田中伶(写真左)
大阪生まれ。「自分のやりたいこと」を見つけるキャリアスクールを関西大学在学中に展開し、その後、人材育成コミュニティを運営する会社を設立。企業や国立大学などでキャリア講義を担当し、現在は、株式会社スクーの広報として活動中。
石根友理恵(写真中央)
広島生まれ。株式会社ワンオブゼム 事業統括本部 プロデューサー/広報・PR。神戸大学在学中にイベント団体を立ち上げ、大規模のイベントを運営。サイバーエージェント入社後、ソーシャルメディアマーケティング、アプリ開発プロデューサーを経験。その後、2012年に現在の株式会社ワンオブゼムに入社。マーケティング部門を立ち上げる。
塩谷舞(写真右)
大阪生まれ。京都市立芸術大学在学中に、関西の美大生をつなげるプロジェクト「SHAKEART!」を創立。イベント企画や展覧会のキュレーション、アートフリーマガジンの発行を行う。株式会社CINRAに入社後、Webディレクター・エディターとして3年間の経験を積む。4月より広報職となる。俗称は「しおたん」。
会社のブランディングやイメージを、多くの企業に周知させる役割を持つ広報という仕事。
花形と言われることの多い部署ですが、それぞれの企業がどのような意識で広報活動に取り組んでいるか、実態を知っている人は少ないのではないでしょうか?
そこで今回、ワンオブゼム、CINRA、schooの3社の広報担当者に、自分たちの仕事の中身や抱えているビジョンについて語ってもらいました! お互い気心の知れた友人同士だという3人。そんな関係性だからこそ、他では言えない本音をたくさん語ってくれました。
東京でキラキラ働く女子(自称)のコミュニティで“浮いてた”3人
HRナビ編集部(以下HRナビ):プライベートでも仲がいい、3人の出会いは?
田中:私が塩谷さんと岩根さんの2人を、それぞれ別のところで知って、「これは絶対に気が合う」と思い、紹介したのがきっかけです。
塩谷:私が大阪から東京に出てきて、なかなか友達が作れなかったときに、「東京で働く女子会」に誘っていただいたんです。そこで、あの…。なんて言うんだろうな。大阪には出没しない、女としての戦闘能力の高そうな、ラグジュアリー感…? に、ぶったまげたというか(一同爆笑)。
石根:炎上しちゃうよ?
塩谷:いやぁ…皆さんすごくおきれいなのですが…育って来た環境が違うというか……。毎朝の化粧を2分で済ませるような自分では、その仲間に入れていただくのはおこがましく…。そんなラグジュアリーな女性たちの中で、この2人の泥臭さが際立っていたので、意気投合した感じですね。
田中:やっぱり意識高い系の集まりに参加すると、みんなカッコいい部分しか見せていない気がして。でも、このメンバーなら「挫折した!」って話とかも、できるって思えたんですよね。
HRナビ:仕事についてどんなことを話したりするんですか?
石根:出会ったときは、みんな広報をやっていなくて、それぞれがプレイヤーだったんです。それが、ちょうど同じタイミングで広報になったので、悩んでいる事柄が似ていたんですよね。
田中:そうなんです。広報の勉強会とかに行って、学んできたことを共有するFacebookのグループを作って。そこでほぼ毎日情報交換をしたりしています。教育、ゲーム、メディア…と、業界が異なるからこそ、協力できるということも大きいですね。
HRナビ:元々それぞれがプレイヤーとしての経験あったから、現場主義・パイオニア精神みたいなところが強いんですかね?
