＜川内原発＞「新基準適合」　再稼働へ鍵握る議会　３０キロ圏、８市町に反対陳情　／鹿児島

　原子力規制委員会は１０日、九州電力川内原発（薩摩川内市）１、２号機が安全対策を強化した新規制基準に「適合している」と結論づけ、川内原発は再稼働に向け主要な審査を終えた。今後は再稼働へ向けて地元での議論が加速する。川内原発から３０キロ圏の市町の多くは定例議会が開会中で、提出されている反対、賛成の陳情の取り扱いが注目される。【宝満志郎、杣谷健太、津島史人】

　３０キロ圏９市町の議会で現在、原発関係の陳情が出ているのは、薩摩川内市▽いちき串木野市▽阿久根市▽出水市▽さつま町▽長島町（１２日の開会日に上程予定）▽鹿児島市▽日置市−−の８議会。立地市である薩摩川内市議会には１２件出され最も多い。県議会にも３９件が出されている。

　陳情の多くは再稼働反対、３号機増設計画白紙撤回など反原発の立場からのものだ。避難計画が不十分と訴える陳情も目を引く。

　再稼働反対と３号機増設計画の白紙撤回を求める陳情を薩摩川内市議会に出している「川内原発建設反対連絡協議会」の鳥原良子会長は「放射能汚染におびえない市政を望む。議会は市民の訴えに真摯（しんし）に向き合ってほしい」と訴える。

　１０日は規制委の審査書決定を受けて記者会見。「福島原発事故が収束していない中、立地自治体からすれば、人ごとではない」と危機感をあらわにした。避難計画が審査されないまま再稼働に向けた動きが進む現状に「住民を無視しており、私たちは見捨てられている」と憤った。

　一方、早期再稼働を求めているのは、薩摩川内市内の各種業界団体が参加する「薩摩川内市原子力推進期成会」の陳情。薩摩川内市議会と県議会に出されている。同期成会会長の山元浩義・川内商工会議所会頭は「期成会に参加する７２団体の総意を重く受け止めてもらいたい」。１０日は「大変ありがたく、大きく前進した」とコメントを読み上げた。

　川内原発停止後、市内経済は沈滞しているとして「（説明会や地元同意など）手続きが順調に進められ、早期に再稼働し、地域経済の活性化と雇用の安定確保につながることを期待している」と希望を語った。

　◇目立つ「地元同意を」の声

　新たに９月議会に提出されたもので目立つのは、再稼働に際しては「３０キロ圏自治体の地元同意を得るべきだ」という趣旨の陳情。いちき串木野市、阿久根市、出水市、日置市、長島町の各議会に出されている。しかし伊藤祐一郎知事は、地元同意は県と薩摩川内市で足りるとの姿勢だ。

　「地元同意に、いちき串木野市も含めるべき」と陳情書をいちき串木野市議会に提出した「避難計画を考える緊急署名の会」の石神斉也代表は「福島第１原発事故では放射能汚染範囲が事故以前の想定より大きく広がった。県の姿勢は事故以前の考えで納得できない」と話す。

　一方、いったんは陳情に結論を出した議会もある。出水市議会は昨年１１月、再稼働反対の陳情を趣旨採択し、慎重な対応を県に求める意見書を可決。姶良市議会も今年７月、再稼働反対の陳情を採択し意見書を可決した。

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　陳情の取り扱いは、再稼働に対する議会の意思表示になる。議会の慎重かつ活発な議論が求められる。

　◇「市民の声無視」鹿児島市で抗議行動

　鹿児島市の繁華街・天文館では同日夕、再稼働に向けた動きに危機感を抱く反原発・かごしまネットのメンバーら約３０人が審査結果に抗議。のぼりを立てて市民にビラを配布、「絶対に安全なわけではない」「審査は結論ありき」などと再稼働反対を訴えた。

　集会を呼びかけた反原発・かごしまネット代表の向原祥隆さん（５７）は「（耐震設計などの基準となる）基準地震動の想定が過小であることや火山の巨大噴火のリスクなど、多くの専門家が疑問を呈し、市民が不安を抱いている」と指摘。「市民の声を無視しているとしか思えず、承認は結論ありきとしか考えられない」と声を張り上げた。【土田暁彦】