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ドイツがとうとう国債の新規発行がゼロに。日本は何を学ぶべきか

 ドイツのショイブレ財務相は2014年9月9日、ドイツ連邦政府の2015年度予算案について、新規国債の発行がゼロになる見通しであると述べた。旧西ドイツ時代も含め新規国債の発行の停止は46年ぶり。今後ドイツは無借金で財政をまかなえることになる。

 ドイツ連邦政府の2013年度の歳出は約3078億ユーロ(約42兆4200億円)だった。これに対して歳入は2855億ユーロとなっており、財政赤字は223億ユーロである。14年度は財政赤字が67億ユーロに減少する見込みで、歳入と歳出はほぼ均衡する。
 これによって新規の国債発行はゼロにすることが可能となる見込み。ちなみにドイツの歳入のうち税収が占める割合は9割に達している。

 ドイツは欧州各国に対し、財政健全化路線を主張しており、自国についても財政均衡を義務づける法律を制定し、財政再建に取り組んできた。

 ドイツの政府債務のGDP比は、政府が保有する資産と相殺したネットの数値で約50%、米国が約80%、日本は約140%となっている。資産を相殺しないグロスではドイツが約70%、米国が約100%、日本は約250%となる。

 ドイツが財政再建に成功しているのは、徹底した緊縮財政によるものというイメージも大きいが、好調な経済を背景に税収が堅調であることが大きく貢献している。一時は財政赤字が政治問題となっていた米国も、このところ急激に収支が改善しているが、これも持続的な経済成長による税収増の影響が大きい。

 2000年から現在までの間、ドイツのGDPは2倍に、米国のGDPは1.7倍に拡大した。世界経済全体も同じような動きである。これに対して日本のGDPはほぼ横ばいとなっている。相対的には日本はかつての半分近くの所得になっていると考えることができる。これでは財政再建ができないのはある意味で当然のことである。

 ドイツは日本と同様、製造業による輸出で経済を支えてきた国である。このところの高成長はユーロ経済の恩恵という側面も大きいが、徹底したリストラで製造業の高付加価値シフトを進めてきたことも、競争力維持に貢献している。
 ドイツは他国に対する直接投資も多いが、実は自国に対しても同じ水準の投資を諸外国から受け入れている。海外からの直接投資がほとんどない日本とは、この点で大きく異なっている。

 海外からの投資受け入れと、製造業の国際競争力は一見すると無関係に見えるが決してそうではない。海外から資本を受け入れ、競争環境にさらされた製造業は結果的に輸出競争力を高めるのである。日本とドイツを単純に比較することはできないが、ドイツから学ぶべき点は多いと考えられる。

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