア予選が2、3月にあったので、そこから逆算して、早々にキャンプを張ったことはありました。でも、何もないのに、代表は招集できないんです。