秘密保護法:「知る権利」尊重明記 運用基準27カ所修正
毎日新聞 2014年09月10日 11時57分(最終更新 09月10日 14時35分)
政府は10日午前、特定秘密保護法に関する統一的な運用基準の修正案を有識者会議「情報保全諮問会議」(座長・渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長兼主筆)に提示した。運用基準と関連政令に対し国民から寄せられたパブリックコメント(国民の意見公募)を踏まえたもの。国民の「知る権利」の尊重を明記、運用基準の見直し時期に「施行後5年」を加えるなど計27カ所を修正。ただ、監視制度の在り方や秘密指定の期間など、運用体制の根幹に関わる部分に変更はなく、恣意(しい)的な運用に対する懸念を残した。
安倍晋三首相は諮問会議で「寄せられた意見一つ一つについてしっかりと検討を行った。施行にあたり万全の体制を整備し、適正運用を積み重ねていくことが国民の信頼を得る上で最も大切なことだ」と述べた。
政府は10月上旬にも運用基準と政令を閣議決定し、12月上旬の法施行を目指す。
意見公募は政府が運用基準や政令の素案を公表した後の7月24日から1カ月間、総務省の電子政府窓口やファクスなどで実施。特定秘密の指定や解除、特定秘密を取り扱う人物を選定するために身辺を調査する適性評価などに関し計2万3820件の意見が寄せられた。内閣官房の担当者によると過半数が批判的な意見の表明だったという。
修正案では「知る権利」の明記を求める意見が多く寄せられたことから、「国民の知る権利は憲法の保障する表現の自由や、民主主義社会の在り方と結びついたものとして十分尊重されるべきもの」との表現を追加。特定秘密に指定可能な情報として挙げていた「自衛隊及び米軍の運用」について、自衛隊と関係のない米軍の運用は対象外とした。
また、適性評価の調査禁止事項として、思想、信条などに「信教」「市民活動」を追記し、これらの調査を「厳に慎む」との表現を「してはならない」とより厳格化した。
一方、政府内に設けられる「独立公文書管理監」などの監視機関の独立性の強化を求める意見や、60年を超えて延長できる秘密指定の期間に対する批判も寄せられたが、修正案で大きな変更は加えられなかった。【佐藤慶】