石根:そうかもしれないですね。元々が現場にいて、泥臭いこともやっていたので。…まぁ男勝りな性格だし、いまだに、全員かけもちでプレイヤーとしてかけずりまわっていますからね。
田中:「キラキラ女子」にはなりたくないって話をしていたら、ある人に「開拓女子」「DASH村女子」でいいんじゃない? と言われました。畑ないから作るわ! みたいな。まさにそんな気持ちなのかと思ったりもします。
広報の仕事は自社の公式のファンになること
HRナビ:広報担当になった経緯を教えてください。
塩谷:私の勤めるCINRAは「メディア事業部」と「制作事業部」という2つの部署で成り立っています。事業の性質として仕方ないのですが、メディアの認知度が上がるほどに、制作事業部の印象が弱まってしまい、「え、制作もやってるの?」と言われることが多かったんです。
中ですごく頑張ってる仲間がいるのに、その言葉が悔しくって。「CINRAは制作会社です!」ということをちゃんと伝えたくて、「やらせてください!」と代表に直談判しました。
HRナビ:なるほど。自社のやっていることをブランディングすることが必要だっていう問題意識があったんですね。
石根:私は、会社として広報が必要なフェーズになったから声を上げたという感じです。
ゲーム業界の市場はレッドオーシャンなので、対外的なアピールをしないと埋もれてしまう。会社がスケールして、増えていくさまざまなサービスを戦略的にプロモーションしていく段階になって、「誰がやる?」ってなって「私がやります」と声を上げました。
田中:私はツイッターやブログをずっとやっていて、発信するのが単純に大好きで目立ちたがりで(笑)。キャラに合うっていうだけの理由で代表に「どうせやるなら広報でしょ?」みたいな感じで入社時に言われたのがきっかけですね。
HRナビ:話を聞いていると、それぞれ経営者に近いところにいて、そんな視点で物事を考えていらっしゃるんですね。広報の仕事に必要な資質をどんな風に捉えていますか?
田中:どのくらい経営者のビジョンと自社のサービスにほれ込むことができるかが大事ですね。逆に、自社のサービスで気に入っていないものを「良いよ」って言っても、すぐバレると思いますね。
塩谷:そうそう。手前味噌なのですが、自社の魅力って、人だったり、サービスだったり、本当にたくさんあるなぁと思っていたんです。そこで、「この価値を世の中にもっと認識させなければ!」みたいな使命感を勝手に背負っちゃっている(笑)。学生の頃からCINRAのファンだったけど、今は、よりコアな部分まで入り込める、公式のファンなのかなって思っています。
「広報女子」って肩書きだと、なんだかライトな印象になるのが好きじゃないんですけど。ちょっと、上澄みっぽくないですか?
田中:干されるよ?(笑)。
塩谷:干さないで!(涙)。えっと、なんとなく華やかなイメージがあると思うし、私も広報になるまではそんな固定概念があったんですよ。でも、初めて広報職になって勉強をしていくうちに、これは本当に奥が深いなと思ったんです。会社全体のこと、業界全体のことを把握してなきゃいけないし、アウトプットのための小さな気遣いみたいなところも必要だし……その両軸を攻めなければ! と思って目下勉強中です。
他社とつながってお互いを紹介しあう! 博愛広報戦略
石根:私が思う広報の資質は、コミュニケーション好きであることですかね。会社のことをどのくらい多くの人に知ってもらうかが鍵なので、個人のつながりでも仕事のつながりでもコミュニケーションを大事にしています。
塩谷:会社というより個人の動きになってしまうのですが、個人としてもSNS上の拡散力を持つことで、お互いのプロジェクトを紹介しあう、という物々交換みたいなことができたりします。内容にもよりますが…。
例えば私は、同業他社の制作会社LIGさんでも記事を書かせてもらっています。
スタッフページが個性的な、広告・Web系企業のコーポレートサイトまとめ
本来なら、競合他社と言われるような会社さんのコーポレートサイトで記事を書くのは、御法度に思えるかもしれません。そこを、LIGさんも懐が広いので許可してくださって、逆に私もどんどん同業他社さんの情報をシェアしています。
制作会社ってそれぞれ強みが異なるので、ケンカしないでそれぞれの特色を打ち出していったほうが、みんなハッピーになれると思っているんです。
HRナビ:同業他社をレコメンドしあうような信頼関係を築けるコミュニケーションスキルが大事だということですね。
塩谷:そうですね。CINRAに依頼が舞い込んだときも、他社さんのほうがもっと得意なジャンルだと思ったら、そちらをご紹介することもあります。そういうオープンな動きをしたほうが、自分たちにも適した仕事が入ってきやすいかなと。
オンとオフの境目はほとんどゼロ。IT広報ならではのSNS処世術
HRナビ:広報になって気をつけるようになったことはありますか?
