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<iPS細胞>世界初の移植手術 目の難病患者に

毎日新聞 9月12日(金)17時15分配信

 理化学研究所などが進めるiPS細胞(人工多能性幹細胞)を目の難病治療に使う臨床研究で、iPS細胞から作った網膜色素上皮細胞を70代の女性患者(兵庫県)に移植する手術が12日、共同研究機関の先端医療センター病院(神戸市中央区)で実施された。iPS細胞から作った細胞を患者に移植したのは世界で初めて。安全性の確認が手術の主な目的だが、視力の改善など有効性も調べる。iPS細胞の臨床研究はパーキンソン病や重症心不全なども控えており、今回の手術はiPS細胞を活用した再生医療実現への第一歩と位置づけられる。

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 臨床研究の対象は、悪化すると失明の恐れもある「滲出型(しんしゅつがた)加齢黄斑変性」。昨年8月、理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)の高橋政代・プロジェクトリーダー(53)を中心に開始。目の網膜中心部(黄斑部)の傷ついた色素上皮細胞を摘出し、代わりにiPS細胞から作製したシート状の色素上皮細胞を移植する計画を進めていた。理研が、患者の皮膚細胞から作ったiPS細胞を使って細胞シートを作製し、先端医療センター病院が移植手術を担当した。

 研究チームによると、投薬を中心とする現在の治療法では傷ついた網膜の修復はできず、今回の手術を受けた患者もこれまで治療を続けてきたが、症状が悪化していたという。

 手術は、異常な血管ができて傷ついた色素上皮を専用の器具で取り除き、縦1.3ミリ、横3ミリの色素上皮細胞のシートで置き換えた。患者は3〜7日後に退院し、定期的に検査を受ける。計6人の手術を計画しているが、2人目以降の時期は未定だ。

 研究チームによると、色素上皮がiPS細胞治療の最初の臨床研究対象に選ばれたのは▽移植する細胞の数が少なくて済む▽がん化しにくい▽移植後の詳細な観察が可能−−などが挙げられる。しかし、第1号だけに、iPS細胞や細胞シートの安全性の確認は慎重に行われ、患者の皮膚採取から細胞シート作製まで約10カ月かけた。

 ノーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥・京都大iPS細胞研究所長(52)がiPS細胞を開発した当初は、がん遺伝子やウイルスを利用したためがん化が実用化への課題だった。今回は、山中所長らの最新の研究成果を生かし、がん遺伝子やウイルスを使わない方法を採用。マウスへの移植でがん化しないことも確かめた。【根本毅、斎藤広子】

最終更新:9月12日(金)20時22分

毎日新聞

 

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