大阪市:労組退去訴訟、敗訴 市に410万円賠償命令
毎日新聞 2014年09月10日 16時01分(最終更新 09月11日 00時21分)
大阪市庁舎から職員労働組合の事務所を退去させた橋下徹市長らの処分の違法性が争われた訴訟で、大阪地裁は10日、市の処分を取り消し、原告側の8労組に計約410万円を賠償するよう市に命じた。中垣内(なかがいと)健治裁判長は「橋下市長には職員の団結権を侵害する意図があった。市長の裁量権の乱用で違法だ」と判断した。
原告は市労働組合連合会(約2万8000人)など自治労系6労組と市労働組合総連合(約3000人)など自治労連系2労組。
判決によると、8労組は市庁舎地下1階の6部屋(計約750平方メートル)を事務所として使っていた。しかし、橋下市長は就任直後の2011年12月、労組側が市長選で現職の平松邦夫市長を支援したとして退去させると表明した。
労組側は団体交渉を求めたが市は応じず、翌年2月、庁舎のスペース不足を理由に使用を許可しない処分を決め、毎年更新した。自治労系は12年3月までに退去したが、自治労連系は拒否して今も残っている。
判決はまず、組合活動のために労組が庁舎に事務所を置く合理性を認めた。強制退去が正当化されるには「自治体側の必要性や職員の団結権を侵害する意図の有無を総合的に判断しなければならない」と述べた。
そして、労組事務所で違法な政治活動がされた証拠は乏しいと指摘。「組合員らの違法な政治活動と庁舎に事務所があることの高い関連性は認められない」とした。庁舎のスペース確保の必要性も認めなかった。
そのうえで、橋下市長らの対応について、労組側と団体交渉をせず、退去がやむを得ないかの検討も不十分だと批判。「社会通念に照らして著しく妥当性を欠き違法だ」と結論付けた。
橋下市長主導で制定された労使関係条例の「労組への便宜供与を禁止する条項」を盾に、市側が処分を正当化するのも団結権を保障した憲法に反するとした。労組側が求めた賠償の一部も認めた。
大阪市は労組と複数の紛争を抱えるが、裁判所が橋下市長の労組への対応を違法としたのは初めて。
市の村上栄一総務局長は「判決の詳細を精査し、対応を検討する」とコメントした。【堀江拓哉】