殺人迷宮課の名警部 2014.08.28

(矢吹竜二)面ー!
(江戸川君平)いよっ!面ー!まだまだ!やあ!せいっ面!まいりました。
次!はあっはあっ…もう痛い。
やっ!
(見城可奈子)やあ!ああ…はあ。
はあっはあっ…。
相手を打つためにはまず気持ちのうえで相手に攻め勝つ事それが大事なんだがあなたの攻めの気迫はとてもよかった。
ありがとうございます。
でも私は護身のために習っているだけなのでそんな大そうな事は何も…。
護身ですか。
ひょっとして剣道の他にも何か?
(可奈子)ええ。
合気道を少々。
軟弱な男などあなたの足元にも及ばないな。
なあ矢吹。
あはは…。
私の哲学なんです。
哲学?ええ。
私女性だからって男性に負けるのは納得できません。
仕掛けられたらはね返すだけの力をつけておきたい。
それだけです。
ではお先に。
あんなきれいな顔して剣道と合気道だなんてまいるなぁ。
そうだな。
それにしても矢吹お前には気迫ってものがまるっきりないな。
警部何か僕にきつく当たってません?もう少し手加減してくれたっていいじゃありません…。
胴!うわっと!もっ…もう〜!
警視庁の中で新聞記者を始め部外者の立ち入りが厳しく制限されている部屋がある
(秋山係長)クンペイさん。
(長沢刑事)わかった。
笹塚のヤマのタレコミですって?うん。
(男の声)「失踪した笹塚の美容師湯山信子は毛呂山の山中に埋められている」「鉄塔が建っているのが目印だ」今度のもガセじゃないだろうな?
ここ捜査一課強行犯捜査二係は迷宮入りしてしまった事件の継続捜査に当たっておりタレコミと呼ばれる密告電話や投書などにより情報がもたらされると密かに捜査を開始する
毛呂山っていうとこの辺り一体だ。
ああ…鉄塔もある。
クンペイさんどう思う?いや具体的だし乗ってみる価値はありそうな気がしますね。
もう2年もこんな寂しいとこに埋められてるとしたら一刻も早く掘り出してやりたいですしね。
よし!行こう。
しかしこの二係が捜査に乗り出した事が公になると犯人を取り逃がす危険を伴うため捜査は常に非公開
秘密裏に行動する事が原則である
ああ〜あ!また穴掘りか!
(河合刑事)自分達は強行犯捜査二係じゃなくて穴掘り二係って言われてるんですからこれがお仕事ですよ。
あっ…。
何が「あっ」だよ。
何か出たか?うわぁ〜!?出たか!?・
(河合)出ました!これが重要参考人と一致すれば…。
これからあんたの指紋が出た。
さあ話してもらおうか?おい!・
(編集長)おいおい!由香!
(江戸川由香)はい!平成のお嬢様シリーズ評判いいぞ〜!長続きするようにな。
頑張ります!行ってきます。
(カメラのシャッター音)あっもう少し目線上で。
はいそのくらいです。
笑顔お願いします。
(カメラのシャッター音)はい。
はいにっこりお願いしま〜す。
はい。
あっちょっと立っていただけます?はい。
事件解決おめでとう。
お疲れさんでした。
(一同)お疲れさまでした!乾杯。
うまい!う〜ん!ああ…。
おっ。
事件解決タバコも解禁だな?はははっ!ああ…。
普通厄介な事を抱えてる時ほどタバコを吸いたくなるのにヤマに取りかかったらいきなり禁煙だなんて。
吸いたくても吸えないでピリピリした状態に自分を追い込んだほうが頭が冴えるような気がするんだよ。
それに早く吸いたけりゃ頑張って事件を解決するしかないからな。
いや禁煙はクンペイ警部のジンクスだと思ってましたよ。
おい河合!警部は江戸川君平っていう立派な名前がある!お前がクンペイだなんて10年早ぇんだ。
そうだぞ河合。
矢吹の事も文学部なんて呼ぶなよ。
まだ5年ほど早いからな。
係長。
その文学部っていうのやめてくださいよ〜。
ホントに文学部卒だろうが。
はい。
ははは…。
(長沢)ああ〜久しぶりに早く帰れるぞ。
あっ矢吹。
今夜うちで飯食うか?ええ〜!?もうさっき6階の阿部と飯食う約束しちゃったんです〜。
ああ同期だったな君と。
ええ。
そうかそれじゃ仕方ないな。
お先。
ちょっ…けっ警部!もう〜!ただいま。
(鈴の音)今日1つ事件が解決してな。
やれやれだ。
由香!その内矢吹が来るぞ。
あいつの分も支度しといてやれ。
矢吹さんが?・
(矢吹)こんばんは〜!あら。
ほら来た。
でもお父さん何で矢吹さんが後から来るってわかったの?帰りがけにパトが追い越していったからさ。
矢吹が阿部に振られたなってなもんだ。
あはっさすが警部!独身寮に帰ってもつまらないですからね。
刑事してる人との約束は信じないって私子供の頃から身に染みて思ってたの。
正解だなそれは。
だから由香は普通の生活ができる人と結婚するんだな。
けど同じ捜査一課でも殺人犯捜査のほうがいいですよね。
現場の第一線で働けますもん。
華々しいですよ。
掘り出したガイシャの骨見て青くなってるようじゃなぁ。
警部は元殺人犯捜査のバリバリだったって聞いてますけどどうしてまた穴掘り二係に来たんですか?昔に戻りたくないんですか?ないね。
継続捜査という地道な仕事が俺の性に合ってる。
俺は嫌いじゃない。
そうか…柿の木坂タクシー運転手殺害事件の捜査本部解散か。
(阿部刑事)はあ。

(ドアの開く音)ああお呼びですか?係長。
クンペイさんまた1つお宮入りになったヤマが回ってきた。
クンペイさんと矢吹で引き継いでくれないか?わかりました。
よろしくお願いします。
お疲れさんだったね。
ご厄介かけます。
(矢吹)ガイシャは小山良一当時43歳。
職業はタクシー運転手でコンドルタクシーの渋谷営業所に勤務。
妻とは5年前に死別しています。
事件が起きたのは…。
1年前の2月12日か。
(鑑識官)左側頭部に打撲傷。
左顎に擦過傷。
殴打による外傷があります。
恐らくこの側頭部の打撲が致命傷になったと思われます。
解剖の必要がありますね。
(乃木管理官)ここにお兄さんを誰かが訪ねてきたという事は?
(柳田悦子)私達家族は母屋で兄はここで1人で住んでますから。
わかりません…。
この離れのドアの鍵は確かに閉まってたんですね?はい。
いくら声をかけても返事がなかったものですから鍵を母屋へ取りに行って私が開けて中へ入りました。
管理官。
この離れの窓入り口のドアトイレと風呂場の窓どれも内側から鍵がかかってます。
真田君。
この離れの鍵は?
