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» 2014年09月12日 11時04分 UPDATE

失われた“アイ”を求めて──Watchからの“i”の消失が示すもの

「iWatch」と言い古されてきたAppleのスマートウォッチは「Apple Watch」として登場した。失われた“i”はどこへ?(ロイター)

[サンフランシスコ/ニューヨーク 11日 ロイター]
REUTERS

 米Appleが9日に開催したローンチイベントは、ガジェットや誇張などで満たされたマーケティングドタバタ劇だったが、その中で1つ、消えたものがある──「Watch」の前の、“i”だ。

 Appleのこの接頭辞は、その電話からiPadに至るまで、製品のブランドネームと結びつけられてきた。だが「Appleの物語の新たな章」が告げられた9日、ティム・クックCEOはリンゴを単にリンゴと呼ぶことを選んだ。

 同社はその機械仕掛けのため、マーケティングや広告に何億ドルも費やす。Appleが注意深い熟考なしにことをなすことはない。あるブランド専門家はこうみる。Appleは名称を短縮することで、この4年で初となる全くの新製品を際立たせ、またAppleが新たな領域に入ったというメッセージを送ることを選択した、と。

 また別の向きは、iの不在はWatchの位置付けを表しているとみる。それはiPhoneのアクセサリーかつコンパニオンであり、それ自体のメリットのために存在するのではなく、iPhoneに従って動作するものだ。

 Appleにコメントを求めたが、返事はなかった。

 「Appleはさらに向こうを見ている」とニューヨークに拠点を置くブランドコンサルティング企業Brand Keysのロバート・パシコフ社長は言う。「Watchは“i”を冠することになる数多くのモノと組み合わされることになるだろう。ウェアラブル技術のほとんどはスタンドアローンではありえない」。

 「それは単一の製品というより、アプリケーションの付属物になっていくだろう」とパシコフ社長は述べる。

 だが、WatchはAppleとクックCEOにとってさらに大きな賭けになるかもしれない。

 伝説的な前任者であるスティーブ・ジョブズ氏の影で勤めてきたクック氏は9日、彼のもとで開発されたWatchを、ほんの少し感情を込めた声で紹介し続けた。披露前、彼は会場となったフリントセンターの重要性を強調していた──そこは若きジョブズ氏が数十年前、Macintoshをお披露目した場所だ。

 2007年にスマートフォン、2010年にタブレットに進出したAppleは、現時点では需要が明らかではないにもかかわらず、不慣れな領域に再び打って出ようとしている。IT調査会社IDCの専門家は、2015年には4200万台のスマートウォッチが販売されるだろうと予測する。だが、iPhoneなら同じ台数を3カ月で販売してしまうこともある。

 業績へのインパクトは見えないままだが、Watchの成功は、イノベーションへの名声が薄れかけている同社の輝きを取り戻すことになるかもしれないとアナリストはみる。ここ数年、AppleはiPhoneのプロダクトサイクルを固定してきた。新モデルを下半期に発売し、新デザインの新モデルを2年に1度投入するというサイクルだ。

 Watchは時計の重要性を向上させるだろう。マーケティング責任者のフィル・シラー氏は以前法廷で、数億ドルを広告に費やすAppleの戦略について「広告において製品を最も素晴らしく、最も明確にする」と説明した。

 「新しい時代が来る」と、ブランドストラテジストで元Apple幹部のエレン・リーンス氏は語る。「だじゃれで申し訳ないが、“時計を見て”(watch us)という、とても重要な動きだ」。

 「それは『iWatch』と言い古されてきたが、それでは後ろ向きだった」とリーンス氏は付け加えた。「Watchは新たなプロダクトファミリーへの道を開くかもしれない」。Macintoshのように。

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