石根:ちょっと後ろ向きな発言になってしまうのですけど、自分が前に出て話すことが増えた分、SNSでの発言に気をつけるようになりました。検索すると出てきてしまうので。会社にネガティブな発言をしたり、自身のネガティブ発言も絶対にNGだと思うので。まずは過去のツイッターとか全部消して(笑)。
塩谷:マジで!?
田中:そこから?
石根:そうそうそう。すごく気をつけるようになりましたね。まぁ「もうお酒は飲まない…」とか反省を込めた投稿は定期的にしていて(笑)。すべてを完璧にするというわけではないですが。
HRナビ:広報としての自分なのか、個人としての自分なのか境界線とかって結構難しくなってきませんか?
塩谷:難しいですね。
田中:でもそれ、あんまり気にしたことないな…。最初から慣れてたというか。
塩谷:学生時代には、美大生サークルを立ち上げて、それのPRを個人としてずっとやっていたのはあるんですけど。もちろん、会社は自分で立ち上げた組織ではないですし、私が体験していない創業時の歴史や、個々の思いがたくさん詰まっているので、代弁する立場としてはとても気を遣いますね。真夜中につぶやいたことが、思わぬ誤解を生んで事故ったり……(一同爆笑)。
塩谷:そういう問題って、きっと多くの会社でも課題になっているのかな? と。
よく同業他社さんから、「しおたんくらいツイッター慣れした広報の子が欲しいよ」みたいなことを言われるんですけど、ぶっちゃけ、ツイッター廃人を抱えて泳がせる、というのは、超リスクなんですね。
誤爆するかもしれないし、辞職したらその人のキャラクター性がそのまま抜けちゃうわけで、替えが利かないじゃないですか。同じようなキャラクター募集しても来ないから。
「キャラクターで売るのではなくて、個人名がなくても問題ないような仕事をしよう」ということを最初、代表と話して。元々持っていた自分のアカウントは使うんですけど、個人名の出ないところでも、ストーリーを作って「法人」としての人格を作っていく、というのを裏方的に進めていこうとしています。
エンジニアにもスポットライトを! 3人のこれからの展望は?
HRナビ:これから自分たちは広報というポジションでどんなことを実現していきたいですか?
石根:私が今掲げているミッションは「エンジニアという仕事をしている人の価値を世の中に広める」ということですね。
アプリ開発やITの世界を現場やサービスで支えているのはエンジニアさんなんですよね。弊社も社員の6割がエンジニアで、すごい面白い人・こんなに能力が高いのかと驚愕する人がたくさんいるんですけど、彼らは基本的にものづくりの方々なので、自ら表に出ることが少なくて。
そんな彼らの人柄や作っている様子とか、魅力的な部分をキャッチアップして、発信するっていうことを、まさに今からやろうと試みています。
田中:私も似たことを思っていますね。会社的に「デザイナーさんもエンジニアさんも、一丸となってサービスの価値を発信できるような会社にしたい」という思いがあるし、せっかくメディアとしてもうまく活用できる自社サービスがあるんだから、それを生かすことをやっていきたいなと。
例えば、受講者から、「スクーのエンジニアやデザイナーさんからUXについて学んでみたい」という声が舞い込んだのをきっかけに、彼らが先生となって教える授業をやってもらったこともあります。
新規事業企画のためのUX Study〜ユーザー体験を考え、サービスに落としこむ方法
塩谷:私の会社は、2人の会社と違って、少しニッチなカルチャーを発信し続けてきたのですが、それをいかにマス層にアプローチするか、というのも課題です。
広報というより、ブランディング事業部みたいなことができたら面白いかなと。例えば、インターンとして、会社務め経験のないミュージシャンやアーティストの方に来てもらって、一緒に働いてみるということを実現してみたいなぁ、とか。エンジニアさんしかり、会社に転がっている可視化されていないネタを、面白コンテンツに料理して人に伝えたいなと思いますね。
HRナビ:ありがとうございました!
(HRナビ編集部)