宅地建物取引主任者という不思議な資格
田原 なるほど。それにしても、マンションでも一戸建でも、買うのは一生に一度か二度という大きな買い物ですね。僕は9回くらい買ってんだけど(笑)。そういう一生に一度か二度の大事なものなのに、この本によると、不動産業界は実にいい加減だって書いてある。何がどういいかげんなんですか?
長嶋 価格査定のやり方をいいましたが、建物を具体的にチェックする人は、建物の専門家じゃないんですよ。なんの資格もなくてもできる。いまこの不動産の世界は宅地建物取引主任者という資格がありますが、その資格がなくてもできるんです。非常におおざっぱで、最後は「勘」と「経験」と「度胸」で決めるというような。みんなで意見して、2000万、2300万、2400万、じゃあ中とって2200万でいくか、と、そんな感じです。この業界に私が入る前は、査定の仕方にしてもなんにしても、もう少しきちんとシステムがあると思っていたんですね。
田原 宅地建物取引主任者というのは国家試験ですよね。それがないと不動産屋はできない?
長嶋 5人にひとりいればいいことになっています。ひとつのお店に5人にひとりの有資格者がいればいいので、4人は無資格でもいいんですね。
田原 宅地建物取引主任者というのは、相当難しい試験なんですか?
長嶋 そんなには難しくないです。一生懸命勉強すれば、1年、2年で取れるレベルだと思います。
田原 そういう国家試験があるわけね。それが5人にひとりいればいい。誰かがいないとそういうお店はつくれないわけね。
長嶋 つくれないことにはなっていますが、実務上は、無資格の人がやっています。表向きは、5人にひとり有資格者が全体の管理をすることになっていますが、現実にはそんなことやってないですよね。
田原 そうかあ。僕も不動産屋さんを相当何件も歩きましたけど、不動産屋さんに行くと、店の窓に、いくらいくらって、張ってますね、こういう物件は、実はないんですね。中に入ってあれが欲しいんだというと、あれはないんですよといわれる。
長嶋 いわゆるオトリですね。
田原 オトリですか。
長嶋 ええ。まあ、それは悪気のあるケースと、ないケースとあると思うんですが。(笑)
田原 何軒もいってね、あ、そうか、窓に張ってあるのはみんな、ないんだと。(笑)
長嶋 30年前は物件情報のデータベースもありませんでしたから。みんな紙で交換し合うか、人脈で物件情報をやりとりするしかなかったので、その名残がまだあるのかもしれません。この業界は、一発あててやるというような雰囲気が長く続いていましたが、最近は不動産も金融商品化しましたし、若い優秀な人が入ってくるようになりました。
田原 だいぶ変わってはきているんですか?
長嶋 はい。最近はリート、ファンドとか不動産が金融商品化、高度化してきましたし。
物件情報の囲い込みは、どこでも行われている?
田原 この頃はね、街の不動産屋さんには頼まなくて、東急とか三井とか、そういう大手の企業のやっているところに頼むようにしてるんですけど、大手はどうですか?
長嶋 たとえば、物件情報の囲い込みですが、大手系は自分たちはやっていないといっていますが、実際はやっているところもあると思いますね。
田原 囲い込みとはどういうことですか?
長嶋 ひとつの売り物件、売りマンションを預かったとすると、物件情報をコンピューターに登録して誰もが見られるようしなければいけないと義務付けられています。でも、おそらく多くの業者さんがそれをやっていないと思います。
田原 なぜ?
長嶋 自分たちでその不動産の買い手もみつけたいからです。まず、依頼主である売主さんから3%の手数料をもらいますいよね。自分たちで買う人もみつけることができれば、買い主からも3%もらえます。両方から3パーセントずつで手数料が6%になる。これを業界では「両手」というんですが、この両手取引をするために、他社が買い主をみつけてこないように、情報をネットワークに登録せず、囲い込むわけです。物件情報を隠し、自分の目の前に買いたい人が現れるまで待つんですね。
田原 囲い込むとどういう問題があるんですか?
長嶋 情報が広くいきわたりませんから、早く売れない。高く売れない。コンピューターのネットワークに登録すれば、他の業者さんのお客さんもみますし、競争倍率が急に高まるわけです。早く売れる可能性が高くなり、早く売れるということは、高く売れる可能性も出てくるんですよね。
田原 そうか。客がいっぱいいれば競合になるから、価格が上がる可能性が高いわけだ。
長嶋 ええ。その競争を回避しようとしているんですね。宅建業法で、こういうことはやってはいけないことになっています。
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