吉田調書公開:「原発撤退」報道否定狙う…政府
毎日新聞 2014年09月11日 21時52分(最終更新 09月12日 00時06分)
政府が11日、東京電力福島第1原発事故に関する吉田昌郎元所長の「吉田調書」の公開に踏み切ったのは、朝日新聞が5月20日付朝刊で報じた「原発撤退」報道を否定するためだ。複数の報道が出たことで、非公開を望んだ吉田氏の意思と異なる状況が生じたと判断した。同時に公開した菅直人元首相らの調書では事故当時の民主党政権の混乱ぶりも浮き彫りになっており、原発再稼働に向け安倍政権の情報公開に対する積極姿勢を強調する狙いもありそうだ。【木下訓明】
◇情報開示姿勢アピール
「聴取記録の一部のみを断片的に取り上げた記事が複数掲載された。『独り歩き』とのご本人の懸念が既に顕在化している」。菅義偉官房長官は11日の記者会見で、非公開とする前提が崩れたとの認識を強調。「このまま非公開となることで、かえってご本人の意思に反する結果になる」と語った。
吉田氏は、聴取を受けた政府の事故調査・検証委員会(政府事故調)から国会事故調に調書を開示する際、「国会事故調から第三者に公表されることは望まない」との上申書を提出。菅氏は当初、この上申書を根拠に「政府の判断で公開することは難しい」としてきた。ただ、調書を巡る報道が過熱化したことで方針を転換。菅元首相ら民主党政権幹部の調書についても、同意を前提に同時公開する方針に転じた。
このうち、池田元久元副経済産業相は震災直後に福島第1原発を視察した菅元首相が「つまらないことで怒鳴ってみたり、終始ひどかった」と証言。政権の混乱ぶりが露呈した。調書公開は原発再稼働に直接の影響はないものの、事故収束に当たった民主党政権の「失敗」を強く印象づける内容だ。
非公開を求めた吉田氏の意向に沿わない結果となったのは間違いなく、政府も吉田氏の遺族の同意が得られたかどうかは明らかにしていない。「今後、政府が同様の調査を行っても協力が得られにくくなるのではないか」(自民党関係者)との指摘も出ている。