(真田刑事)ガイシャのポケットに入ってました。
密室か。
(矢吹)そうなんですよね〜。
この状況じゃ密室の中で強盗に襲われ頭を殴られて死んだって事ですね。
ちょっと待て。
強盗?ええ。
強盗傷害事件として捜査しています。
捜査本部が強盗傷害とした決め手は?えっとそれは…。
財布がなかったんです。
財布がなかった…。
その時もう犯人は離れに潜んでいたんでしょうか?凶器は?見つかっていません。
犯人が持って逃げたんじゃないですか?密室から犯人がどうやって逃げたんだ?あっそれは…。
左側頭部に打撲傷。
左顎に擦過傷。
殴打による外傷がありこの側頭部の打撲が致命傷となると…。
凶器は一体何を使ったんだ?捜査本部では木製の鈍器。
例えば木刀のような物じゃないかと考えていたようです。
とにかく無事故無違反で勤務成績も良好。
ギャンブルはやらずたった1つの道楽が女遊びで街に立っているような商売女とよく遊んでいたって事で小山の女関係及び昔の知り合いを残らず当たったがついにそれらしい人物は浮かんでこなかったとあります。
木製の鈍器としか特定できない凶器で強盗にしかも密室で殺された?あっ解剖所見があります。
ガイシャの外傷は死亡時間の3〜4時間前と推定される。
行ってみよう。
ちょっ…ああ…。
1年前も刑事さんに何度もお話ししたんですけどあの夜の10時過ぎ頃…。
(悦子)お帰りなさい。
(小山良一)ああ…うっ。
あら?兄さん酔ってるの?バカ言え。
酒飲まないのは知ってるだろ。
そうよね。
あは…それより今夜はおもしろい事があった。
おもしろい事って?
(悦子)人間はどんなに変わろうと何となく誰だったかわかるもんだ。
みたいな事を言って離れの鍵を開けて入っていったんです。
(悦子)でもそれが兄を見た最後だったなんて…。
死亡推定時刻は深夜12時から午前1時までの間。
被害者が暴行を受けたのは死亡時刻より3〜4時間前の9時から10時。
そして密室の中で殺された。
あはは!またまた禁煙ですね警部。
フンッ!まあそのほうが体にいいですから。
ははっ。
(ため息)
(電話)
(田治米京子)はい見城でございます。
(佐伯ユリ子)佐伯ですけど可奈子さんいるかしら。
ちょっと出してよ。
可奈子さんはお留守です。

(藤田秘書)恐れ入りますがアポイントメントをお取りいただきませんと困ります。
どうしても社長に聞いてもらいたい話があるのよ。
ちょっとどいてよ。
本日社長は視察で出かけております。
嘘じゃないでしょうね?あのどちら様でしょうか?ご用件は?ユリ子が来たって。
佐伯ユリ子が重大な話があるから会いたいってちゃんと話を通しておいてよ。
また来るから。
いいわね?
(ノック)お帰りになりました。
(見城安文)うん。
(パトカーのサイレン)
(パトカーのサイレン)新築か。
まだ入居者もいないみたいですね。
(阿部)どうもご苦労さまです。
わざわざ声をかけてもらってどうも。
いえ。
こちらです。
被害者は佐伯ユリ子37歳。
新宿でスナックを経営してます。
死亡推定時刻は昨夜の8時から10時の間です。
凶器は?クリスタルの灰皿です。
ホトケさんが発見された501号室はまだ引っ越してくる前だったので家具などは何も入ってなかったんですが灰皿は管理人が佐伯ユリ子に貸したものでした。
どうしてそんな空き部屋にいたんですか?501号室は佐伯ユリ子が借りたんです。
近々引っ越してくる予定だったそうです。
おい。
よく現場を見ろ。
何か気づいた事はないか?はい。
(矢吹)何なんだこれは?血が黄色くなってます。
ここ以外は赤い血が流れてるのにここだけ。
警部ほら。
おい行くぞ。
人間の血が黄色いなんてどういう事だ?殺しの一線で働きたいんならもう少し勉強しろ。
はあ?結論から言うとあれは誰かが飛び散った血痕を踏んだんだ。
何者かが流れ出した血液を踏んでしまった場合一定の条件が当てはまると赤いはずの血が黄色くなるという現象が起こる。
えっ?そうなんですか?とにかくあの黄色い血は捜査の重要な手がかりだ。
それに新築マンションの一室という状況から考えて顔見知りの線も濃厚だな。
まあそのぐらいは。
えっ?なるほどね…。
じゃ…。
はい。
ああ!クンペイさん!現場を見ましたか?見せていただきました。
死体の発見時の状況が問題になりますね。
発見者の管理人は部屋の中には入っていない。
するとガイシャの頭の辺りを歩いたのは現場に戻ってきた犯人である可能性が高いとなると…。
犯人が戻ってきた時間は殺害後約1時間30分前後。
そんなところですか?恐らくね。
あの〜どうして1時間30分なんですか?血液は流出してから1時間30分前後が過ぎるとたまった血液が沈殿して下は血餅上は血清という状態になる。
その状態のものを踏めば表面の黄色い液体である血清が飛び散ってこのような筒状の黄色い血痕ができる。
(乃木)これが黄色い血のからくりだ。
あっ…。
あの部屋で鑑識が見つけたものです。
赤い…糸ですか?そう。
犯人の重要な手がかりになるかもしれない。
いや〜人が住んでいない新築だったという事が幸いしましたよ。
あの我々はこの事件と継続捜査中の小山良一の事件に関連性があるという事で呼んでいただいたんですが…。
それなんだがねこのホトケさんと小山良一は14年前同じ家の使用人だったらしいんだ。
小山と佐伯ユリ子が?14年前の2月24日4時頃世田谷区成城にある城電社社長見城洋文氏の自宅に押し入った男が社長夫人の見城摩耶子さんに見つかり同人を殴りつけ同人は居間の暖炉に頭部を打ちつけ頭蓋陥没と脳挫傷で死亡した事件です。
(秋山)そうか…そんなヤマがあったなぁ。
宮入りの宮入りになったやつだ。
ええ。
私の担当ではなかったんですが思い出しまして。
被害額は夫人のハンドバッグに入っていた30万円。
まあこそ泥が居直り強盗になったって事でしょうけどしかし30万円で人を殺すなんて割に合わないですよね。
庭を逃げていく犯人の姿を娘の可奈子が目撃していますが残念ながら後姿しか見ていない。
その頃小山良一は社長のお抱え運転手。
佐伯ユリ子はお手伝いとして見城家の使用人だった。
クンペイさんは小山良一佐伯ユリ子のヤマとこの14年前のヤマと何か関わりがあると見てるのかね。
当時使用人だった2人も取り調べを受けてますが小山にはアリバイがありユリ子にも決定的な証拠がなかった。
捜査の結果犯人は左利きの可能性が高い。
その1か月後洋文も城電社社長室で急死。
これは心臓発作となっています。
第一発見者は社長秘書の田治米京子。
城電社の後任社長には洋文の実弟の見城安文が就任。
これが14年前の事件の全容です。
14年前という事はこのヤマあと1年で時効だな。
ええ…。
しかしその事件と今度の小山の事件につながりなんてあるんですかね?
