2011年3月21、22日の雨の中の自転車

神奈川県在住 30代 専業主婦 女性 の方からいただいたご質問
私は通勤のため自転車で21.22日の雨の中レインコートを着て走りました。
その際かなり顔や頭が濡れてビショビショになり口の中にも雨が入りました。
21.22日合わせて走った時間は40分~60分です。口の中にも入ってしまったのでとても心配です。
すぐにお風呂にも入れませんでした。
そのほかにも事故後すぐ3月13日、15日、17日などもマスクもせず一日あたり20~30分走りました。大丈夫でしょうか?
 

○神奈川県での測定値
神奈川県衛生研究所(参考1)による定時降下物、大気浮遊じんの測定結果は、
・3月21と22日合わせた定時降下物(Bq/m2
ヨウ素131:15000、セシウム134:3200、セシウム137:3400
・大気浮遊じんの最大値(3月15日)(mBq/m3
ヨウ素131:3600、セシウム134:390、セシウム137:440
・3月21と22日の積算降水量(横浜市):46 mm
です。

○3月21、22日の雨に濡れたことによる皮膚への被ばくの評価
上記で示した定時降下物と皮膚に対するベータ等価線量を求める係数(参考2)を用いて、ヨウ素131、セシウム134、セシウム137が皮膚に付着した場合の皮膚への被ばく線量(等価線量)計算します。この時、上で示した定時降下物量は48時間の値ですので、これを1hあたりの値に直して用います(上の値を48hで割る)。また、質問者が走った時間は1時間とします。
・ヨウ素131
312.5 (Bq/m2/h) ×1h(外出時間)×1.6×10-4(μSv/h)/(Bq/m2)=0.05 μSv/h
・セシウム134
66.7 (Bq/m2/h) ×1h(外出時間)×1.4×10-4(μSv/h)/(Bq/m2)=0.01μSv/h
・セシウム137
70.8 (Bq/m2/h)×1h(外出時間)×1.6×10-4(μSv/h)/(Bq/m2)=0.01μSv/h

合計で毎時0.07マイクロシーベルト(μSv/h)となります。また、これは、皮膚に付着した放射性物質による1時間の線量ですが、恐らく1日の間には風呂に入って流し落とされると考えて、最長で1日の線量を考えればよいとしますと、その線量は24時間を掛けることによって求められ、、ヨウ素が1.2μSv、セシウム134が 0.24μSv、セシウム137が 0.24μSv となります。放射線による皮膚障害は、皮膚に対して数千mSvを被ばくすることによって発現することを考えますと、これは無視しても構わない値です。
上記の計算で示した数値について、衣類への付着を想定すると、ベータ線の場合は、衣類の遮へいの効果や、衣類と皮膚との距離の効果により、その値が数分の1から数100分の 1程度にまで低減されます。実際に、レインコートを着て走ったとのことですので、上記計算値よりもずっと低い値と考えられます。なお、γ線の寄与は、通常これらの数%程度になり ます。

○3月21、22日の雨粒が口に入ることによる内部被ばくの評価
上記で示した定時降下物量が全て雨による場合、定期降下物濃度を雨量で割ることで、雨中に含まれる放射能濃度を計算します。計算のための条件は前と同じとします。
・ヨウ素131
15000 (Bq/m2) ÷0.046m(積算降水量)=330 kBq/m3
・セシウム134
3200 (Bq/m2) ÷0.046m(積算降水量)=70 kBq/m3
・セシウム137
3400 (Bq/m2)÷0.046m(積算降水量)=74 kBq/m3
かなり多いですが、雨水をコップ一杯ほど(200ml)飲んだと仮定して、経口摂取による預託実効線量を求めます。
・ヨウ素131
330 (kBq/m3) ×0.0002 m3(200ml)×2.2×10-2(mSv/kBq)=0.0015 mSv
・セシウム134
70 (kBq/m3) ×0.0002 m3(200ml)×1.9×10-2(mSv/kBq)=0.00027 mSv
・セシウム137
74 (kBq/m3) ×0.0002 m3(200ml)×1.3×10-2(mSv/kBq)=0.00019 mSv
合計で0.00196 mSvとなります。

○3月13日、15日、17日における被ばくの評価
上記で示した大気浮遊じんの濃度を用いて、この空気を吸引した場合の預託実効線量(摂取直後から生涯にかけて受けるであろう総被ばく線量)を見積もると、
・ヨウ素131
3600 (mBq/m3)×1.1×10-8(mSv/h)/(mBq/m3)×1h(外出時間)=3.96×10-5 mSv
・セシウム134
390 (mBq/m3)×3.0×10-8(mSv/h)/(mBq/m3)×1h(外出時間)=1.17×10-5 mSv
・セシウム137
440 (mBq/m3)×5.9×10-8(mSv/h)/(mBq/m3)×1h(外出時間)=2.60×10-5 mSv
であり、合計7.73×10-5mSvとなります。

100mSv以下では有意な健康影響が生じず、今回の計算結果から、以上3つのケースはいずれも100mSvよりもずっと低いことが分かります。100mSv以下では有意な健康影響は考えなくてもよいと考えますので、以上より、今回、雨に打たれたからといって、健康に影響の与えるレベルではないと考えます。

用いた線量換算係数は、次のとおりです。
皮膚へ沈着した場合の線量率(μSv/h)/(Bq/m2);
I-131:1.6×10-4、Cs-134:1.4×10-4、Cs-137:1.6×10-4
成人の経口摂取による預託実効線量 (mSv/kBq);
I-131:2.2×10-2、Cs-134:1.9×10-2、Cs-137:1.3×10-2
成人の汚染空気吸入による預託実効線量(呼吸率1.5m3/hの場合)(mSv/h)/(mBq/m3);
I-131:1.1×10-8、Cs-134:3.0×10-8、Cs-137:5.9×10-8 

参考1:神奈川県衛生研究所
http://www.eiken.pref.kanagawa.jp/008_topics/files/topics_120330.htm
参考2:IAEA-TECDOC-1162 「放射線緊急事態時の評価および対応のための一般的手順」(放射線医学総合研究所
http://www.nirs.go.jp/hibaku/kenkyu/te_1162_jp.pdf

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