朝日新聞:「慰安婦」「吉田調書」…社長、誤報認め謝罪
毎日新聞 2014年09月11日 19時50分(最終更新 09月12日 01時21分)
東京電力福島第1原発事故を調べた政府の事故調査・検証委員会(政府事故調)による吉田昌郎(まさお)元所長(故人)の聴取結果書(吉田調書)を巡り、朝日新聞が5月20日朝刊で「所員の9割が吉田氏の待機命令に違反し、福島第2原発に撤退した」と報じた問題で、同社の木村伊量(ただかず)社長が11日記者会見した。「その場から逃げ出したような間違った印象を与える記事と判断した」として記事を取り消すとともに謝罪。自身の進退にも触れ「私の責任は逃れられない。編集部門の抜本改革など道筋がついた段階で速やかに進退を判断する」と述べた。
◇検証後「進退を判断」
過去の従軍慰安婦報道について「慰安婦狩り」をしたとする吉田清治氏(故人)の証言を取り消すなどした検証記事(8月5、6日朝刊)で謝罪がなかったことなどに批判が出ていることについても、木村社長は「誤った記事で訂正は遅きに失したことを謝罪したい」と、この問題で初めて謝罪した。一方で、自身の進退を問う理由は「言うまでもなく吉田調書報道の重みだ」と述べ、慰安婦報道の問題より大きいとの認識も示した。
会見は東京・築地の同社東京本社で行われた。木村社長らによると、吉田調書を巡る当初の報道では、調書に吉田元所長が「福島第1原発の近辺への退避を指示した」との証言があるのに加え、独自に入手した東電の内部資料には福島第1原発内の線量の低い場所で待機するよう指示したとの記述があったとして、福島第2原発への退避を「待機命令違反」と報じたと説明。ただし、この指示が所員に伝わったかどうかは、当時の所員から一人も取材で事実を確認できないままだったという。吉田元所長が調書で否定している「撤退」という言葉を記事で使ったことについては、「約10キロ離れた福島第2からはすぐに戻れないため『撤退』と表現した」と説明した。
しかし、8月に入って他の新聞社が「命令違反はなかった」との報道を始め、社内で検証したところ、吉田氏の指示が多くの所員に伝わっていなかったことが判明したという。杉浦信之取締役編集担当は「当初は吉田氏の指示があったという外形的な事実だけで報道したが、所員が命令を知りながら意図的に背いて退避したという事実はなかった。秘匿性の高い資料で直接目に触れる記者やデスクを限定して取材を進めた結果、チェック機能が働かなかった」と釈明した。