(チャイム)
(京子)「はい」先ほどお電話いたしました月刊ヴォイスの江戸川と申しますが。
「あっ承っております。
どうぞ」・
(門が開く音)
(京子)カメラマン&ライターですか。
すると編集部の方でなくてフリーという事?はい。
フリーですけどこの平成のお嬢様企画は私に任されてますんで。
そう。
はい。
この家の財産管理を始め見城家の事はすべて私がみています。
ですからあなたの取材は許可しましたがあなたがお撮りになった写真お書きになった原稿はすべて私がチェックしますからあらかじめ提出してください。
わかりました。
(野崎幸代)いらっしゃいませ。
野崎さん可奈子さんは?あっただ今こちらへ。
今日から取材をさせていただきます江戸川です。
よろしくお願いします。
京子さん。
こちらのお話お断りできないかしら?やはり気が進まないの。
あの…。
いいですか?可奈子さんはただでさえ人とのお付き合いが苦手なんですからこういう事が縁でいい結婚相手が見つかるかもしれないでしょ?すべては私の指示どおりに従っていただきます。
江戸川さん本日の取材はこれから2時間です。
時間厳守でよろしく。
よろしくお願いします。
どうぞいつもどおり気楽になさっててください。
大きなワンちゃんですね。
用心のためですわ。
ここは執事の方と2人だけで?ええ。
この広いお屋敷にお2人じゃ寂しくないですか?別に…。
可奈子さんはショッピングとかよくなさるんですか?外出は好きじゃありません。
でもたまにはお友達と食事に行ったりなさるでしょ?友達はおりません。
ではうちではいつもどんな事を?本を読んだり音楽を聴いたりして過ごしてます。
どんな本がお好き?本なら何でも。
人と話す事より活字を追ってるほうが心が落ち着きます。
はあ…。
じゃあすいません。
目線こちらいただけますか?じゃああの目線を池のほうにお願いします。
(カメラのシャッター音)お話しした取材の件本日から始まりました。
月刊ヴォイスの編集部から出版社の契約カメラマンの若い女性が1名まいっております。
若い女か…まあいい。
とにかく可奈子から目を離さないでくれ。
うんそれじゃ。

(ノック)はい。
社長ただいま警察の方が見えておりますがいかがいたしましょうか?警察?この2人14年前に成城の見城家で働いていたんですが。
いや兄の家にいたのはたぶんこの2人だと思うんですが…。
何しろ…一昔前の事ですからね。
その時私が彼らに退職金を払って暇を出したのが最後なんですから。
以後お会いになった事は?いやありません。
小山と14年前の事件について何か覚えてらっしゃるような事はありませんか?当時私はまったく畑違いの仕事をしてましたからね。
住まいも横浜でしたし。
義姉が亡くなってから続いて兄も急死しまして…。
まあそれで急きょ呼び戻されたっていう状況で。
そうですか。
あっ見城可奈子さんを引き取って育てられたそうですね?ええ。
可奈子は私にとってたった一人の姪ですからね。
今も可奈子さんとご一緒にお暮らしですか?いや3年前に大学卒業と同時に可奈子は元の成城の家に戻りました。
はあ…じゃあお一人暮らしを。
いや。
田治米君という女性に一緒に住んでもらってます。
田治米さん…ああ!前社長の秘書をなさっていた田治米京子さんですか?えっええ…。
急死した社長の第一発見者でしたよね?確か。
ええ…まあ…。
可奈子さんの財産管理を任せるとは余程信用なさってるんですね。
いや…彼女には可奈子の父親の秘書から引き続いて私の秘書もやってもらってましたから。
まあ適任だと判断した訳です。
ああ…あなたの秘書もなさってたんですか。
ああそうそう。
あなた小山良一とか佐伯ユリ子って名前に聞き覚えはありませんか?佐伯…。
ご存知なんですね?佐伯ユリ子。
あの困ります。
私…。
いやいや決してご迷惑かけませんから。
アポなしで突然お見えになった方が確か佐伯ユリ子とおっしゃいました。
社長に会いにきたの?はい。
どんな用件で?話したい事があるとおっしゃって。
でも社長には会わずにお引き取りいただきましたのでそれ以上は。
それいつ頃の事ですか?先週の…そう金曜日でした。
失礼します。
金曜っていったら警部。
ああ…。
ユリ子が殺害される2日前だ。
あっ。
あっこんにちは。
お邪魔しまーす。
(石丸技官)あれ!?何か頼まれてましたっけ?いやちょっと今日のマンションの殺し。
あれの遺留品の事が気になったもんですから。
わざわざ出張って来るとこ見るとこれクンペイさんの抱えてるヤマと関係あるんだ?ええちょっと。
現場で採取された靴跡の一部はどうやらスニーカーらしいね。
つま先に傷がありますね。
履いてるうちにできた傷でしょう。
(石丸)恐らく犯人のものと断定していいでしょう。
ああそれからあの赤い糸…。
あっあれも今分析中です。
まあ言える事はあの糸は衣類の繊維などとは異質なものだって事ですかね。
そうですか…。
へえそんなに美人なの?そのお嬢様。
うん。
上品でおっとりしてて。
君がそう言うんじゃよっぽど上品なんだねぇ。
どういう意味ですか?はははっ!でもね生活は恵まれてるのに人に心を開かない不思議なとこのある人なんだよね。
金が満ち足りてるからって心まで満ち足りてるとは限らないもんなぁ。
おおさすが文学部卒の刑事さんは言う事が違いますね〜!はっよせよ君まで!いいだろ?俺はサラリーマンにも教師にもなりたくなかったんだから。
でも穴掘り二係も嫌なんでしょ?殺人強盗放火…強行犯の担当のほうへ行きたい。
あっちはとにかく現場の最前線だ。
怖そうなとこに行きたいのねぇ。
久しぶりね。
こうやって2人きりで会うの。
ふふっ。
ねえ君の親父さん何か感づいてるんじゃないかなぁ。
感づいてるって?俺達の事。
近頃剣道の稽古の時目の敵みたいに打ち込まれるんだよ。
という事はお父さんは私達の恋愛関係が気に入らないって事か。
仕事ではあの冴えてる人が娘の事となるとやっぱりただの父親か。
母が亡くなってからこっち親一人子一人。
ずっと2人きりできたからね。
親一人子一人か…。
(ため息)帰宅が午後10時過ぎ。
死亡推定時刻は深夜12時から1時。
暴行を受けたのが午後9時から10時。
今夜はおもしろい事があった。
う〜ん外出先でおもしろい事…。
ああ…。
お前年取らなくていいなぁ。
ただいま。
あっおかえり。
遅かったじゃないか。
うんちょっとね。
あれ仕事?いや終わりだ。
ビール飲もうかな。
あっじゃあ何か支度する。
待ってて。
今まで仕事か?うん帰りにねちょっと飲んできた。
ふーん。
お腹は?もう食ってきた。
矢吹の奴誘おうと思ったんだけどあいつそこらにいなくてさ。
お父さんあのね…。
俺のせいだよなぁ。
忙しい忙しいと駆けずり回ってる俺に心配かけまいとして母さん自分の体の具合の悪いのを隠して結局手遅れにさせてしまった。
ああ。
由香だってそうだ。
