朝日新聞 「吉田調書」記事取り消し9月12日 1時35分
朝日新聞社の木村伊量社長は、11日夜、記者会見し、東京電力福島第一原子力発電所の元所長のいわゆる「吉田調書」を巡る記事について、「間違った記事だ」として取り消したうえで、みずからの進退について、「経営トップとしての責任も逃れられない」として「抜本改革の道筋をつけたうえで速やかに決断したい」と述べました。
朝日新聞社の木村伊量社長と編集担当の杉浦信之取締役らは、11日夜7時半から記者会見しました。
朝日新聞社は、ことし5月20日の朝刊で、福島第一原発の吉田昌郎元所長が政府の事故調査・検証委員会の聴き取りに答えた証言記録、いわゆる「吉田調書」を入手したとして掲載した記事の中で、福島第一原発の2号機が危機的な状況に陥っていた3月15日の朝、「第一原発にいた所員の9割にあたる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発へ撤退していた」と報じていました。
これについて、木村社長は、記者会見の中で「『吉田調書』の評価を誤り、多くの所員がその場から逃げ出したような印象を与える間違った記事だと判断した」などと述べ、「取材が不十分で所長の発言への評価が誤っていたことが判明した」として、記事を取り消しました。
また木村社長は、「読者および東京電力の皆様に深くおわび申し上げます」と謝罪したうえで、みずからの進退について「経営トップとしての私の責任も逃れられない」として「抜本改革のおおよその道筋をつけたうえで、速やかに決断したい」と述べました。
杉浦取締役については、編集担当取締役の職を解くとしています。
さらに木村社長は、いわゆる「従軍慰安婦」の問題を巡る自社の報道のうち、「慰安婦を強制連行した」とする男性の証言に基づく記事を先月、取り消したことについて、「誤った記事を掲載したこと、そして、その訂正が遅きに失したことについて、読者の皆様におわび申しあげます」と謝罪しました。
そのうえで、過去の記事の作成や訂正に至る経緯、それに日韓関係をはじめ国際社会に与えた影響などについて、第三者委員会を設置して検証することを明らかにしました。
また、この問題を巡って、ジャーナリストの池上彰氏が、朝日新聞に連載しているコラムで検証が不十分だと批判する内容を執筆したところ、朝日新聞側が当初、掲載できないと伝えたことについて、木村社長は「途中のやり取りが流れ、言論の自由の封殺であるという思いもよらぬ批判をいただいた。結果的に読者の皆様の信頼を損なう結果になったことについては社長として責任を痛感している」と述べました。
記事取り消し 朝日新聞の説明
朝日新聞社はことし5月20日の朝刊で「吉田調書」を入手したとして掲載した記事の中で、福島第一原発の2号機が危機的な状況に陥っていた3月15日の朝、「第一原発にいた所員の9割にあたる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発へ撤退していた」と報じました。
これについて11日夜の記者会見で朝日新聞社は「所員への直接取材を徹底しなかったため、所員に指示がうまく伝わらないまま第二原発への退避が行われたということが把握できなかった結果、所員が逃げたという誤った印象を与えた。また吉田元所長が証言記録の中で『よく考えれば2F・福島第二に行った方がはるかに正しいと思った』と評価していた部分などを欠落させていた」と発表しました。
そのうえで、所員らへの取材が不十分で所長の発言への評価が誤っていたことが判明したとして、記事を取り消すことを明らかにしました。
今回の経緯について、朝日新聞社は「報道後、『誤報』などの批判が寄せられ、8月に入って新聞メディアが吉田調書を入手したと報じ始め、朝日新聞の記事の印象と異なる内容だった。このため編集幹部の指示で点検を始めた結果、語句の修正ではなく、取り消すという判断をした」としています。
池上氏「遅きに失したが謝罪は評価」
トルコのイスタンブールで日本とトルコのメディア関係者の会議に出席しているジャーナリストの池上彰氏は、朝日新聞社の木村社長がいわゆる「従軍慰安婦」の問題を巡る自社の報道について会見で謝罪したことについて、「新聞紙面できちんとやるべきことをやっていなかったから、社長の記者会見に至ったんだと思う。批判を受けて社長が記者会見をしたことは、遅きに失したことではあるが、みんなに謝罪したというのは評価していいのではと思う」と述べました。
そのうえで、「私は、朝日新聞の慰安婦報道の検証について謝罪すべきとコラムに書いた。今回、それについても謝罪されたようなので、それが事実であれば私の主張を受け止めてくださったのかなと思う。慰安婦報道の検証自体が遅きに失し、また、謝罪をすることにおいても遅きに失した。極めて残念だが、少なくとも誤りを認めて謝罪をするということは、本来あるべき姿だと思う。ぜひ今後もこの精神を忘れず、ジャーナリズムのあるべき姿を追及していただければと思う」と述べました。
一方、朝日新聞でのコラムの連載を続けるかどうかについては、帰国後に改めて会見や謝罪の内容を細かく検討したうえで考えたいとして明言しませんでした。
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