Updated: Tokyo  2014/09/12 19:35  |  New York  2014/09/12 06:35  |  London  2014/09/12 11:35
 

日本の米債購入期待、中国・米銀は「隠れたQE4」-BOAメリル (2)

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  9月12日(ブルームバーグ):バンク・オブ・アメリカ(BOA)メリルリンチは、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融緩和の出口に向かう中、日本の投資家が今後、中国と米国銀行に代わる米国債の買い手になる可能性があるとみている。

BOAメリルリンチのグローバル金利・通貨責任者、デービッド・ウー氏は8日、都内のメディア・ラウンドテーブルで、「FRBがQE3(量的緩和第3弾)をアンワインドしようとする中、米銀と中国が『隠れたQE4』を始めた」とし、「年初には誰もが今年は米金融当局がQE3を終わらせた年として記憶されると思っていたが、実質的にはこれまでのところいかなるテーパリングも行われていない」と述べた。

中国と米銀の大規模な米債購入で、「米金利とボラティリティの低下を促したことが私にとっては2014年の唯一最大の話題だ」と語った。

米10年債利回り は年初にかけて3%台に乗せていたが、FRBが米債購入を縮小し始めたにもかかわらず、低下基調となり、8月15日には1年2カ月ぶり低水準の2.30%まで下げた。その後は早期利上げ観測などを背景に今月に入って2.5%台半ばまで反転している。

ウー氏は、今年の米国長期金利が市場予想に反して低下してきたことの最大の理由について、巨額の外貨準備を抱える中国と新たな流動性ルール導入に備える米国銀行の買いによるものとの見解を示した。中国の外貨準備は6月末で過去最高の3.99兆ドル(約430兆円)。

ベルギー残高急増

中国 は世界最大の米国債保有国だが、昨年11月に過去最高の1兆3160億ドルに達して以降、1兆2700億ドル前後で横ばい。一方、昨年末からベルギーの保有残高 が急増。ウー氏は、中国が購入した米国債をベルギーを本拠地とする国際決済機関ユーロクリア・バンクの口座に移しているからだと指摘。ベルギー分を加えた1-3月の中国の米国債保有は1300億ドル増と、年率換算で「今年の米財政赤字を100%以上ファンディングした」と述べた。

ウー氏によると、昨年米国債の売り手だった米銀は流動性カバレッジ比率(LCR)を引き上げるため、今年に入り年率換算で1400億ドルの米国債を購入したと言う。今後はLCR規制の最終案が承認されたことで、米銀の買いは「かなりスローダウンする」可能性があると指摘。米国債の供給が増える中、中国の米国債買いも一巡した可能性が高く、「米金利が上昇に向かう条件がそろい始めてきた」と語った。

日本の投資家については、「米金利が上がったら米債を買おうと思っていたが、米金利が下落する一方なので結局何も買っていない」と言い、非常にアンダーウェイトの状態にあるとの見方を示した。

日本の投資家の外債保有残高が過去18カ月間増えていないということや今後GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が外債を買い増すことを考えれば、「ドル・円がどちらの方向に向かうかは明白だ」と指摘。「私は日本の投資家がQE5を開始することを当てにしている」と言い、「米長期金利が2.7%まで上昇した時、日本人の買いが増え始めるのではないかとにらんでいる」と語った。

米国への回帰

ウー氏は米金利の低下圧力となってきた欧州金利について、「欧州の日本化」が中期ゾーンまでのところに完全に織り込まれたことで、「リスクバランスは今年初めてよりシンメトリーになった」とし、「これも米金利低下の主要なドライバーを取り除く」との見方を示した。

中国や米銀の買いで米金利が低下する一方、米国以外の金利も大幅に低下したため、金利差は今年一貫して米債に有利に動いてきた。にもかかわらず、海外投資家が米債を避け、欧州債を大量に購入してきたのは、米国のQE3終了や早期利上げが懸念される一方、欧州中央銀行(ECB)の追加緩和が欧州債を支えると期待していたからだと言う。

足元では欧州債のアウトパフォーマスが失速しつつある兆しが見られると指摘。「ユーロが好調な限り、トレンドに乗っていればいいが、モメンタムが衰えてきた今、人々はバリューを探し始めている」とし、「にわかに米国の相対的な魅力が増してきた」と語った。

ドル高はこれからが本番

ウー氏は、8月の米金利低下とドル上昇という「極めてまれな組み合わせ」は、海外投資家が欧州債から米債にシフトし始めたことを示唆しているとみており、こうした「米国への回帰」が始まったばかりであるという点で「ドル高というのはこれからが本番だ」と述べた。

BOAメリルは年末のドル・円相場を1ドル=108円と予想している。ユーロについては1ユーロ=1.30ドルを予想しているが、米国との金利格差からすると、今後半年間で1.25ドルまで下がる可能性を示唆していると言う。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 小宮弘子 hkomiya1@bloomberg.net;東京 Mariko Ishikawa mishikawa9@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Garfield Reynolds greynolds1@bloomberg.net山中英典, 青木 勝

更新日時: 2014/09/12 13:20 JST

 
 
 
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