由香の小学校の運動会一度も行ってやれなかった。
警察官の女房や子供にはなるもんじゃないな…。
でもね運動会や遠足の朝私が起きてくるとそこの窓の軒下にてるてる坊主が下がってた。
お母さんがほらまたお父さん作ってくれたわよって。
夜遅く帰ってきたお父さんが私のためにてるてる坊主作ってくれたんだよね。
3月16日宝石商絞殺事件の時効がこの日だ。
あと1か月になった。
ホシが東京に舞い戻ってる事は確認されてる。
奴の立ち回りそうなところを1つ1つ潰していきたい。
この広い東京で容易な事ではないが最後の1か月みんな頑張ってほしい。
ガンという事ですか!?ガン。
はい。
お気の毒ですがもう…。
あとどのくらい?そうですね…まず1か月ですか。
先生あとは本人の望むようにしてやってください。
お願いします。
あと1か月…1か月…。

(桐山課長)1か月の休暇!?宝石商絞殺事件の時効があと1か月。
最後の追い込みの大事な時期だという事はよくわかっています。
それがわかっていてなぜ!?休暇の後の事につきましてはどこに異動になろうとも課長にお任せします。
あの時お母さんたらね…。
うん?お母さん私に言ったの。
お父さんは大した事ないのにそそっかしいわねって。
お母さん笑ってたけど涙いっぱいためてた。
お母さんホントは嬉しかった。
幸せだったんだね。
だから私も相手が警察官であろうとなかろうとお父さんとお母さんみたいな結婚がしたいって思ってるの。
うん…。
私も飲もうかな!
(カメラのシャッター音)今私が取材してる見城可奈子さん美人でしょ〜!《見城可奈子!?彼女が?》
(可奈子)やあ!
(カメラのシャッター音)《これがあの時11歳だった少女か…》《しかしこの凄まじい気迫は何だ?》あの刑事さんがお父様?うん。
刑事っていうのも大変な職業でね。
父は仕事仕事でいつもいないでしょ。
だからうちはまるで母子家庭みたいだった。
でもその母も私が15の時に亡くなったんだけど。
私の母も14年前に亡くなったの。
私が11の時。
私もいつも母と2人だった。
そう…可奈子さんも。
小学校の運動会に来てくれたのも母。
夏休みの宿題手伝ってくれたのも母。
ショッピングも食事に行くのもいつも母と2人で…。
私もそう。
でも私どうって事なかったな。
私ねお母さんが自慢だったの。
由香ちゃんのお母さんきれいねって友達に言われるの嬉しくて。
それに比べてお父さんはいかにも刑事って感じでしょ?たまにね3人で歩くと母が必ず父に言うの。
そんな悪い目つきして歩かないでって。
ふふっ。
私もよ。
私も母が自慢だったわ。
父は仕事が忙しくて3人で写真を撮る暇もなかったの。
きれいなお母様ね。
この写真を見たらうちの母がきれいだなんて恥ずかしくなっちゃう。
誰だって自分の母親が一番に決まってるじゃないの!恥ずかしいだなんて由香さんのお母様に失礼よ。
そうね。
前言撤回ね。
可奈子さんてとても真っ直ぐな人なのね。
それにとってもやさしい。

(安文)可奈子。
今日おそばだよ。
叔父ですの。
(京子)可奈子さんのお父様の弟さんで城電社の社長をなさっている見城安文様です。
初めまして。
月刊ヴォイスの江戸川と申します。
この度は可奈子さんにご面倒なお願いをいたしまして。
うまいそばご馳走しますから食べていってください。
ありがとうございます。
でも父が待ってますんで私は…。
あらせっかく社長が誘ってくださってるのに失礼でしょ。
そば打ちは叔父の趣味なのよ。
おかしいでしょ?玄関までお送りするわ。
どうぞ。
可奈子さん!あの2人仲間なのよ。
えっ…?見苦しいわねごめんなさい。
田治米さんはどうしてあなたに高飛車なの?可奈子さんに命令するような口のきき方をするのは可奈子さんの叔父様の恋人だから?今日はお疲れさまでした。
ごきげんよう。
ごめんなさい。
じゃあまたご連絡します。
お疲れさまでした。
矢吹さんの言ったとおりだわ。
お金が満ち足りてるからって心まで満ち足りてるとは限らないって。
あの彼女の事?うん…。
複雑みたいいろいろ。
ふーん…。
そうなんだ…。
あの打ち込んでくる気迫はちょっと普通じゃない。
男を打ちのめすのが快感だったりして。
ははは!お前それでよく文学部に入ったな。
単純な奴だ。
ちょっと何よその言い方!?失礼でしょ!由香ちゃんいいって!由香ちゃん…?だってお父さんの今の言い方ねぇ…!由香!何!?今日の道場での撮影許可きちんと取ったんだろうな!?それは僕が話をつけました。
あの署にも同期がいますから。
ちょちょいっと。
公私混同するんじゃない!必要な手続きはちゃんとしろ!まったくチャランポランなんだから。
お父さん!お父さんが今頭の中で事件の事整理しようとしてモヤモヤしてんのわかるわよ。
だけど矢吹さんに当たんのやめてくんない?警部すいません。
謝る事ないわよ!お前の撮影許可の話だろ!よし事件を初めからふりだしに戻そう。
おぼろげに覚えてる程度ですわ。
話をした事もありませんし。
道場での稽古着姿とまったく雰囲気が違うんでちょっと驚きました。
ああ。
由香さんのお父様でしたのね。
娘がお世話になってます。
早速ですが14年前こちらで働いていた小山良一と佐伯ユリ子に覚えありませんか?ああ…2〜3日前も別の刑事さん達が写真を持ってお見えになりましたけど当時私は11でしたし顔もあまり覚えておりません。
14年前からこっちこの2人と顔を会わせた事は?ございません。
手紙とか電話はいかがですか?いいえまったく。
そうですか…。
以前あなたの哲学というものを伺いましたね。
女性だからって男性に負けるのは納得できない。
だから護身のために剣道をやってる。
ああそう。
確か合気道もでしたね?はい。
女性の体力と腕力が男性に勝てないのは不合理だと考えています。
敵が何人もいて命を狙われてるんじゃないでしょ。
あはっまさか。
はははっ!軟弱な男だったらあなたの足元にも及ばないでしょう。
軟弱でない男性も大勢いるはずですわ。
ですから油断はできません。

(京子)今警察が来ています。
14年前にこの家にいた運転手とお手伝いさんの事調べてるようです。
こっちにも来たよ。
1年前の小山の事件を捜査してるらしい。
まったく知らないとも言えませんので適当に答えておきました。
ああそれでいい。
けど大丈夫でしょうか?もしあの事が…。
警部何気にしてるんですか?女性が護身のために武道習うのはおかしいですか?道場でもそうだったがさっきもあの娘から闘志か気迫のようなものを感じた。
彼女がどうしてそこまで身を守る事にこだわるかって事が俺はどうも引っかかるんだ。
そうですかねぇ?僕は彼女から何も感じなかったですけどね。
あっ昨日あなたのお父様が見えたわ。
父が?ええ。
14年前うちで働いてた人達が殺されたんですって。
14年前の事は思い出したくない。
母が亡くなったって言ったでしょ?母は強盗に殺されたの。
えっ?
