秘密保護法:骨格の修正なく 「知る権利」尊重明記

毎日新聞 2014年09月10日 21時37分(最終更新 09月11日 00時13分)

特定秘密保護法の意見公募に寄せられた主な意見と政府の対応
特定秘密保護法の意見公募に寄せられた主な意見と政府の対応

 特定秘密保護法に関する統一的な運用基準の修正案が10日、有識者会議「情報保全諮問会議」(座長・渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長兼主筆)に提示された。政府はパブリックコメント(国民の意見公募)で寄せられた計2万3820件の意見を踏まえ、国民の「知る権利」の尊重を明記するなど計27カ所にわたって修正。意見を計600項目に類型化し、それぞれに対する考え方を内閣官房のホームページ(HP)で公表した。しかし同法の骨格を変える修正はなく、「ガス抜き」を狙った色合いの濃いものにとどまった。

 同法を巡っては、恣意(しい)的な秘密指定が拡大したり、秘密文書が廃棄されたりするとの懸念が根強い。このため政府は監視機関として、各府省庁の事務次官級でつくる「内閣保全監視委員会」、審議官級の「独立公文書管理監」とその下に置く「情報保全監察室」を設けるとしたが、その実効性をいかに高めるかが課題と指摘されている。

 意見公募では、監視機関について「行政職員を含まない有識者らの独立機関とすべきだ」との意見が寄せられたが、政府は「高度な専門的判断が必要で、行政職員を排除してチェック機能を果たすのは困難」として退けた。「(他省庁からの)出向人事は禁止すべきだ」と独立性の強化を求める声に対しては「(官僚の)キャリア形成の観点から不適当」と排除した。

 米国には国民が国家機密を強制的に解除するよう請求できる制度があり、同様の制度の導入を求める声があったが、政府は「(現行の)情報公開法の開示請求で類似の機能を担える」との判断から見送った。

 60年を超えて指定を延長できる秘密指定の期間については「永久に秘密とされることもありえる」などの懸念の声があがった。これに対し政府は、監視機関や内部通報制度などの「重層的な仕組みによって適正な運用が図られる」として理解を求めた。

 諮問会議はもともと運用基準の策定や変更などについて首相に意見を述べる組織との位置づけ。委員を代表して記者会見した永野秀雄・法政大教授は「法の骨格に関わる点に反対意見が出ても、我々は法改正はできない」と語った。

 意見公募に寄せられた意見と政府の考え方は内閣官房HPの情報保全諮問会議のコーナー(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/jyouhouhozen/dai3/siryou2.pdf)でみられる。【佐藤慶】

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