菅野、エース復活10勝!40日ぶり登板で7回1失点
◆阪神1―3巨人(10日・甲子園)
巨人は右手中指の腱(けん)の炎症から復活した菅野が、阪神戦で40日ぶりに先発。初回に1点を失ったものの7回1失点で10勝目を挙げた。打線は1点を追う7回、井端のソロで同点。8回には坂本の遊撃強襲適時打で勝ち越した。貯金は今季最多の16とし、11日に巨人が勝ち、2位・広島が敗れれば、優勝マジック「16」が再点灯する。
カクテル光線に照らされ、気合が入った。菅野はピンチでギアを上げた。1点ビハインドの6回無死三塁から2死を取り、伊藤隼に全5球直球勝負。最後はこの日85球目、高めの147キロで三邪飛。「力勝負になるのは覚悟していた。いい勝負ができました」。炎天下のジャイアンツ球場では2軍戦で2回46球だけだったが、中盤以降も球威があった。
40日ぶりの1軍登板。「不安もありましたが、苦しい日を思い出し、ありがたみを感じながら投げました。きょうにかける思いがありましたし、ファームでお世話になった方への思いもありました」。2回以降は無失点。6回終了後は続投を直訴した。7回104球、7安打1失点で味方の逆転を呼び、白星をつかんだ。
2年目の今年は開幕投手を務め、主戦として先発ローテを守り通す覚悟だった。だが、8月4日にプロ初の2軍落ち。故障後、ふと振り返った。
「今年は野球をやっていて楽しいと思ったことが一度もないですね。苦しみしかない。正直、しんどかったですよ」
昨年はモットーに「楽しむ」を掲げ、日本シリーズで楽天・田中と投げ合った時も「楽しかった」と言った男だ。快調に白星を重ねる裏で、昨年と真逆の境地にいることに気づいた。
「昨年は前年に浪人して、試合に投げられるだけでうれしかった。今年は違う。ある程度のところを任された責任感もあるし、楽しいと思っているようではダメ。今年はそれでいいと思います」
勝負のシーズン終盤に向け、覚悟を決めた。だから、下を向く暇などなかった。「悔やんでけがが良くなるわけではない」。誰に言われたわけでもない。2軍では連日、朝7時過ぎから、無人のG球場で約20分走った。暑さが厳しかったが「(涼しい)室内でバイクをこぐのとは、運動量が全然違うので」と大量の汗をかき、Tシャツを雑巾のように絞った。体重は5キロ近く減り91キロに。体のキレが増した。
原監督は6回の力勝負に「小細工というか、そういった投球をせず、非常に価値ある、自分を信じた投球だった」と絶賛。復帰戦での好投に「野球人としては、非常にいい位置で2年目を戦っている」と賛辞を贈った。
防御率はリーグトップの2・52。新人から2年連続2ケタ勝利にも「最低ラインです」と言い切った。「まだやり残したことがある。厳しい戦いが続くので、チームの力になれるように頑張ります」。頼れるエースが、たくましくなって帰ってきた。(片岡 優帆)
◆菅野の経過
▼7月16日 ヤクルト戦(東京D)で、二ゴロを打った際の衝撃で右手中指を負傷。
▼8月1日 広島戦(東京D)に先発し、6回6安打2失点で勝敗つかず。
▼4日 患部の腫れが引かず、検査。「右手中指の腱の炎症」のためプロ入り後初めて出場選手登録を抹消。
▼14日 キャッチボール再開。30メートルまで距離を延ばして、計70球。
▼23日 腰に違和感を訴え、予定していたブルペン投球を回避。
▼29日 腰が順調に回復し、ブルペン入り。捕手を立たせて14球、中腰で26球の計40球。
▼9月4日 イースタン・ロッテ戦(G球場)で実戦復帰。先発で2回46球を投げ、7安打3失点。
▼7日 1軍に合流。