(可奈子)私の目の前で…。
ショックだった…。
それから1か月後父も心臓発作で亡くなって。
私が身を守るために剣道や合気道を始めた理由はこれでおわかり?これは書いてくださって結構よ。
やあその節は。
あら刑事さん。
1つどうです?おいしい!すみませんね。
ああいえいえ…。
あっそれよりちょっとこれ見てくれます?これが小山良一こっちが佐伯ユリ子と言います。
佐伯ユリ子って…あっこの人なの?ああ…殺されたんでしょ?新聞で見ておや?って思ったのよね。
ほう。
あっこの人かどうかわからないけど同じ名前の人からお嬢様に何度か電話かかってきてたから。
それで?京子さんがうるさいから!もう私は取り次いだらさっさと引っ込む事にしてんの。
可奈子さんにユリ子から…。
あの夜の兄の事ですか?ええ。
実は私もあれから何度も思い返してみたんです。
それより今夜はおもしろい事があった。
(悦子)おもしろい事って?人間って奴はどんなに変わろうとなんとなく誰だったかわかるもんだなぁ。
面影がちゃんと残ってるんだ。
ちょっと待ってください!面影がちゃんと残ってる…。
そう言ったんですか?間違いないですか?ええ。
事件の時は動転していて頭が真っ白だったんですけど落ち着いて思い出してみると確かに兄はそう言ったんです。
面影がちゃんと残ってる…。
事件のあった日の夜9時頃小山と同じ会社のタクシー運転手が駐車している小山の車を見かけたのが世田谷区砧8丁目。
ここだ。
その運転手は見覚えのある小山の車が進行方向の道路脇に駐車しているのに気づいたがその停まり方が乱暴というか不自然に見えたので気になって徐行しのぞいてみた。
すると小山が運転席のシートにもたれて眠っていた。
運転手は日頃眠くなるとまず仮眠を取るものだし客を乗せていた事もあってそのまま通り過ぎたという事だ。
だが結局この証言も小山と犯人の接点には結びつかないままだった。
同僚が小山を見たのが9時。
暴行を受けた時間が9時から10時。
また微妙な時に寝ていたもんですねぇ。
眠っていたんじゃなくて死んでいたんなら話は簡単なんですけどねぇ。
死んでいた!?すいません…。
死んでいた…。
冗談です!そうか!小山はその時すでに暴行を受けていたんだ。
そしてここで数分を経た後帰宅して自分で内鍵をかけた後容体が急変して死亡した。
密室の謎はそれで解ける。
矢吹お前が言うように同僚の運転手が車の中の小山を見かけた時彼はすでに死んでいた。
いや正しくは昏睡状態だった。
えっ!?けど警部。
密室の謎が解けてもやっぱり変ですよ。
だって小山は家に帰った時妹と会ってるんですよ?強盗に財布を盗られてひどい目に遭わされたんならその事を妹に言うはずでしょう。
なのに小山は今夜おもしろい事があったなんて言ってるんです。
ルシッドインターバルだよ。
えっ?ルッルシッド…何ですか?ルシッドインターバル。
昔二係に来てすぐ講義を受けた事があるんだ。
(山本講師)ある人物が鈍器のようのもので頭部を殴打されその結果小脳表面全域にクモ膜下出血。
後頭蓋窩一帯に硬膜下血腫を起こし血の塊であるこの硬膜下血腫によって脳を圧迫されると脳震盪を起こして昏睡状態になる。
しかしこのまま死に至らずに数分後に意識を取り戻す事もあってこの意識回復をルシッドインターバルと言う。
わかるか?いえよく…。
いや俺も詳しい事はわからんがこれを小山のケースに当てはめてみると小山は夜の9時頃何者かに木刀のような鈍器で頭部に暴行を受け…。
その後脳に起こった障害で一時昏睡状態になる。
しかしそのまま死には至らないで数分後意識を取り戻す。
そして家に帰り自分で鍵をかけ深夜に死亡した。
なるほど。
ああそれからルシッドインターバルという意識回復は暴行を受けた時からの記憶を喪失する事が多いそうだ。
それで犯人の顔も暴行を受けた事も覚えていなかったって事ですか。
ああ…とんでもない事があるんですねぇ。
あれ?ここ見城家じゃないですか?見城家がこんな近くにあったのか。
じゃあお父さんは可奈子さんがその小山って人殺したっていうの!?あの人が何で小山を殺すんですか?事件当夜10時過ぎに帰宅した小山は妹の悦子に人間って奴はどんなに変わっても誰だったかわかるもんだなぁ。
面影がちゃんと残ってるそう言ったそうだ。
面影が残ってるそこが問題だ。
小山のその言葉は当時11歳だった見城可奈子を14年ぶりに見かけたって事に当てはまるんじゃないか?解剖所見によると凶器は木製の鈍器。
例えば木刀のようなものだ。
可奈子は剣道3段。
木刀を使わせれば撲殺も可能だ。
でも捜査本部は…。
捜査本部が強盗傷害とした決め手は何だ?小山の財布がなくなっていた事。
今夜おもしろい事があったという最後の言葉から恐らくなじみの女か顔見知りに会ったと見てその相手。
単独かあるいは複数の人間とトラブルを起こしたのではないかという事です。
そこだよ。
つまり捜査本部は被害者の昔の知り合いのよる強盗傷害致死の線にこだわりすぎたんじゃないか?強盗に襲われたという根拠は暴行を受けている。
財布がなくなっている。
この2点だ。
そこから捜査は迷路に入り込んでしまった。
殴る蹴るの暴行を受けたり転倒したりした時には財布がポケットから飛び出す可能性は大きいし落ちている財布を拾って届け出る人間ばかりじゃない。
犯行の動機が違えば犯人の姿が見えなくなる。
