農家への宿泊(民泊)を取り入れた体験型学習旅行を誘致する伊那市の観光戦略に基づき、同市観光協会は10日から、初めての国内団体として、東京都新宿区の小学生の民泊を受け入れている。従来は海外から誘客に力を入れ、多くの外国人の民泊を実現してきたが、今回は2015年度からの国内小中高校の児童生徒の本格受け入れを前にした先行実施。関係者は、新たな観光誘客につながると期待を寄せる。
農家民泊を利用したのは、伊那市の友好都市である新宿区の四谷第六小学校6年生29人。これまでも同区内小学校の移動教室を受け入れてきたが、宿泊施設を利用していたため、民泊は今回が初めてとなる。
四谷第六小児童は2泊3日の移動教室のうち、初日に同市長谷の農家などに宿泊。各農家ごとに用意された稲刈りやみそ作り、五平餅作りなどの各種プログラム、全体での間伐作業などを体験する。
兼業農家の中山幾雄さん(64)宅では女子児童5人を受け入れた。自家用に栽培している野菜の収穫、出荷用の稲の刈り取り、釣り堀での釣り体験などのプログラムを用意した。「都会と田舎の時間の流れの違いを感じ、ゆったりした時間を過ごすのが農家民泊のよさ」と話す中山さん。参加した児童は「自然がいっぱいですごい。どんな体験ができるか楽しみ」と話していた。
都市部の学校を中心に、田舎暮らしをテーマにした体験型学習旅行の需要が高まる中、農家民泊は「伊那市の観光資源を生かす最適な方法」として計画した。現在、受け入れ農家は簡易宿所の許可を得た23軒。昨年度から受け入れが本格化し、昨年度は世界7カ国・地域から16団体568人、今年度は8月末までに中国、台湾からの16団体548人が利用している。
市観光協会では「本物の体験や心のこもったおもてなしができるコンパクトでも充実した民泊を目指す」としている。将来的には、関西圏の中学校修学旅行、関東圏の移動教室・林間学校、海外からのインバウンド(訪日旅行)などをターゲットに推進する考えだ。