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世界初iPS細胞使った手術実施
9月12日 17時57分

世界初iPS細胞使った手術実施
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神戸市にある理化学研究所などの研究チームは、iPS細胞を使って目の網膜の組織を再生し、病気で失われた患者の視力を回復させようという世界初の手術を行ったと発表しました。
京都大学の山中伸弥教授が開発したiPS細胞が実際の患者の治療に使われた初めてのケースで、再生医療の実現に向けた大きな一歩になると期待されます。

世界初の手術を行ったのは、神戸市にある「理化学研究所」の高橋政代プロジェクトリーダーと「先端医療センター病院」などの研究チームです。
手術を受けたのは、「加齢黄斑変性」という重い目の病気のため視力の低下を抑えられなくなった兵庫県の70代の女性の患者で、研究チームではまず、女性の腕から皮膚の細胞を僅かに取り、iPS細胞を作り出しました。
そして、このiPS細胞を目の網膜の組織に変化させ、12日、病気のため傷ついた網膜の一部を取り出したあと、移植する手術を行ったということです。
手術は午後1時40分ごろから神戸市にある先端医療センター病院で行われ、午後4時20分ごろ終了しました。
研究チームによりますと、今回の手術はこの治療が安全に行えるかどうかを確認することが第一の目的の臨床研究で、患者は視力の維持に必要な細胞の多くが死んでしまっているため、期待できるのは視力の低下を食い止めたり僅かに回復させたりすることだということです。
ただ今後、安全性と効果が確認されれば、視力を大幅に回復させる病気の根本的な治療法になる可能性があるということで、研究チームは今後、4年間にわたって患者を定期的に診察し、移植した組織の状態を確認することにしています。
京都大学の山中伸弥教授が開発したiPS細胞が実際の患者の治療に使われたのはこれが初めてで、再生医療の実現に向けた大きな一歩になると期待されます。

専門家「患者・研究者に大きな光」

iPS細胞が初めて、実際の患者の治療に使われたことについて、同じくiPS細胞を使った研究を行っている慶応大学医学部の岡野栄之教授は「患者にとっても、再生医療の研究者にとっても、きょうの手術の実施は大きな光だ。京都大学の山中教授がiPS細胞を発見してから、国を挙げて研究に取り組んだ結果、海外の研究者からも驚かれるほど極めて早く研究が進み、きょうの日を迎えることができた」と話しています。
さらに「今後、パーキンソン病や脊髄損傷、心不全といった患者の治療にiPS細胞を使う研究が進められようとしているので、今回の手術は、iPS細胞からできた細胞を移植したときに何が起きて何に気をつけるべきかなどの貴重なデータを得る重要な事例になる。引き続きノウハウを積み上げていけば、日本が再生医療の分野で世界をリードできるようになるだろう」としています。
そのうえで「現状ではiPS細胞を使って治療を行うには多額の費用がかかるため、一般的な医療につなげていくにはまだまだ課題が多い」と指摘しています。

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