じゃあ可奈子さんが犯人だとしたらその人を殺した動機は何よ?動機はわからない。
彼女まだ小学生の頃目の前でお母さんを殺されたのよ?どんなにショックだったか…。
そういう思いをしてきた人が人を殴り殺しただなんてあんまりよ!ひどい…。
僕もちょっと突飛すぎる気がします。
そういう決めつけは横暴すぎるわ。
それは警部の勘だけですよ。
安文と京子の線を追っていけば何か出てくるような気がするんだ。
安文って可奈子さんの叔父さんの?あの2人の間にはきっと何かある。
あの2人は男と女の関係よ。
私2人が抱き合ってるの見たもん。
えっ!?そうか…。
1年前の2月12日…ええ…あった!この日の買い物は卵とそば粉と鯛のお頭付き?あっ思い出した!この日は足をくじいたお嬢様の快気祝いの日だわ。
それで社長も見えてそばを打ったのよ。
この日社長がここに来ていた?そうそう。
そばを打ったって?結構重いのよ。
そこに入ってるわ。
すいません。
ねえ前の社長の秘書の京子さんと今の社長が会社乗っ取ったって噂あれ案外ホントかもしれないわよね。
事件当夜小山は世田谷を走っていて安文に会ったのかもしれません。
あの夜安文は見城家に来ていました。
安文はなぜ愛人である京子を見城家に入れたのか?しかも佐伯ユリ子が殺害される2日前自分に会いに会社に来ている事を隠していた。
さらに心臓発作を起こした前社長を見つけたのは京子です。
あの2人は会社を乗っ取ったという噂もあるようです。
財産が絡んだ何らかの事で元使用人の小山と佐伯ユリ子がゆすっていたと考えても筋の通らない事じゃありません。
筋も大事だがな矢吹俺は日頃から誰かがポロリともらした言葉の中に真実をつくものがあると思ってる。
それを見落とさないのが俺達刑事の仕事なんじゃないか。
加害者も被害者も人間なんだよ。
どういう事です?小山が最後に残した面影がちゃんと残ってる。
俺はその言葉がどうも気になるんだ。
面影が残ってる…。
安文の事なら面影という言葉は出てこないだろう。
妹の勘違いじゃないですか?可奈子さん無理ですよ。
だってあの頃彼女足をくじいていたそうです。
足をくじいた!?やあ。
あら!これだけ大きい犬だと力が強いから引っ張られて散歩も大変でしょ?ええ。
1年前に足をくじかれたとか。
やはり犬の散歩で?いいえ。
合気道の稽古で左足の筋を痛めたんです。
かなりひどくて2か月近くも渋谷の東洋医学鍼灸院に通いました。
そうでしたか。
あああなた木刀はお持ちですか?いえ木刀は使いません。
持っているのは竹刀です。
ああそうですよね。
剣道の稽古で木刀なんか使ったらケガ人続出だ。
ははっ。
あの日見城さんがお帰りになったのは8時を少し回った頃です。
その日に快気祝いをしたらしいんですが足は完治したんですか?いえ。
ただ松葉杖が外れたっていう事じゃないかしら?見城さんは松葉杖をついていたんですか?はい。
私可奈子さんがかわいそうで仕方ないの。
子供の頃受けた心の傷が深すぎて人間嫌いみたいなところもあるけど根はやさしい人なのよ。
まあ僕なりにやってみるから…。
ああ…。
お邪魔しています。
うん…。
飲んできたんだお父さん。
お茶漬けでも食べる?いらない。
もうすねてないでこっちに来て飲めば。
ついさっきまで待ってたんだけどお父さんいつ帰ってくるかわかんないから先に食べようとしたのよ。
ごめんね。
何とか言ってよお父さん。
なぜ見城可奈子があんな事をしたのかそれを考えてるんだ。
静かにしてくれ。
あくまでもお父さんは可奈子さんの事容疑者扱いする気なのね。
それならこっちにも考えがあります。
ねっ!うん。
警部あの…。
小山と佐伯ユリ子を殺ったのはおそらく同一犯。
2つの事件は14年前の何かでつながってるはずだ。
あっそっとねそっと。
ちょっと待ってああ父さん。
足をこっちにやってと。
ちょっとひねってるよほら。
ああもう何なのこれは!しかし警部がこんなになるまで飲むなんて珍しいな。
私達に仲間はずれにされたと思って意地張ってんのよ。
ほらお父さん上着脱いでしわになるでしょう。
ほら。
松葉杖…松葉杖。
あの娘はもう松葉杖始末したんだろうかな。
何言ってんのよ。
松葉杖って何の事?彼女松葉杖を使っていた。
どういう意味?凶器は木製木刀のようなもの。
何言ってるのよ2人共?いい。
私明日最後の撮影に行くから可奈子さんに直接訊いてみる。
危険だよそれは!それに警部が確信をつかんだんなら余計な事をして捜査の邪魔をしないでくれ。
あら…。
あなたも刑事だっていう事がよくわかったわ。
もういい。
ああちょっと由香ちゃん。
ほらお父さん上着脱いで。
お父さん何でこんなに飲んだんだろう?可奈子さんの事でやりきれなかったんだとしたら…。
だとしたら…。
(石丸)あの赤い糸に似たものがこれだけあってこの中から染料素材形状外観の酷似したものが現在3本に絞られたところです。
こちらへ。
でこの中の1本が秋田地方のものと関係があるらしいんです。
これは?あっちょっと。
秋田県本荘市御殿まり。
御殿まり?「昭和49年制作。
秋田県本荘市御殿まり金賞受賞」御殿まり…。
はあ?あっ帰ってきたから待って。
ちょっと警部。
もしもし。
「お父さん。
私ちょっと出かけてきます」「今日帰らないけど心配しないで」どこ行くんだ?「可奈子さんと秋田に」「可奈子さんのお父さんのお墓参り。
じゃあね」おいっ由香!
