長野県中野市の県道で5月、反対車線にはみ出した乗用車が対向車に相次いで衝突して巻き込まれた4人が死傷した事故で、乗用車を運転していた須坂市の少年(19)=道交法違反(無免許運転)などの疑いで逮捕=が事故前に吸っていた危険ハーブから、県警の鑑定で大麻の主成分に似た「合成カンナビノイド類」の化学物質が検出されたことが、27日、捜査関係者への取材で分かった。検出された物質は当時、薬事法などで規制されていなかったが、大麻より強い作用があったとみられるという。
東京・JR池袋駅近くで6月に車が暴走し8人が死傷した事故で、運転していた男が使用したとみられる危険ハーブの化学物質も合成カンナビノイド類で、厚生労働省は7月、この物質を薬事法の指定薬物に緊急指定した。
同省監視指導・麻薬対策課などによると、カンナビノイド類の化学物質は大麻の主成分。薬事法や麻薬取締法で規制されている物質もあるが、新種が次々と出回り、規制が追い付いていない物もある。
薬物に詳しい横浜薬科大の篠塚達雄教授によると、合成カンナビノイド類の物質は幻覚作用などがあり、車を運転していた場合、「スピード感覚がなくなったり、道がゆがんで見えたりすることがある」という。
一方、少年は事故前に吸引した危険ハーブをインターネット上で購入したと供述。長野県警による捜査で、購入先は兵庫県尼崎市の店と判明した。捜査関係者によると、この店で販売していた危険ドラッグは、厚労省東海北陸厚生局麻薬取締部(名古屋市)が6月に摘発した石川県七尾市の「危険ドラッグ」工場で製造していた。長野県警や麻薬取締部は流通ルートについても調べている。
麻薬取締部によると、この工場では麻薬などを中国から輸入し、乾燥植物片に混ぜて危険ハーブなどを製造していた。
少年は27日、鑑定留置の期間が終了。中野署と県警交通指導課によると、少年は調べに「(事故前に危険ハーブを吸って)意識が飛んでしまった」と供述しているほか、事故後に少年の尿を調べたところ、危険ハーブの使用が疑われる結果が出ており、事故時の状況を詳しく捜査していた。同署などは、危険ハーブの影響で正常な運転が困難な状態で車を運転した危険運転致死傷の疑いでの立件を視野に慎重に調べを進めている。