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2003年に政府が「観光立国」を掲げてから10年。2013年の訪日旅行者数は1,036万人と、初の大台を突破した。
2020年代まで成長率は２桁台で伸びていくと推測され、東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、政府は年間2,000万人を見込んでいる。また、2030年には3,000万人を努力目標として掲げるなど、観光は国内においても注目の業界である。今後インバウンド観光を躍進していくためには、より一層のハード・ソフト両面の整備、さらには下記の課題をクリアできるか否かにかかっていると考える。
（１）選択と集中
トップクラスの世界都市はニューヨークとロンドン、そこに東京、パリを含めた上位４都市を「四大世界都市」として位置付けることが多い。人・モノ・カネ・情報をグローバルで比較しても東京は世界有数の都市として戦ってきた。2014年９月現在、上記の四大世界都市は上位を維持している一方、アジア有数の金融都市として香港や上海、シンガポールが勢力を増している。特にビジネスを重視した世界都市格付けにおいてはパリや東京と並ぶ、あるいは同国を上回る評価を得ている。外国旅行者数も日本を大きく上回っている。
短期間で旅行者数を最大化するのが目的であれば、「地方も」ではなく、「まずは首都圏」に足を運んでもらうことが必須である。「何故？」か。日本から海外へ、例えば初めてアメリカに個人旅行する観点で考えれば明白である。日本からの定番観光地は、ホノルル、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ニューヨーク、ボストンが上位を占めている。いくら景色が綺麗だったり、歴史や特徴があるといっても、初めて訪れる人がフィラデルフィアやオクラホマ、ビューストンやマイアミを訪れるだろうか？タイならバンコク、韓国ならソウル、中国なら上海や北京が大多数だろう。
地方に足を運んでもらうには、大都市での第一印象が重要である。この戦略がうまく機能しているのが、同じ島国で年間3,000万人の海外旅行者が訪れるイギリスのインバウンド戦略である。最初から地方へ誘導するのではなく、まずはロンドンに来てもらい、そこから地方圏に誘導している。最初に顧客の意向を汲み、次に顧客が自発的に選択する環境を整えることが重要だ。
（２）首都圏以外の情報発信、環境を整備
では、既に日本を訪れたことがある訪日旅行者に対してはどうか？「2020年は地方や小さな町にも大きなチャンス！」と期待は大きいが、地方の情報は海外にいると皆無に等しい。オリンピック開幕までに、チャンスを獲得する為にも、首都圏以外の情報が発信されるプラットフォームの構築が必須となる。
日本は北から南へと国土が広く、食文化一つとってもみても多様なコンテンツ（資産）で溢れている。如何にして、数ある渡航先から日本、その中でも首都圏以外に足を運んでもらえるか？現段階では仮説に過ぎないが、政府やローカル（地元）エキスパートの情報だけでなく、訪日旅行者自身が旅のハイライトを知合いやコミュニティに共有し、価値観や期待値が似ている人に拡散される仕組みが必要なのではないだろうか。似た状況（予算、ライフステージ、興味等）の人がどう旅をしたか、参照できるサービスが登場すれば、個々の旅をより最適化できると捉えている。
（３） Is Japan ready? (イズ・ジャパン・レディ？)
年間2,000万人の旅行者が日本に訪れた場合、総人口の約16％（６人に１人）、3,000万人では約23％（ほぼ４人に１人）にあたる計算だ。これまで国内旅行市場の約95％はドメスティック市場向けで、多様化する必要が無かった。本気で訪日旅行者を獲得したいなら、今以上に、国籍や旅行形態、旅行内容、宿泊施設を始めとする観光施設に対するニーズなどの多様化を図らなければ3,000万人どころか、2,000万人の達成さえ危うい。
日本が真の観光立国になる為には、これまでの官主導から、民間も共創していけるかどうかにかかっている。食一つとっても、国籍・宗教・嗜好・健康・制限等に対応し提供できなければ、訪日旅行者も「来てよかった」、「また来たい」、「友達にもおススメしたい」と思ってもらうのは困難である。数字だけを追うのでなく、心から訪日旅行者に楽しんでいってもらいたいと願わなければ、2021年以降の伸びは見えない。
依然として中長期的な受け入れ体制づくりは課題であるが、オリンピックという50年に１度のチャンスを獲得した日本。多彩な四季に加え、海も山も湖も川もあって、安全で、キレイな国はそうそうない！
2012年時点での外国人旅行者受入数は、33位。観光大国の3条件である「国の知名度」「交通アクセス」「治安の良さ」という条件を十分に備えている日本の観光産業は、今後ますますその規模を拡大していくであろう。コンテンツ（資産）は他国が敬うほどある。新しい、旅系のベンチャーも出てきている。2020年までに2,000万人を突破できれば、トップ15位も視野に見えてくる。頑張ろう日本！
＜出典＞
みずほ総合研究所
http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/jp140908.pdf
AT Kearney
http://www.atkearney.com/news-media/news-releases/news-release/-/asset_publisher/00OIL7Jc67KL/content/new-york-london-and-paris-are-top-global-cities-with-beijing-making-the-top-10-for-the-first-time-in-2014-a-t-kearney-global-cities-index/10192
tripadvisor
http://www.tripadvisor.com/TravelersChoice-Destinations-cTop-g294232
「英国の観光政策と観光振興」著：新井佼一
http://www.i-repository.net/contents/asia-u/0000000003491.pdf
日本旅行業協会
http://www.jata-net.or.jp/data/stats/2014/11.html
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