朝日新聞:誤報「痛恨の極み」…記事取り消し、異例の会見
毎日新聞 2014年09月11日 22時50分(最終更新 09月12日 00時36分)
東京電力福島第1原発事故の原因を調べた政府事故調による吉田調書を巡る朝日新聞の報道は11日、報道機関のトップが記事の取り消しと謝罪の記者会見を開く異例の事態に及んだ。会見に臨んだ木村伊量(ただかず)社長は「(報道がなければ調書が)世に知らされることがなかったと意義を大きく感じていただけに、誤った報道になり痛恨の極み」と口を真一文字に結んだ。【奥山智己、堀智行】
◇社長、報道陣200人を前に
東京・築地の朝日新聞社本社で開かれた会見には、報道陣約200人が集まった。
会見には、編集担当の杉浦信之取締役と、知的財産・広報・ブランド推進・環境担当の喜園尚史(よしぞの・ひさし)執行役員が同席。冒頭、木村社長が座って経緯を説明する文章を読み上げ、途中で3人が起立して「読者と東電の皆さまに深くおわびします」と6秒間頭を下げた。
政府事故調が吉田昌郎元所長(故人)を聴取した調書を巡り、5月20日朝刊の1面トップで「所長命令に違反 原発撤退」と報じた。記者の資質が誤報を招いたのではという質問に、杉浦取締役は「チェック体制はどうだったか……」と一瞬、言葉を詰まらせ、「第三者委員会だけでなく(いろいろ)検証し、委員会(の検討結果)を踏まえて結論を出したい」と述べた。
記事が所員について逃げ出したような印象を与えたとの指摘には「意図的ではない」と強調した。
朝日新聞の報道後、週刊誌などが「誤報」と報じ、朝日新聞は抗議してきた。しかし、先月に産経新聞などが吉田調書を入手し、朝日新聞の報道を否定する記事を掲載するようになり、記事の点検を始めたといい、「抗議の根底が崩れたので、抗議文は撤回します」とした。
一方、過去の従軍慰安婦報道にも質問が集中。木村社長は厳しい口調で「8月5日付の検証紙面でおわびすべきだったと反省している」と話した。自発的な検証能力について問われると、「大変、厳しいご指摘だ。いろんなご批判を頂戴している。我々の立場は8月5日の紙面で示したが、さらに検証を続ける。自浄能力があったかどうかも、痛切な反省に立って検証していく」と述べた。
吉田調書と慰安婦問題の報道の影響による購買停止について問われると、喜園執行役員は「具体的にはこの場で申し上げないが、通常よりは多い」と明かした。