空き家率40%時代に備えよ! 田原総一朗が迫る、日本の空き家問題

空き家を用途移転し、活用する方法

 

田原 なるほど。「空き家」の話にもどります。ふたつお聞きしたい。まずは都心のマンションの空き家対策、これはどうすればいい?

 

長嶋 ひとつは、民間のNPOのような組織を、行政がバックアップするなどして、空き家を用途転換して活用してもらう、ということですね。

 

田原 どういうこと?

 

長嶋 すでに始まっていますが、たとえば、世田谷区。世田谷もいま、空き家がけっこうあるんですね。その空き家を民間のNPOのようなところが借り上げて、高齢者の方が集う場にしたり、あるいは子どもを預かる場所をつくったりとか、そういう取り組みですね。

 

田原 空き家保育園とか、ね。駒崎弘樹さんなんかが、やってますね。空き家をみつけてそこで保育園、あれは「おうち保育」っていうのかな。

 

長嶋 そういう取り組みに自治体が補助金を出して支援するとという動きが最近、少しずつ出てきました。もうひとつは、空き家というのは、結果じゃないですか。空き家が増えていく、その原因に対処しないといけないですね。

 

 

DSC00734 長嶋さん正面

 

 

増え続ける空き家、最大の元凶とは?

 

田原 何が原因ですか。

 

長嶋 そもそも空き家がどんどん増えていくのは、新築をつくりすぎているからですよね。戦後から高度成長へ、新築をたくさんつくって買ってもらおうという政策だったわけですが、それがいまだに続いているんですよ。

 

田原 マンションなんて、あっちこっち、どんどん建ってますね。

 

長嶋 いまや、一戸もつくらなくたって、人口が減少しているわけですから、空き家は増えます。なのに、まだ新築をどんどんつくっている。この過剰な新築建設がとまらないのは、日本が無計画だからですね。

 

田原 どういうことですか?

 

長嶋 OECDに加盟しているような国は、世帯数がこのくらいで住宅数がこれくらいある。だから、十年間でこのくらいの新築をつくりましょうという住宅供給計画、建設計画をつくっているんですよね。日本はそれがありません。

 

田原 ない?

 

長嶋 はい。高度成長のときに、とにかくいっぱいつくれと、その延長線上でやっています。「去年100万戸つくった、今年も100万戸より多くつくれればいいねえ」という感じで。

 

田原 それについては、国土交通省はどういう方針なんですか?

 

長嶋 もちろん国土交通省でも、こういった状況はわかっているんですが、ただ彼らも組織人としては難しいところです。新築の業界団体に先輩がいますし。

 

田原 天下っているわけだ。

 

長嶋 彼らともうまくやりつつ、自分たちのやりたい仕事をやろうとすると、今すぐ新築は減らしましょうとは、なかなか、いえない。いまは中古住宅とリフォーム市場を伸ばしましょう、そういう段階ですね。

 

田原 どういうことですか?

 

長嶋 新築住宅の着工件数を一気に減らせれば、それがいちばんいい。でも、すぐには難しいので、新築のほうはそのままにしておき、まずは未整備な中古市場を整備することからやりましょう、ということです。すでにある住宅、中古住宅の価値を見直し、空き家もうまく活用していこう。そういうことを一生懸命やっています。これは今、官僚が本当にがんばっていまして、2013年、14年、15年くらいで、かなり大きい改革が行われあることになっています。いま、やっています。

 

田原 さきほどの、中央区や千代田区のワンルームマンションの問題は?

 

長嶋 そこはまだ、手つかずですね。国土交通省が、いまいちばん問題視しているのは、団塊世代の方が60代、70代となって、さらに十年、二〇年すると、いなくなってしまう。主に都心から30キロ、40キロの、いわゆる郊外のベッドタウンが空き家だらけになってしまう、ということです。

 

田原 いまもうすでになってますよね

 

長嶋 はい、ますます加速度的に空き家が増えるのをどうしようかと。これについては、空き家の活用方策として、高齢者の方の介護とか看護のステーションとして活用できないかという案は、いまひとつ出ています。

 

田原 具体的にどういうことですか?

 

 

存続をかけ、街の選別が始まる時代

 

長嶋 サポートが必要な高齢者の方がたのための場として、そこで効率よく介護とか看護ができるよう、運営組織などがそこを借り上げる、国がそれを支援するという案ですね。それ以外には、これといったものはまだ見当たりません。

 

いずれにせよ、中長期的には、すべての郊外住宅地が従来の形で生き残ることは無理なので、人の住む環境を整える街とそうではない街を、もう、はっきり分けましょうと。それができるようにする法案が通ったたんですよ。「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案」というもので、自治体が居住調整地域を都市計画に定めることができるようにする。要するに、居住誘導を可能にしたわけですね。

 

田原 どういうことですか?

 

長嶋 この地域は税金も投入するし、場合によっては容積率もあげる。人が住むように快適な状況をつくるけど、この道路一本はさんでむこうは何もしません、と。

 

田原 その区分けは、誰がどうやってやるんですか?

 

長嶋 決めるのは各基礎自治体です。いままでのような、だだっ広い街づくりはもうできない。人が住むところと住まいないところ、その線引きをして、この道路のどこまでなんだというのをそれぞれの自治体で決めてくださいということです。道路のこちら側は、容積率もあげますし、上下水道のインフラもちゃんと整備します、税制も優遇しますよ、と。

 

田原 だけど、そういうことを自治体が決めるときにね、「何もしない」側に住んでいる人がOKしますか?

 

長嶋 そこは民度が問われるところだと思いますね。実はドイツが、もう30年くらいまえからこの「線引き」をやっているんです。

 

田原 やっているんですか。

 

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