(電話の不通音)警部何か?警部ちょっと!秋田の本荘へ?
(京子)はい。
可奈子さんの母方の菩提寺が本荘にあるんです。
可奈子さんのご両親の墓は東京にあるのになぜか可奈子さんは毎年本荘にお墓参りにでかけるんです。
可奈子の様子がおかしいってどういう…。
ああ…。
今までありがとうって。
私に一度も心を開かなかった可奈子さんがありがとうって言って本荘へ出かけて行ったんです。
安文社長と私が会社と見城家を乗っ取ったと陰口を聞かれている事は知っていました。
でも傾きかけた会社を引き継いでそれを立て直す事に必死だった彼を私…愛していたんです。
この人の力になりたくてこの家に入ったんです。
可奈子には若い娘の普通の幸せを味わわせてやりたい。
そう思ってました。
可奈子に何が起こってるのか不安で…。
可奈子さんの足をケガした時に使った松葉杖まだありますか?いえ可奈子さんが裏の焼却炉で燃やしているのを見ましたけどあの…。
警部!
(矢吹)警部この傷…。
鑑識に回してくれ。
はい。
結局私達はあの娘の何の力にもなってやれなかったようだな。
どうぞよろしくお願いします。
小山良一佐伯ユリ子事件に可奈子が絡んでいる事は明白だが問題は現場に残されていた1本の赤い糸がどう可奈子に結びつくかだ。
ええ。
可奈子さんの母親の旧姓は室山室山摩耶子。
矢吹は室山家の菩提寺を当たってくれ。
俺は御殿まりの事を調べる。
了解。
ごめんください。
いやぁきれいなもんですね。
(佐々木トキ子)今は道楽するとだ。
ああこれ昭和49年にあなたがお作りになった物です。
コンクールで金賞を取った…。
ああ…。
室山家ご存知ですよね?おら昔室山家さ奉公に上がってたんだども。
これと同じ物を室山摩耶子さんが持っていたかどうか知りたいんです。
どうです?金賞をもらった年だわ。
摩耶子お嬢さんが可奈子のために1つ作ってけれって言われてこれと同じ物を納めさせてもらいましたなぁ。
可奈子嬢ちゃんの3歳の祝いになぁ。
《そうか…昭和49年は七五三の3歳だったのか…》室山…。
可奈子さんのお父さんのお墓参りじゃなかったの?そうよ。
見城可奈子さんが冬になるといつもお参りに来るのはこのお墓です。
室山旭日…。
誰ですか?この人。
摩耶子さんの弟さんです。
可奈子さんの叔父さんか。
3歳の祝いか…。
さっきのお墓に眠ってるのは叔父なの。
母と血のつながらない弟。
旭日叔父さんは母を愛して一生結婚はしなかった。
室山家は江戸時代から続いた酒造りの家だったんだけど祖父と祖母が相次いで亡くなってからは傾いてしまったの。
だから親戚の人達は資産家である見城家との縁組を母に強要した。
そして莫大な借金を抱えた室山家のために母は父と結婚した。
由香さん好きな人いる?うん。
でもね父は反対みたい。
どうして?刑事だからその人も。
自分も刑事のくせにね。
由香さんには苦労させたくないんじゃないかしら。
大変なお仕事だもの。
そうね…。
お父さん。
きっといらっしゃると思ってました。
お父さんもう少し可奈子さんと歩いていい?ああ。
可奈子さんのお母さんと旭日叔父さんはどうなったの?家のために母は父のもとに嫁ぎ叔父は大阪の食品会社に就職したわ。
その叔父が東京支店長になって上京して来たのが母と叔父との再会のきっかけだったの。
それが14年前。
私が11の時。
14年前というとあなたのお母さんが亡くなった年ですね?はい…。
(可奈子)旭日叔父さんの事私も大好きだった。
叔父さんのそばにいると心がのびのびとしたの。
私あんなに嬉しそうに笑ってる母を見るのは初めてだった。
(見城洋文)娘を利用してデートとは恐れ入ったな!いつ頃から旭日との関係を復活させていたんだ?
(見城摩耶子)関係なんて…旭日は私の弟です。
旭日は…お前の親がどうしても男の子が欲しくてもらった養子だ!血はつながっていなくても弟は弟です。
弟と食事をして何が悪いんですか?ならどうして旭日は結婚しない!?お前は俺と結婚してから俺に一度も心を開かない。
笑顔ひとつ見せようとしない。
お前の心の中にはいつも旭日がいる。
お前は…!お父さんやめて!
(可奈子)父の前であまりに無力な自分が悲しかった。
母を助けてあげられない自分が悔しかった。
男の暴力…。
暴力を振るう左手に私は憎しみを募らせていったんです。
(可奈子)どんなに父に殴られても母は叔父との会食をやめようとはしなかった。
母と叔父とはどうしても会わずにはいられなかったんですね。
いってらっしゃいませ。
奥様お送りいたしましょう。
結構よ。
タクシーを拾うから。
(可奈子)母が叔父を叔父が母をどんなに愛していたか私にも後になってよくわかりました。
恐ろしい事が起きたのはそれから間もなくでした。
叔父はすべての責任は僕にある。
僕がいなければ波風は立たない。
姉さんと可奈ちゃん不幸にしたくないという手紙を残して故郷の秋田で自殺したんです。
摩耶子お前…。
旭日の後を追うつもりか!?行かせないぞ!摩耶子…。
おい!摩耶子。
摩耶子!
(可奈子)父は強盗が家に入って母を突き飛ばした。
そういう事にしようと私に言いました。
倒れている母を目の前にして11の私の頭では自分で判断する事などできなかった。
私は嘘をつきました。
2階の部屋でテレビを見ていたら母の悲鳴が聞こえ窓からのぞいたら男の人が庭を走っていくのが見えました。
そう言ったんです。
お手伝いの佐伯ユリ子はその事件が何かおかしいと気づいた。
はい。
小山もその事をユリ子から聞いて知っていた。
あなたと小山は1年前のあの日どうやって会ったんですか?あの日渋谷の鍼灸院から帰って来ると…。

(車の音)やっぱりお嬢さんだ!14年前も美少女だったけど本当に美しくなりましたね。
小山ですよ。
昔この家で運転手をしていた小山良一ですよ。
ああ…。
ちょっと付き合ってくださいよ。
僕は世間に聞こえてはまずい可奈子さんの弱みを知ってるんですよ。
(可奈子)その時小山は私が最も憎んでいる左手を使ったんです。
父が母を殴りつけていた左手…。
あっああ…。
あなたに殺意はなかったろうと私は初めから思っていました。
しかし佐伯ユリ子の場合は違った。
殺害現場に赤い糸が落ちていたんです。
あなたの3歳の祝いに摩耶子さんが作らせた本荘の御殿まり。
落ちていた赤い糸とそのまりが一致しました。
いつもそうやって?はい。
母の形見ですから。
殺人というのは予想以上に激しい行動を伴います。
あなたもバッグを投げ出さずにはいられなかった。
ああ…。
あなたはそれに気づかず夢中で逃走した。
そして世田谷の自宅に着いた頃それに気づき現場にとって返した。
流れ出した血液の貯留沈殿は流血後約1時間30分の経過を要する。
その貯留沈殿した血液を踏めば表面の血清の部分が飛散して黄色い血を作る。
あなたは自分が踏んだ事で黄色い血を作った事に気づかず遺留品のまりを回収した。
まりはあなたの手に戻った。
しかし黄色い血とそのまりのふさから赤い絹糸が1本遺留品として現場に残ったんです。
バチが当たったんですね…。
あなたは佐伯ユリ子には殺意を持った。
なぜです?なぜ殺さなければならなかったんです!?
