社会

娘にわいせつ疑いの男性に無罪 娘の証言は「信用性に疑い」

 娘2人の体を触るなどしたとして、強制わいせつなどの罪に問われた横浜市の男性会社員(41)の判決公判が11日、横浜地裁であり、田村真裁判長は「被害者の証言の信用性に疑いが残る」などとして、無罪(求刑懲役3年)を言い渡した。

 男性は、2011年11月下旬から12年5月までの間、自宅で寝ていた長女と次女の胸を触るなどのわいせつな行為をしたとして、起訴されていた。

 客観的な証拠がない中、長女は公判で「2時間半にわたって体を触られた。(途中で)寝ることもあった」などと証言したが、田村裁判長は「衝撃的な体験であったはずなのに、眠くなるような精神状態は考えにくい」と指摘。次女が証言した犯行時の体勢も「容易に発覚してしまい、不自然さを否めない」とし、2人の証言は「信用性に疑いが残る」と述べた。

 また、次女が被害を申告した時期についても、警察の捜査書類の日付と異なっているとし、「衝撃的な事実を打ち明けた時点を勘違いするとは考えにくく、信用性を損なわせる」と説明。被害を警察に申告した男性の妻は、離婚をめぐって男性と対立しており、「次女が母親の影響を受けて虚偽の供述をしようとした可能性も否定できない」とした。

 閉廷後、男性は「やっていないものはやっていないので、ほっとしている」と話した。

 横浜地検の中村周司次席検事は「内容を精査し、上級庁とも協議の上、適切に対応したい」とコメントした。

◇「公文書の認識欠如」

 男性会社員に無罪が言い渡された裁判では、県警の捜査書類の虚偽記載が発覚した。田村真裁判長は判決言い渡し後、「公文書の信頼性を著しく損なわせた」と県警の捜査に対し異例の苦言を呈した。約11カ月にわたって勾留された男性は「偽造された文書で逮捕され、納得がいかない」と憤りをあらわにした。

 虚偽記載があったのは、鶴見署の男性巡査部長が作成した捜査報告書と、元警察相談員が男性の妻から被害の聞き取りをまとめた警察相談受理処理票。

 巡査部長は、捜査報告書の作成日付をさかのぼらせて逮捕状を請求。元相談員は、妻が長女の被害しか申告していなかった時点で、次女の被害も書類に記載した。元相談員は証人尋問で「刑事の経験から、次女にも被害が及んでいると思った」と説明した。

 田村裁判長は、こうした証言自体に対し「公文書に対する認識の欠如」と批判。その上で、鶴見署に対し「今回の件を真摯に受け止めてほしい」と求めた。

 「(虚偽記載をした捜査員の)証言を聞いても、罪の重さが感じられなかった」。閉廷後、男性は悔しさをにじませた。

 鶴見署の岩岡豊副署長は「適正捜査の徹底について指導を強化していく」とコメントした。

【神奈川新聞】