(ユリ子)昔あんたの母親が男に会いに行く度に社長は怒って殴りつけてたじゃない。
私いつか何か起こると思ってた。
そしたらあの強盗事件よ。
強盗に突き飛ばされて奥様は暖炉の角に頭をぶつけて死んだですって?私全然信じてないのよね。
(可奈子)そんな昔話をするために私を呼び出したんですか?そうよ。
社長はあの時私にお金をくれたのよ。
何もなくてあんな大金くれる訳ないでしょ?お金なんですねやっぱり。
そう!でもね私だって今までずっと黙ってきたわよ。
けど今もう本当にどうしようもないのよ!バーテンに有り金すっかり持ち逃げされちまって。
店を潰さないためにはこの秘密で何とかするしかないのよ。
1年前の小山の事件の時もピンときたわ。
私小山を殺したのはあんただと思ってる。
例の秘密について私達相談した事があるんだもの。
この2つそういう疑いがあるって事だけでも警察に持ち込む価値があるんじゃない?あんたの母親がふしだらだから悪いのよ。
他に男作ったりするから。
まずはとりあえず500万用意してちょうだい。
他に男を作ったなんて!母がふしだらだなんて私許せなかった!母の悲しみも苦しみも何も知らないくせに…!私にもあなたと同じ歳の娘がいます。
この娘よりはるかに恵まれているはずのあなたがまるで世界の不幸を1人で背負ったようにして生きてきたのを知るにつけ私は何だか普通の刑事としてあなたを追えなかった…。
(可奈子)警察にすべて本当の事を言うと父に言いに行きました。
幼い知恵で精一杯考えた母の復讐のつもりでした。
父は私が帰った後すぐ社長室で心臓発作を起こして亡くなりました。
失礼します。
(可奈子)京子さんは私が来た事を知っていたのに誰にも言わなかった…。
社長!私がもう少し知恵がある年頃だったら母と叔父のために何かしてあげられたかもしれない。
もう少し力があったら母を助けてあげられたかもしれない。
でも私は11でした。
あまりにも子供すぎました。
この14年その後悔にさいなまれてきたんです。
私がその時のお父さんだったら今自分が警察に捕まったらまだ11歳のあなたを1人残す事になる。
母を父に殺された娘としてあなたはこれからどうやって生きていくんだろう。
親心だったんじゃないかな?あなたに嘘までつかせて強盗の仕業にしたのは自分のためだけじゃなかったと私は思う。
罪の痛みを感じていなければ心臓発作を起こしたりはしない。
あなたはいみじくも言った。
あまりにも子供すぎたと。
そう…だからあなたはお父さんの心にまで思い至らなかった。
自分に心を開かない妻と娘の前で無力な自分…。
暴力でしか嫉妬と悲しみを表せなかったそのつらさがね。
一番弱かったのはあなたのお父さんだったんじゃないのかな?今の可奈子さんにはもうわかってるはずよお父さん。
可奈子さんもう重い荷物を下ろしていいのよ。

(パトカーのサイレン)あいつちょっと軽くないか?誰?矢吹…。
そのほうが人生楽しいかもしれないでしょ?父さんとは正反対だな。
そうでもないわよ。
まさか。
お父さん矢吹さんの事嫌い?別に。
10年前お父さんが追っている事件の時効があと1か月。
お母さんの命もあと1か月。
そういう選択を迫られてお母さんをとった。
開かれていた出世の道を棒に振ってね。
現場が好きだったし別に出世したいとも思わなかっただけだ。
矢吹さんも重い人生の選択を軽々と決めていく人だと思うの。
そういう根っこのところお父さんに似てるって気がする。
だから好きになったんだな。
きっと。
お父さんはお前が幸せな結婚をしてくれる事を願っているだけだ。
だから何の遠慮もいらん。
さっさと嫁に行け。
反対しないの?しないさ。
ふ〜んよかった。
何だここにいたんですか。
矢吹さん!一緒に飲む?おっ…。
でもお邪魔じゃないですかね。
ははは…!どれ…。
ひとっ風呂浴びてくるかな。
お父さん気ぃ利かせたつもりかしら?う〜ん…。
あっねえ!お父さんね私達の結婚反対しないって。
やったー!うれしい?うん!うれしいね!あははは…!・
(フロント)お客様何か?あっああいや…。
はあ…。
おっ寒いなこりゃ…。
娘をいつまでも縛っちゃいかん。
私達結婚したらうちで暮らさない?そうしたらさお父さんも1人にならなくて済むし。
3人で暮らすって事?う〜ん…。
う〜ん…。
って嫌なの?あっうちのお父さんの事邪魔にするの?ううん。
あっそうか!私と結婚するの嫌なんだ。
いや…。
ああそうなんだ。
結婚したいよ!そりゃあ…。
だけど君の親父さん上司としては最高なんだけどお義父さんとなると途端に怖くなるんだよな…。
情けないわね…。
《そうだそうだ情けない奴だ》《どこが俺と似てるって。
ケッ!》《結婚なんかやめちまえ。
いいぞいいぞ!》
(咳払い)あっ。
お父さんもう上がってきたの?もう?悪かったよもう上がってきて。
ビール。
はい。
あっお義父さん僕が注ぎます。
お義父さん!?すいませんお義父さん。
ああ…。
お義父さん…。
ったく…。
2014/08/28(木) 13:05〜14:56
ABCテレビ1
殺人迷宮課の名警部[再][字]

連鎖の追跡 時効寸前に二つの殺し みちのくの小京都角館の女

詳細情報
◇出演者
高橋英樹、渋谷琴乃、桜井淳子、田中実 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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